リニア中央新幹線。2027年におそらく完成しないであろう、JR東海の主導する一大プロジェクト。毎日のようにネット記事が出ており、メリットやデメリットは議論が尽きません。この記事では、リニアがコンパクトシティの推進につながるものか?という観点で、リニアの功罪を見ていきます。
メガリージョンと言う名の「コンパクトシティ」?

リニアが開通するメリットは3つ。
・新幹線よりも早い
・東京~名古屋が1つにまとまり、観光やビジネスがしやすくなる
・新幹線になにかあったときの代用ルートになる。逆もしかり
また、大阪まで開通すれば飛行機の需要を吸収し、結果としてCO2削減につながること。技術を他国に輸出し、国益とすることなども、メディア等でよく喧伝されることです。
まちづくりの観点では、東京と名古屋を40分で結ぶことで、2つの大都市を1つにする「メガリージョン」という構想があります。

品川から40分ということは、名古屋が柏や茅ヶ崎などの駅よりも近くなることを意味します。お金の話を抜きにすれば、名古屋が東京通勤圏になりうるわけです。
すると、東京は1都3県の約3500万人に加え、愛知・岐阜・三重の1000万人を含めた4500万人の経済圏が出来ます。先進国では他に例のない規模です。メリットがいっぱいなのは想像に難くありません。
リニア駅の拠点性が高まるという意味ではコンパクト

では本題。リニアは「コンパクトシティ」を推進するものなんでしょうか。
本メディアでは、リニア=コンパクトシティ、とは考えません。しかし、その力になるポテンシャルがあると考えます。
まずリニアができれば、リニア駅周辺の開発が進みます。すでに橋本は大規模再開発の真っ只中。名古屋駅周辺も様々な再開発が進んでいます。
当然、住宅もできるため、リニア駅を軸とした都市形成につながる。車社会に暮らす人達が電車社会へ移ってくるならば、これはコンパクトシティの大きな理念である、住まいと交通・商業が近接した生活を推進していると言えます。
リニアと在来線の乗換、不便をどう解消するのか
ただ、リニアが非常にもったいないのは、ルートを直線的にしなければならないという制約から、途中駅がずいぶんと中途半端な場所に作られるということです。
神奈川駅はJR横浜線・京王線橋本駅のすぐとなりで全然良いのですが、
山梨駅は甲府中心地のはるか南。

長野駅は飯田市のはずれの田園地帯。

岐阜駅は、お世辞にも栄えた場所とは言い難い、美乃坂本駅付近。

本来、新「幹線」である以上、重要拠点を結ぶ役割がリニアにはあります。ターミナル駅の近くに駅があれば、在来線で駅までやってきて、リニアに乗ることが可能。リニア駅だけでなく、その周辺の駅でもコンパクトシティの種をまくことが出来たはずでした。
しかし現実に完成するリニア駅は、クルマでのアクセスが前提の、しかも毎時1本程度しか停車しない、ローカルなもの。
リニア駅周辺が発展するかも謎ですし、その周辺の鉄道にシナジー効果があるかも疑問です。不便な乗換については、駅と街を結ぶバス路線の整備が100%必要ですが、そのお金はおそらく自治体の財布から出ることになるでしょう。もやもやが残ります。特に飯田線は同じJR東海。コスト度外視の放言ですが、線路をちょっとくらい引き直してあげたっていいじゃん…と思えます。
なお、各駅の詳細はこちらの記事で紹介しています。
まとめ:リニアはコンパクトシティにならないが、周辺地域をコンパクト化させるポテンシャルあり

リニアが開通することによって、これまでクルマで移動していた層を、一部リニアの乗客に移すことは出来そうです。
ただし、コンパクトシティ化が望めるのは東京・名古屋と橋本のみになる可能性が高いというのが、当メディアの考えです。そのなかで東京・名古屋は十分に都会なので、コンパクトシティ的発想で恩恵が大きいのは、橋本駅のみです。
リニアが開通したからといって、日常の買い物や通勤・通学・通院が便利になる可能性は低いというのが正直なところ。山梨・長野の両駅は在来線からはるかに離れた場所に駅ができ、電車を乗り継いでたどり着く場所ではありません。
ここまでプロジェクトが進んだからには、ルートを変えろとか、ましてや知事の権利を乱用して工事を妨害するようなことはあってはなりませんが、せめてリニア駅と既存のターミナル間を、割安かつ定時制の高い方法で結んでほしいと願うばかり。
うまくやれば、東京圏内からリニア周辺への移住を促し、リニア周辺にクルマがなくても暮らせる街を形成することは可能です。
参考文献
https://linear-chuo-shinkansen.jr-central.co.jp/
https://www.shinmai.co.jp/news/article/CNTS2022122101011
https://linear-chuo-shinkansen.jr-central.co.jp/future/