春日部市 。「クレヨンしんちゃん」の舞台として知られる埼玉県のこの街は「リノベーションまちづくり」を掲げています。
春日部市のコンパクトシティ計画
春日部市は南北に東武鉄道がクロスしており、住宅の多くは駅から1km圏内に位置しています。この交通の充実っぷりはさすが東京のベッドタウンと言えます。
画像は国土地理院より
こうした駅を拠点としたネットワーク化に加え、団地や戸建住宅が駅周辺に残っており、更新していくことで、投資を最低限に抑えたまちづくりが可能になってきます。
春日部市は県内でもコンパクトシティへの意欲が強い市です。やや専門的な話ですが、同市では、立地適正化計画の作成を都市計画に携わる部署だけでなく、全部局が関わって作り上げた、全国でも珍しい自治体です。
このことは武蔵野大学教授の一條義治氏が日経新聞で指摘しています。
市では今後、駅前の再整備や、立体交差化、さらに詳細は後述しますが「リノベーションまちづくり」という取り組みを行っています。
空き家の課題、顕在化は早期に
一方で建物が多い分、空き家問題が早々に顕在化してきやすい土地柄でもあります。今後、更新と撤去を両立していく必要に迫られそうです。
ただし言い換えれば、住宅の社会資本が十分蓄積されているとも言えます。例えば1966年ごろから入居が始まっている武里団地。6000戸規模の、いわゆるマンモス団地です。
現在武里団地は1世帯あたり39㎡~50㎡と狭い物件が主流ですが、これをリノベーションし、これまでの2物件をくっつけ、80平米程度の1部屋へ作り替えていくことで、空き家の問題を抑えながら、集住を促進できます。
団地のほかにも、歴史のあるエリア、戸建住宅が並ぶニュータウンエリア、空き家が増えつつある市の中心地エリアなど、発展が進んだ時代ごとの町並みが残されており、地区単位での差別化も可能です。
リノベーションまちづくりとは
春日部市がかかげるコンパクトシティ構想の中に、「リノベーションまちづくり」という試みがあります。構想が公表されたのは2021年3月。
市によると「リノベーションまちづくりとは、今あるもの(空き家、空き店舗および公共空間などの既存ストック)を生かし、新しい使い方をすることによって新たな価値を創ること」としています。
リノベーションは日光街道あたりから
既存ストックの活用は、ほぼすべてのまちで叫ばれている課題です。そのなかで春日部市は、春日部駅東口の「日光街道」沿いを「先行エリア」に指定、エリア全体をリノベーション、相乗効果を生み出そうとしています。
これまでも、複数の活性化事業が行われてきましたが、本プロジェクトによって市が情報交換の場を用意し、創業支援、啓発などを行うことで、計画を後押しします。計画では、この取り組みを市全体に広げ、活性化を図ります。
かつて紹介した岡山県津山市も、一度大規模な再開発によって失敗をしており、リスクを下げるという意味も込めて既存ストックの活用を打ち出していました。
春日部市は、東京近郊という立地で高度経済成長期から発展してきたことと、人口約23万人・約10万世帯と、県内で7番目に人口の多い市であることから、これから空き家の増加が顕在化してきます。そういう意味で「リノベーション」は必須の試みと言えそうです。
春日部市「リノベーションまちづくり」まとめ
春日部市は、いわば東京のベッドタウンとして発展してきた街です。そのためか、お手本のような「日本の住宅街」の風景を市内各所に残しています。
例えば武里駅西側から南のせんげん台まで続く武里団地、南桜井駅周辺のテンプレートのようなニュータウン、春日部駅北の川沿いに建つタワーマンション…春日部の歴史は、すなわち日本の住宅史、あるいは都市計画史と言ってもいいかもしれません。
そんな春日部市がこれから刻んでいく「リノベーションまちづくり」の歴史も、日本のこれからのスタンダードとなる気がして仕方ありません。
もしかしたら近い将来、「オラのおうちをリノベーションするゾ」みたいなアニメ回が流れたりして…。
参考文献
リノベーションまちづくり構想
https://www.city.kasukabe.lg.jp/material/files/group/41/kousou1.pdf
日経
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO71453000Q3A530C2KE8000/
春日部市
https://www.city.kasukabe.lg.jp/soshikikarasagasu/toshikeikakuka/gyomuannai/7/1/5957.html
生活ガイド 春日部市
https://www.seikatsu-guide.com/info/11/11214/1/