日本の都市や地域における水辺の魅力を最大限に引き出し、地域の活性化を目指す取り組み、それが「ミズベリング」です。この記事では、ミズベリングの概要から具体的な活動内容まで詳しく解説し、都市開発や地域振興に関心のある方々に向けて、その魅力と可能性をお伝えします。
ミズベリングとは何か?
ミズベリングとは、国土交通省が2013年より推進している、水辺の魅力を引き出して活用するプロジェクトです。「水辺+RING(輪)」、「水辺+R(リノベーション)+ING(進行形)」から生まれました。
河川は、水害から市民生活を守るという視点から、地域ごとに整備され厳しく管理されてきましたが、川や海、湖といった水辺をもっと身近で楽しい場所にしようと、規制緩和された形です。
現在、地元の企業や自治体、NPO団体が主催するイベントやボランティア活動などで、「ミズベリング」の文脈での催しが増えています。
ミズベリングの具体的な活動内容
都市部では、日常で最も近い自然が「川」である、というエリアも多くあります。この水辺を具体的にどう活用しているのでしょうか。
水辺空間の整備
水辺空間が整備されることで、朝のジョギングや夕方の散歩、友人とのピクニックなど、利用目的が生まれ、人が集います。都市部を中心に、公園や歩道、サイクリングロードの整備、水上バスやカヤックなどのレジャー施設の設置などが行われています。
イベントやプログラムの実施
水辺でのマルシェやコンサート、スポーツイベントなど、地域住民や観光客が楽しめるイベントを定期的に開催しています。地域文化の発信や、にぎわいを産みながら、地域住民の健康増進を進めるという一石二鳥の効果を狙ったものといえます。
コミュニティとの協働
地域住民や企業、NPOなどと協力し、ボランティア活動や清掃活動を通じて水辺の美化や保全を図っています。これにより、地域全体で水辺を守り育てる意識が高まります。
地域経済の活性化
水辺の活用は、地域経済の活性化にも寄与します。観光客が増え、地元の商店やレストランの売上が伸び、地域全体が活気づきます。また、観光客が増えるなどの新しいビジネスチャンスも生まれます。
ミズベリングの実例とは?
隅田川@東京都
隅田川では、他の地域に先んじてミズベリングの取り組みが実施された地域です。2014年から2018年ごろにかけて、川を活用したアート、クルージングイベントなどが開催されました。現在も水上バスが運行されるなど、観光資源としての隅田川の存在意義は高いと言えるでしょう。
ミズベリング信濃川やすらぎ堤@新潟県新潟市
新潟県の信濃川で実施されているミズベリングプロジェクト「ミズベリング信濃川やすらぎ堤」は、地域住民や観光客が川辺を楽しめるようにするための取り組みです。
アウトドアブランドの「スノーピーク」がプロデュースするアウトドアラウンジが設置されており、訪れる人々がキャンプやバーベキュー、ピクニックなどを楽しむことができます。さらに、季節ごとに様々なイベントが開催され、地域の魅力を発信しています。
ビワイチ@滋賀県守山市
自転車で琵琶湖をめぐる観光ルートが整備されており、「ビワイチ」の呼称で徐々にサイクリストに知られるようになってきました。県の面積の6分の1が湖という、まさにミズベリングのための地域である琵琶湖。具体的な取り組みについてはこちらの記事でご確認ください。
なやばし夜イチ@愛知県名古屋市
2010年から実施されている「なやばし夜イチ」もミズベリング事例の1つです。
愛知県名古屋市の中心部を流れる「堀川」、そこにかかる橋の1つに「納屋橋」という橋があります。「なやばし夜イチ」はこの川沿いで月に1回実施されるナイトマーケットです。
主にお酒や小料理を楽しめるキッチンカーが集まり、人々の交流を生み出しています。
ミズベリングが「地方の暮らし」を根本から改善する理由
ミズベリングのいいところは、「川があればまちおこしができる」ということです。
数千万、数億円といった投資は不要。水辺という日常スポットを楽しむ仕掛けを用意するだけで、小さな町おこしを実行できます。
そして周辺の人を巻き込み、「その地域でしかできない暮らし」を生み出します。地域独自の楽しみや人のつながりは、特に人口減少が進むエリアでの強力な「住み続ける理由」になります。
「うちの街にはなんにもないから…」というエリアでも、川くらいあります。そこに人が集まれば、楽しい。楽しんでいると、外から噂を聞きつけて、人がやってくるかもしれない。そうした小さな循環を産むためにも、もっと広がるべき取り組みと言えるのではないでしょうか。
ミズベリングは、水辺を活用して地域の魅力を引き出し、人々の生活を豊かにする取り組みです。都市開発や地域振興において、その重要性は今後も増していくでしょう。「ミズベリング」には公式サイトもあります。ぜひあわせてご覧ください。
参考