実例

注目集まる「リニア停車駅」、最も住みよい街はどこ?

リニア開通まで数年となり、途中駅の概要があきらかになってきました。この記事ではリニアの停まる途中駅ごとの街データを比較します。

リニア開通により、途中駅のほとんどは東京まで1時間でたどり着ける場所となります。そのため開通とともに地方移住やビジネス展開が進む可能性は高く、賑わいを見せるでしょう。一方で開通前の各駅は車社会であることも多く、住み心地は未知数です。この記事では各駅ごとのデータをもとに、街ごとの住環境を分析します。なお引用した情報のうち、人口集中地区に関するデータは2015年、家賃相場は2022年のものを使用しています。

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リニア中央新幹線の概要

リニア中央新幹線

リニア中央新幹線はJR東海の主導で建設が進む新しい路線です。品川から名古屋を2027年、名古屋から大阪を2045年に開通させる計画で、途中、神奈川県橋本市、山梨県甲府市、長野県飯田市、岐阜県中津川市に駅を設置する予定です。開通によって東名間を40分で結びます。開通後は12分に1本のペースで列車が走ります。正式ダイヤは未定ですが、現在は5本のうち4本は途中ノンストップまたは橋本のみ停車、1時間に1本のペースで各駅停車という予想をする鉄道ファン(識者?)がほとんどです。

名古屋と品川は地下深くに駅を設け、路線のほとんどを地下またはトンネルで結びます。

リニア品川駅 

立地:東京都港区
リニア本数予測:毎時5本
ワンルーム家賃相場:11.78万円
人口集中地区人口・面積 データなし
(参考)港区人口:24.3万人

「成功の象徴」として続く膨張

品川駅は港区に立地し、リニアは同駅の地下深くに作られる予定です。

同地区の住みよさを見ていきましょう。、まず、港区の区内全域が人口集中地区です。むしろ東京は青梅のあたりまでずっと人口集中地区が続きます。都心であるために家賃相場はワンルームで12万円近くと非常に高額で、家族で港区の賃貸物件に暮らす場合、家賃は20~30万円ほどかかり、年収1200~1800万円程度ないと生活が苦しくなるような立地です。夫婦ともに大企業のある程度の役職か、経営者、あるいはアスリートや芸能などで一定の成功を収めていない限りは難しいとすら思える土地であることがわかります。

そのためリニアができようが、できなかろうが、コンパクトシティというよりは大都市のターミナル的役割が強い土地と言えます。

リニア開業によってそのポジションは不動のものになるでしょう。交通機能は充実しており、名古屋や大阪も2時間前後でたどり着けるほか、羽田空港にも1本で向かえます。現在は京急電車が品川駅の改築工事を進めており、JRと並んだ地上駅に変わります。駅上に大きな通りを設け、リニアとJR、京急が便利に乗り継げるようになる予定です。

リニア神奈川県駅(橋本駅) 

立地:神奈川県相模原市緑区
リニア本数予測:毎時2本程度
人口集中地区人口:665,686人(2015年調査)
人口集中地区面積: 71.73(千㎡)
ワンルーム家賃相場:5.76万円

東京通勤圏により発展、再開発に期待集まる

相模原市より

続いて、神奈川県相模原市の北側に位置する橋本駅です。同駅にはJRと京王が乗り入れており、ラッシュ時の京王線は毎時10本走るなど、東京への通勤圏として一定の人気があります。駅前には「アリオ」「ミウィ」などの商業施設が充実しています。

リニアの開通を控え、すでに駅前では再開発が進んでいます。リニア橋本駅は既存の橋本駅に沿う場所に建てられ、駅と駅の間には「交流広場」「ものづくり産業交流ゾーン」ができ、さらにタワーマンションなど「複合都市機能ゾーン」の整備をすることが、相模原市の交流拠点整備計画によって構想されています。リニアの本数はかなり限られますが、それでも品川まで10分、名古屋まで直通で1時間半、品川へ出て折り返せば1時間で着く立地というのは今後大きな強みになるでしょう。

橋本駅は、途中駅のなかでは珍しく、在来線との乗り継ぎがしやすい場所に駅ができます。そのため周辺の東京・神奈川エリアから名古屋への往来は大きく増加するでしょう。例えばこれまで新幹線へのアクセスが不便だった八王子・立川や、多摩センター、町田、海老名などに住むサラリーマンの出張や東海地方出身者の帰省ニーズを大きく取り込み、橋本周辺は乗り換え拠点として、ある意味「横浜駅」っぽくなるのではないでしょうか。

ただし周辺の観光資源はあまりないため、よりビジネス色の強い都市へ変わっていくと思われます。

橋本駅のある緑区は面積の大半が人口集中地区で、京王線・横浜線沿いに延々と住宅地がつながるためコンパクトシティとしての表情はありません。車が無くても生活できる環境である一方、駅を少し離れると、車社会らしい交通量や、駐車場完備の住居が目立つようになります。

このあたりもリニアにあわせて、居住の概念が変わっていくと面白くなっていくのではないかと。とはいえ先述のとおり東京通勤圏ですから、国内としては珍しく、町が小さくならない土地として、投資・居住双方の人気を集めそうです。

リニア山梨県駅(甲府駅) 

立地:山梨県甲府市
リニア本数予測:毎時1本程度
人口集中地区人口:154,036人
人口集中地区面積:32.28(千㎡)
ワンルーム家賃相場:4.89万円

県庁所在地のポテンシャル、裏腹に進むスプロール化

リニアの山梨県駅が作られる予定の甲府市は、県庁所在地という立地ながら、都市のスプロール化が進んでしまった場所でもあります。

甲府盆地という立地、また田畑を転用して宅地化を進めてきた経緯から市域は広く、中心地での人口減少と周辺での人口増加が起きています。大通り沿いに大型商業施設が整っている一方、鉄道の影響力が小さいことが、このスプロール化を後押ししてしまっています。

しかし、リニアの開通によって大きな変化が起こります。このリニア甲府駅は現在のJR甲府駅と7キロ程度離れた甲府市大津町に作られます。身延線の小井川駅から東に3キロの地点となることから、同駅とリニア駅を結ぶシャトルバスを走らせる計画が検討されています。

さらに中央自動車道を少し延伸し、高速道路のスマートインターチェンジと駅の2階を直結させるパークアンドライドの構想もあります。

そのため、例えば県道12号線を東西、29号線を南北の軸とし、在来線とリニアを結ぶシャトルバスを走らせて、そこに居住を誘導するなど、あたらしい骨組みでのまちづくりに期待をしたいところです。

すでに、2023年2月に営業を終了する甲府駅前の百貨店跡地を再開発し、商業施設とタワーマンションを複合した施設の建設が決まっています。既存の駅と、高速道路、そしてリニアを高速・高頻度に結び、市民にとっての便利につながるか。ある意味、発展と衰退の分かれ目にある町ですから、注目したいところです。

リニア長野県駅(飯田駅)

立地:長野県飯田市
リニア本数予測:毎時1本程度
人口集中地区人口:32,938人
人口集中地区面積:9.37(千㎡)
ワンルーム家賃相場:5.03万円

都市と交通、自然のあふれる駅前に

飯田市Youtubeチャンネルより

飯田市はこれまで公共交通に弱く、たとえば鉄道だけの利用だと、名古屋駅まで5時間を要していました。これまで名古屋に出るなら自動車か高速バスが、なかば常識化していました。リニアができることで、品川まで45 分、名古屋まで25 分となり、市は開業効果に大きな期待を寄せています。

リニア飯田駅は既存の飯田線と少し離れた飯沼・座光寺地区に作られます。近くには元善光寺駅がありますが、乗り継ぎは考慮されていません。

2022年暮れには駅前広場のデザインのお披露目、ついで起工式が行われました。駅前には「結いの広場」と呼ばれる公園が作られ、マルシェ等のイベント開催を想定しています。駅の北側には平面駐車場を設け、バスなどのモビリティを集約。車で来た利用者がスムーズに乗り継ぎできるよう、計画が進んでいます。

市の「リニアの整備効果を地域振興に活かすビジョン」では、飯田駅とリニア駅を直径に、その円のなかを「都市重心」ゾーンとし、さらにリニア駅の北を「交流重心」、南を「人口重心」の土地とするプランが検討されています。都市重心ゾーンでは、既存の商業機能を生かした、多様なライフスタイルを実現できる場所に。交流重心ゾーンでは地域の内外を行き交う交通拠点、ビジネス拠点のような役割をもたせ、自然と都市の調和を目指します。南部の人口重心ゾーンは既存の住宅、公共施設が充実していることをうけて、現状維持の方向性です。

そのため飯田市としてはリニア駅前に大規模な商業施設やタワマンを建てるというより、どちらかというと空港のような役割をもたせようとしていることが伺えます。

飯田周辺はそのゆたかな自然から、キャンプやスキーに人気です。またJTBの入れ知恵ですが「星空のきれいな町」として町おこしに成功した阿智村も近接します。そういった意味で、バブル期の越後湯沢のような、若者やファミリーがふらりと訪れる自然豊かな信州という打ち出し方はある意味で堅実なのではないでしょうか。

リニア岐阜県駅(中津川駅) 

立地:岐阜県中津川市
リニア本数予測:毎時1本程度
人口集中地区人口:7,353人
人口集中地区面積:2.56(千㎡)
ワンルーム家賃相場:データなし

リニアの駅で最小規模、道路整備が中心に

新駅のできる町のなかで、もっとも規模が小さいのが中津川です。リニア中津川駅は、既存の中津川駅から1駅離れた「美乃坂本駅」で建築が進んでいます。

駅周辺では、農地を転用した駐車場や、在来線までの区間をむすぶ広場、商業施設、駅の東側に新設する「濃飛横断自動車道」などの整備によって、交通と交流の拠点とする構想があります。道路の整備が計画の中心で、飯田よりもインパクトに薄く、言い方は悪いのですがワクワク感は有りません。

すでにJR中津川駅では、名古屋方面へは1時間に3本の列車が出ており、うち1本は特急列車「しなの」、名古屋までは1時間です。リニアが開通すれば15分程度で名古屋まで行く場所となり、例えば途中の土岐・恵那・多治見などから人口が流入する可能性はあります。

中津川市は「中津川都市計画区域マスタープラン」において、「リニア中央新幹線の岐阜県駅・中部車両基地が設置されることを受け、リニア岐阜県駅・中部車両基地周辺整備及びリニア岐阜県駅周辺地域におけるまちづくりが必要な状況となっています」と述べています。ただし中津川駅と美乃坂本駅は営業キロで6.4キロ離れており、中津川駅中心がガラッと変わるというよりは、周辺の住民が自動車で美乃坂本駅に向かう新しい流れが生まれる可能性のほうが高そうです。

リニア名古屋駅 

立地:愛知県名古屋市中区
リニア本数予測:毎時5本
人口集中地区人口:2,250,106人
人口集中地区面積:279.18(千㎡)
ワンルーム家賃相場:6.17万円

スーパーメガリージョンで東京文化圏の仲間入り

さて、2040年代までリニアの終点となる名古屋駅です。JR名古屋駅直下に、直角に交わるように駅が出来上がります。現在も在来線ホームや駅周辺で積極的な工事が進められており、リニア開業にあわせた再開発がちゃくちゃくと進むエリアです。

これまで東京圏といえば熱海あたりまででしたが、品川まで40分でつながることで、静岡中心をすっ飛ばして名古屋も東京圏に入ることになりそうです。参考までに、品川から大宮まで40分、藤沢まで41分、船橋まで35分、柏まで48分。名古屋は大げさにいえばこれらと競合することになります。

地元志向の強い東海地区ですが、いわゆるストロー現象によって東京の引力に負けてしまわない街が必要となります。自動車を軸とした「ものづくり」に強く、歴史もあることで町の規模は大きい同市ですが、言ってしまえばこれまで「東京」でも「大阪」でもない、ある意味で中途半端な立地だったからこそ、中京圏の中心でいられた名古屋です。東京を軸としたメガリージョンに組み込まれることで「東京化」が良くも悪くもすすみ、開業後は徐々にその街の色を変えていくのではないでしょうか。

まとめ

ここまで、リニア新駅ができる各地のデータを見てきました。リニア開通によって新たな流動が生まれる一方、山梨や岐阜は既存の町の中心部から大きく離れており、これが新たな町の核になるのか、それとも新函館北斗のように、新幹線駅らしからぬ静かな場所になるかはまだわかりません。

それでも各地とも、より個性が試されるようになるのは間違いないでしょう。東京まで1時間という強烈な引力に対し、それでもこの街に住みたい、あるいはビジネスをしたい、この駅から東京に通いたいという動機が必要です。

そういった意味で飯田駅は現在の強みを活かしながら新たな交通拠点を生み出そうとしており、好感が持てます。

一方で静岡の妨害に近い建設反対運動により、リニアの建設は暗礁に乗り上げた状態が続いています。ニュースを見るかぎりはルートの変更もしくは静岡県知事の更迭でもないかぎり事態の好転はないのではないかと感じるこのごろ、次の進展を辛抱強く待ちたいところです。

なお、本記事は各県の「リニア駅周辺整備基本計画」をなぞったものであり、かなり端折って執筆しました。反響次第で各駅のより詳細な計画に踏み込んだ記事を発信していきます。

参考:

東名間が半分の40分に! リニア中央新幹線名古屋開業時ダイヤ予測(2027年予定)
https://www.train-times.net/article/maglevpre-1-html

【ゆっくり】リニア中央新幹線ダイヤをひたすら妄想する集い
https://www.youtube.com/watch?v=voHzD-a-yb8

家賃・家賃相場を検索
https://www.homes.co.jp/chintai/price/

グラフで見る世界の統計 GraphToChart
https://graphtochart.com/

人口集中地区とは
https://www.stat.go.jp/data/chiri/1-1.html

〝膨張〟するコンパクトシティに歯止めを
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/11135?page=2

中山道の町一変、長さ1.3キロのリニア駅 岐阜・中津川
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOFD213TV0R21C22A2000000/

付知地域デザインミュージアム
https://tted.t.u-tokyo.ac.jp/about

各市区公式HP

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