東京圏 PR

電動キックボード「LOOP」、新料金の導入で運営側が「危険運転」を促進?

電動キックボードのシェアリングサービス「LOOP」のプランが変更になる。これまでの30分200円という料金体系から、1回50円+1分ごとに15円という料金になる。多くのユーザーにとって値上げとなるほか、分単位で料金が変わる仕組みはさらなる危険運転を生み出しかねない。

今回のプラン変更は、厳密には、2023年10月まで使用されていたプランに戻す形となる。また大阪エリアではこれまでも基本料50円+毎分15円というプランだったため、どちらかと言うとキャンペーンが終了した形となる。

これまで1回30分200円というプランから、つまり10分の利用で200円。これまで200円で30分まで使えたのだから、考え方によっては3倍の値上げだ。

来プランで使用したい場合は月980円「サブスクプラン」に加入する必要がある。改悪と感じる人も多いだろう。

SNSでも、値上げに対してポジティブな意見は見られない。

ただ、この値上げ自体は、大きな問題ではない。もっとも危惧する点は、「さほど安全でない乗り物」で、「高速移動するほどトク」になるプラン設計にある。

新料金で増える「無謀運転」

江戸っ子はせっかちと言われる。それは現代でも変わらないだろう。道端でタクシーを待つ時間も、電車をホームで待つ時間も惜しい。

1万ヵ所の「ポート」で移動に革命

そうしたユーザーに対し、LOOPは2023年段階で3000ヶ所、2025年には1万ヶ所の「ポート」と呼ばれる駐輪場の整備を進めており、東京中心部であれば、どこでもすぐに電動キックボードに乗ることができ、空きのあるポートですぐ降りることができる。

まさに現代の交通を次世代へアップデートする、インフラの救世主的存在だ。

しかし、このメリットの半面、危険運転を行うユーザーが散見されるなど問題も山積している。

今回の料金プラン改定では、この無謀運転を促進してしまうリスクがある。これまで200円で使えたルートが300円、400円かかるようになり、ユーザーは1分1秒を争って電動キックボードを走らせることになる。

前述のとおりだが、値上げ自体は問題ではない。むしろ、「赤信号を無視すれば15円得する」、「本来ダメな歩道を20kmで走り、信号をショートカットすれば15円得する」という、乗り物と交通ルール、料金のあいだにある、一番悪い組み合わせを運営自らが選択している点にある。

危険運転を推奨するプラン

つまり、交通ルールをやぶる人が、一番トクをする仕組みなのだ。

シェアサイクルの場合、節約したいなら頑張って漕いでスピードを上げれば良く、歩道走行も一部認められている。またカーシェアの場合、基本的に料金が10〜15分単位で、さらにルール違反者は運転免許のランクが落ちたり、運転自体が禁止される。

しかし、LOOPは最高速度20kmと決められており、歩道を走る場合は専用のモードに切り替えなければならない。さらに免許もない。

LOOP社は安全講習を各地で実施しているが、ユーザーに安全を守らせる義務はないし、そもそも危険運転するユーザーは、そんなマジメなものには参加しない。

危険運転を抑止する機能や仕組みがない一方で、安全運転に対するメリットがないばかりか、安全運転をするほど移動コストは段階的に増えていく。

解決は簡単だ。時間から、距離に応じた料金プランに切り替えれば良い。たとえば基本料50円+300mごとに15円とすれば良い。時速20kmの乗り物が1分で進む距離は、20000÷60で333mになる。だから運営会社の儲けは維持できるし、ユーザーは時間の制約がなくなり、より安全運転で移動できる。

利用者のスマホのGPSで距離は測れるし、なんならキックボード自体にも通信モジュールがあるため、両方の移動データから正確な料金をはじき出すこともできるだろう。これならゆっくり走っても料金は変わらないため、少なくとも運営会社が危険運転を促進するという批判は避けられる。

それができないのは、電動キックボードがゆっくり走るほど稼働率が落ち、収益が落ちるためだろう。

儲けは大事だが世の中のためになるビジネスを

LOOPのメリットは、「短距離乗り継ぎ」を削減して交通費を節約する軸と、「交通のないエリアをショートカット」して時間を節約する軸、さらに「駅まで歩き、電車を降りてさらに歩く無駄が減る」という軸の3つがある。この用途に合うなら大変便利だ。

同じく都内で展開する「ドコモ・バイクシェア」よりも乗り物の品質や整備状態は良いし、領収書発行がスムーズで、法人利用にも向く。キックボードが怖いなら電動自転車も選べる。

自分の場合、新宿区の端から端まで走る用事が定期的にある。真面目に地下鉄で行くと運賃は510円。LOOPを使用した場合、だいたい同じ所要時間で、200円で済む。こうした恩恵は料金プランの変更で薄れてしまうが、それ以上に「電動キックボードに乗るやつはアブナイ」と今以上に思われるのではという部分のほうが、心配だったりする。

電動キックボードには、自家用車や地下鉄から人を街に引き出す力がある。人が街に出て動くようになれば、街なかはもっと楽しくなるだろう。だからこそ、今回の料金プラン変更による値上げおよび利便性の低下、さらに危険運転を運営側が推奨する形となったのは、残念と言わざるを得ない。値上げ自体には反対しないが、より世の中のためになる運営を期待したい。

参考

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000044.000103319.html

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO70466930U3A420C2TB0000/

https://luup.sc/news/2024-02-01-fee-revision/

COMMENT

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です