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自動運転「レベル4」が福井県永平寺町で開始!でもアメリカと比べると微妙

福井県永平寺町で5月28日から、レベル4の自動運転移動サービスが始まりました。

日本でもいよいよレベル4だ!という意味では明るいニュースですが、どうしてもアメリカと比較すると劣って見える部分もあります。そのあたりを忖度なくお伝えしていきます。

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永平寺町の自動運転移動サービスの概要

ヤマハの「AR-07」

福井県永平寺町の自動運転移動サービスでは、「永平寺参ろーど」の荒谷~志比の約2kmを、約10分で結んでいます。利用料金は大人100円、子供50円で、土日の10時から15時に3台の車両で13往復運行しています。

5月21日には、レベル4自動運転移動サービスの開始に係る記念式典を開催しました。西村経済産業大臣、豊田国土交通副大臣、河合永平寺町長らが出席しました。

レベル4自動運転移動サービス開始記念式典

公道に敷設した電磁誘導線を追従しながら最高時速12kmで走行します。運転手は車内にも遠隔地にもいません。

運営は地元企業「まちづくり株式会社ZENコネクト」が担当しています。運用されるのはヤマハの「AR-07」。このリチウムイオン電池を用いたEV車は小型自動車規格で、ゴルフカートのような外観ですが、自動運転に必要な機器を搭載しています。

自動運転移動サービスとは?「レベル4」とは?

ZenDriveの遠隔監視室

そもそも「自動運転移動サービス」ってなんでしょうか。

自動運転移動サービスとは、自動車の自動運転技術を用いて、人々をある場所から別の場所へ輸送するサービスを指します。

日本では、2021年度より経済産業省と国土交通省が共同で進めてきた「自動運転レベル4等先進モビリティサービス研究開発・社会実装プロジェクト(以下、「RoAD to the L4」)」で、無人自動運転の実現及び普及を目指した取り組みが行われてきました。

レベル4とは?レベル3・レベル5との違いは?

自動運転レベルの比較

このプロジェクトで定められた「レベル4」は、特定の走行環境条件を満たす限定された領域において、自動運行装置が運転操作の全部を代替する状態を指します。

つまり予め決められた路線を、全自動で運転するというもの。

自動運転にはいくつかのレベルがあり、「レベル3」はドライバーの乗務を前提とした自動運転。すでにホンダが、2021年3月5日に、自動運転レベル3の機能を搭載した新型LEGENDを発売しています。

高速道路の渋滞中という限られた条件下ですが、「運転手がいることを前提とした自動運転」を行ってくれます。運転手はこの間、スマホとかを触っていてもいいわけです。

また、レベル4の次の段階である「レベル5」では、乗員の運転免許すら不要になる「完全自動運転」が可能になります。この技術の開発は急ピッチで進められていますが、実用化は早くても2030年代になりそうです。

米国に周回遅れ まだ発展途上の「レベル4」

今回の永平寺での取り組みは、日本初の「レベル4」自動運転となります。自動運転レベル4が実用化してめでたいことは確かです。

ただし技術で先行するアメリカ等と比べると、どうしても見劣りする部分があります。

サンフランシスコのGMクルーズが技術で先行

永平寺とサンフランシスコの比較

例えばアメリカのサンフランシスコでは「GMクルーズ」と呼ばれる自動運転サービスが今年1月から使えるようになりました。

夜間のサンフランシスコ中心地に限り、運転手のいないタクシーが自分の居場所まで配車され、アプリで指定した場所まで運んでくれます。

夜間限定ながら交通量のあるサンフランシスコ市内を他の自動車との調整を図りながら最高時速48kmで走ります。

さらに、道路に誘導設備はなく、自動車に搭載された各種センサーが自律的に周囲の環境を判断して走ります。

永平寺町では、交通量が少ない福井の山間部を時刻通りに運行しているだけです。道路に誘導装置を持つ「誘導型」のため、安全性は確保されていますが、先進性という観点からは2005年の愛・地球博で走った「IMTS」と大差ないと言えます。

最高速度も12km。アメリカの「GMクルーズ」と比べると、多くの面で劣っています。

鉄路と繋がってはじめてインフラになれる

せめて、永平寺口まで自動運転してくれるようになればインフラとしての役割を果たしてくれそうですが…現状だと「観光地として」「技術の遅れを示すプレゼンテーションとして」運営されていると言われても、不思議ではありません。

ひとつ言えるのは、永平寺は「バス」を自動化したのに対し、アメリカは「タクシー」を自動化しています。そうした意味で、戦いの土俵がまったく同じではないという部分は、技術の差が生まれた要因として、勘案すべきなのかもしれません。

自動運転は2002年に廃止された鉄路をなぞる

えちぜん鉄道

永平寺という歴史的名所へのアクセスを容易にする手段としては、これまでバスが主流でした。しかしもっと時代を遡って2002年までは、京福電気鉄道が「永平寺線」を運行していました。

この廃線跡こそ、「永平寺参ろーど」であり、この路線が自動運転の実証実験を2017年からこれまで行ってきた道です。

ここから、将来の過疎路線の未来が見えます。不採算となった鉄道路線を潰し、コンクリで埋め、そこに自動運転のカートを走らせれば、圧倒的に低コストで地域の交通インフラを維持できます。

だからこそ、レベル4の自動運転は、鉄道の大廃線時代の幕開けである、と見ることもできます。しかし、この点については明確な証拠はないので、別の機会に深く議論したいと思います。

人口減少の切り札としての活用法

西村大臣が自動運転車両に乗車

過疎化が進む地方都市において、今回の「レベル4」自動運転サービスは大きな価値を持ちます。

なにより、公共交通を維持する際に「人手不足」という最大の課題を考えずに済みます。

特に地方地域では、バスやタクシーの運行が経済的に成り立たなくなることもあります。自動運転車は、これらのサービスを維持し、必要に応じてサービスを拡大する手段となり得ます。

さらに、高齢化が進む社会では、高齢者や身体障害者の移動が課題となります。自動運転車は、運転が困難な人々の生活の質を向上させる可能性があります。

自動運転がまちを維持するための重要ツールに

大規模な再開発や解体をせずに地方を維持していく手段として、自動運転サービスは徐々に不可欠なものへと変わっていくことが予想されます。

コンパクトシティ化に直結する施策ではありませんが、「都市を維持する」という視点では共通点も見られます。今後も発展していく自動運転業界、目が離せません!

参考文献

国内初!レベル4での自動運転移動サービスが開始されました
https://www.meti.go.jp/press/2023/05/20230522004/20230522004.html

京福電気鉄道永平寺線を訪ねて
http://pyoco3.c.ooco.jp/hokuriku/keifuku/eiheizi/eiheizi.html

自動運転ラボ
https://jidounten-lab.com/

IMTS(インテリジェント・マルチモード・トランジット・システム)
http://www.expo2005.or.jp/jp/A0/A9/A9.1/index.html

GMクルーズ
https://getcruise.com/

https://www.yamaha-motor.co.jp/gsm/lineup/

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