実例

これぞモビリティハブ!「出光」が千葉でやってる「オートシェア」が近未来

出光が取り組む「オートシェア」が、モビリティハブの事例として存在感を放っています。千葉にある小湊鉄道沿いの上総牛久駅に配置された小型の電気自動車が市内を自由につなぎ、観光などに役立とうとしています。

この記事ではモビリティハブの解説ならびに「オートシェア」の取り組みを紹介します。

そもそもモビリティハブって?

モビリティハブについては前回の記事でも紹介しています。

おさらいすると、「バス等の大量輸送交通とタクシー・シェアサイクルなどの多様な交通モードとの接続・乗継拠点」がモビリティハブです。

MaaSやシェアリングエコノミーの思想を取り入れ、例えば住宅街でカーシェアやシェアサイクルを利用できる拠点として、あるいは駅前でタクシーやバスとスムーズに乗り継げる拠点として、今後の拡大が確実視されています。

今後、電気自動車(EV)など、新しい交通手段の活用が期待されています。今回の「オートシェア」は、そうした取り組みの1事例であるといえます。

モビリティハブの活用事例「オートシェア」とは

「オートシェア」は、2021年の4月に、出光興産と市原市が連携して開始した新しいカーシェアサービスです。上総牛久駅に鉄道とカーシェアの乗り換えができるモビリティハブを設置し、さらに小湊鉄道線の25ヵ所に無料駐車場を用意して、市内の移動を促します。

シェアリングで使える車は出光タジマEVの「ジャイアン」。2名乗りで、小型EVとしては珍しくエアコン付きです。最高速度は45キロ。市原市内のみ走行可能なルールで、航続距離は140キロ。普段遣いには心もとないながらも「観光」「ビジネス」でちょっと数キロ…というときに便利です。

「オートシェア」を利用する場合はスマホから会員登録、利用手続きを行い、「ステーション」と呼ばれる拠点で免許証をタッチすれば使用開始できます。タクシーのように来るのを待つ手間や高額な料金を支払う必要もありません。料金は15分250円で、通常のカーシェアと同レベルの費用感です。

実は小湊鉄道線は、約半分の列車が上総牛久駅を終着駅にしています。一方でその奥に観光資源があり、例えば養老渓谷や、美術館、動物園などがあります。

そこで、観光客にはまず上総牛久まで来てもらい、そこから電気自動車で観光してもらいます。こうすることで鉄道の利用も増え、さらに観光地へのアクセスも便利になります。CO2排出も減り、幕張も渋滞しにくくなります。

ただし、駅前に配置されているジャイアンは2台。つまり2人ペア×2組か、3~4人の団体が来てしまえば、それで売り切れてしまいます。まだ実証実験段階といえます。

モビリティハブが解決する問題は超多い

さて、こうしたオートシェアなどの交通手段が発展するとどのようなメリットがあるのでしょうか。主に3つ考えられます。

1キロ程度の移動を手間なく

「オートシェア」を始めとする小型EVは、短距離利用を想定しています。ちょっとした買い物や通院など、計1~2時間程度の用途にはしっくり来そうです。

またスマホを活用し、気軽な利用ができることも鍵です。たとえば電車移動中にスマホで予約し、現場についたらスマホで解錠し、支払いはクレジットカードなどで…そういった「ラク」で「便利」なシステムを構築できるのが、今後のEVの強みでしょう。交通分野にも「コネクテッド」「オートノマス」(自律的)「シェアサービス」「エレクトリック」の頭文字を取った「CASE」の考え方が入っていることがわかります。

これがインフラ化することで、例えば駅前がモビリティハブになり、タクシーを呼んだり、バスを待ったりすることなく、いつでも目的地や期間、時間帯に応じた交通手段が得られるようになります。

シェアによる環境貢献

また、モビリティハブに小型EVを導入することで、環境にも良くなると言われています。まずガソリンを燃やさない。そして電気も化石燃料を燃やすわけですが、テスラやリーフなどの通常サイズのEVとくらべてバッテリーのサイズもモーター出力も小さく済み、これも環境によくなります。

また、駅からカーシェアのEVに乗り継ぐ動線ができることで、これまで目的地まで自動車で向かっていた一部のユーザーが

過疎地域の交通機関、あるいは高齢化の進んだ地域でよく言われる「買い物難民」の解決という、SDGsの観点からも環境によくなる仕組みまで広げていくことも夢ではないのかもしれません。

コンパクトシティの形成

またモビリティハブは交通の「拠点」として機能します。移動したい場合は最寄りのハブに行って乗り換えることはもちろん、家から自転車やカーシェアでモビリティハブに向かい、そこから鉄道や小型EVに乗り換えるといった用途も考えられます。

結果として便利な土地となり、人が集まり、モビリティハブ周辺に広場やトイレ、あるいはコンビニやカフェなどができ、賑わう空間になる可能性が高まります。これはすでに賑わっている駅前空間だけでなく、普段鉄道を使わない地域の人々にとっても集まる理由ができるため、寂しげな田舎の駅でも新しい人流を生み出せます。

シェアを主体に、1つの拠点にまとまって生きるという意味では、市の中心や県庁所在地などの都市部でなくてもコンパクトシティが成立する、欠かせないピースになるでしょう。

残った課題もありすぎて困る

問題は免許が要ることと、移動ではなく借りている時間に対し課金されるシステムでしょうか。

免許がなければ乗れないとなると、そもそも人口の6割くらいにしかサービス提供できない上に、取得のためにかかる数十万円のコストは個人レベルでは決して安くありません。

たとえば千葉県民627万人のうち免許の所有者は396.5万人で、所有率は63.1%。また、東京都民1400万人のうち、原付も含めた運転免許所持者は793.9万人で、56.7%くらいの所有率です。都内では「免許をもっていない」という人の数は思いの外、多くいます。

それじゃあタクシーでいいじゃん、という声が聞こえてきそうです。

16歳未満は法律的に取得できず、高齢の方のなかには返納されている方もいらっしゃると思います。人口の4割程度がアクセスできない乗り物を公共交通と言えるか微妙で、例えば中学生でも取れて返納も不要なミニカー専用免許を用意するなど、法律面でももう少し歩み寄りがほしいところです。

また、移動時間や距離ではなく、利用時間に課金する仕組みでは、たとえば1時間移動してホテルで一泊する用途や、仕事で30分移動して2時間滞在し、また30分かけて帰るサラリーマンには不利です。

さらに、先述した過疎地域の交通機関や「買い物難民」の解決という意味では、シェアしているステーションに戻すという従来のカーシェアの仕組みでは、駅まで車を戻しに行って結局マイカーか自転車で家まで帰ってこなければならず、はっきり言って意味をなしません。

本気で過疎地域のインフラを目指すのであれば、たとえば、所定の駐車場に停めている間は課金されない、あるいは減額される仕組みであったり、距離を主体とした料金設定を推奨すべきでしょう。そして誰かが乗り捨てたら、自動運転で自分の家の前まで来てくれるなどの技術も必要になりそうです。

こうでもしない限りは、既存のタクシーと競争して、次世代交通の発展は見られないでしょう。現在のプロジェクトがどのように進歩していくか見守っていきたいところです。

なお、同様の社会実験は館山でも行われています。

参考:
警察庁 運転免許統計
https://www.npa.go.jp/publications/statistics/koutsuu/menkyo.html

小湊鉄道
https://www.kominato.co.jp/train/timetable/index.html

オートシェア
https://auto-share.jp/ichihara/

出光興産と市原市、超小型EVカーシェアを活用した包括連携協定を締結
https://response.jp/article/2021/05/01/345493.html

【超小型モビリティ EV】ちょ待っ!! 高性能で冷房効くのかーッ!【タジマ ジャイアン】
https://www.youtube.com/watch?v=cVI9dNa0H04&t=108s

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