東北 PR

八戸 市<後編>この街は「コンパクトシティ」になれるのか

八戸 市の特集を前回につづいて進めます。チーノはちのへ周辺の再開発。街の中心部でありながら商業施設が経営悪化し、分譲マンションなどに建て替えることが決まりました。

この事例からもわかるように八戸市は徐々に中心地の元気が失われつつあります。青森でも屈指の人口、新幹線も止まり大きな港もあるのに、なぜだろう?と感じます。

八戸、衰退続く

八戸市都市計画マスタープラン【2018-2038】を見ていくと、同市は21万人の青森TOP2の人口を誇ります。周辺地域の中心的存在で、通勤通学などで昼間人口のほうが夜間人口よりも多い街です。

しかしながらこのまま20年がすぎると、人口は6万人減少し、かつ高齢者の比率は40%に達します。つまり15万人の市民のうち、6万人ほどが高齢者ということになります。同時期の国内平均高齢化率は32~35%と推測されているので、それよりもさらに高い値を指します。

そして、さらに気になるのが「商業」。中心街の売り場面積は2002年の8万8900平方メートルから、2014年には5万6600平方メートルへ減少しています。

八戸市の課題の本質

前回と重複しますが、八戸の問題点を挙げると「中心地がない」ということです。

もちろん市役所があり、その周辺には公共施設が充実しているのですが、アクセスの良い交通網がバスのみです。周辺には空き家や老朽化した建物が並び、景観はかならずしも良いとは言えません。人口では水戸、福井などに近く、他県では県庁所在地レベルの都市でありながら中心街の寂しさが目立ちます。

八戸 市のコンパクトシティ化は容易じゃない

人口減少が始まって20年経つ八戸市。地理院地図を参照すると、市街地は遅くとも1970年代に広がりきっております。2023年に入ってだいぶ経つこのごろ、ここから撤退戦は待ったなしです。

しかし八戸市のコンパクトシティ化は茨の道です。コンパクトシティに必要な核となるエリアがどこにも見当たらないのです。

たとえば八戸駅。新幹線が1時間に1本、函館や東京方面へ走っていますが、市街地の西端に位置するため必ずしも栄えているとは言い難い立地です。

八戸市役所のある中心地はホテル等の中層建築物が林立してこそいますが、商業施設では百貨店の「三春屋」が22年4月に、「チーノはちのへ」が23年1月に閉店。本八戸駅から徒歩10分以上の距離にあり、アクセスできる公共交通もバス・タクシーのみです。

都市計画マスタープランで、八戸駅と並び「広域機能拠点」に定められている田向地区も、イオンと病院がありながら街の南端部にあり、アクセス性は高いと言いにくい場所です。

新幹線もあり、港も大きく、道路もキレイに整備され、公共施設も多数あるなかで大変「もったいない」。いや、「くやしい」とすら思える様相を呈しています。

それでも八戸のコンパクトシティ化を考える

さあ困った。どういった対策が考えられるか、とりあえず実現可能性は脇において、考えられる方策をいくつか考えてみます。

きっといろいろな考えが読者さんの数だけあるとは思いますが、あくまで自分の場合は、本八戸が街の中核駅であり、表通り・裏通りの近隣が街の中心を担うという考え方で話を進めます。

本八戸エリアと沿岸部を結ぶ「トライアングル」を構築

前回のチーノはちのへでも触れましたが、本八戸周辺が同市の中心街です。しかし、にもかかわらず駅前はかなり閑散としています。駅裏にホテルが2棟。あとはパラパラとオフィスや住宅があるのみです。

しかしこれはよく考えれば当たり前のことで、八戸は港湾や工場など、その産業の多くは海沿いに集中します。そして八戸の街中心地をはるかに北へ行った場所にハイテク産業が集積す工業団地が。街そのものが役割を明確に分けた作りになっているのです。

そのため、「海沿いで働く」ことを自動的に求められます。

しかし、これがそのまま「海沿いに住む」という解にはなりません。東日本大震災では4.2mの津波が市を襲い、住宅・非住宅含め1146等になんらかの被害が出ています。沿岸部にあたえた被害の大きさは計り知れません。安全という観点から海沿いの居住は適案ではないでしょう。

そこで、「住む本八戸」「働く港湾部」と役割を分けて、トライアングル上に本八戸~八太郎~鮫エリアをつなぐという考え方ができます。

具体的には、本八戸を拠点とし、ピアドゥあたりで左折、馬淵川から突き当りまで進み右折、フェリーターミナルと工業団地をめぐり、八太郎大橋をわたり工業地帯を横断、魚市場を抜けて鮫駅、県道29号線に入って労災病院、国道45号線で橋を渡ったら表通り、裏通りで市役所を抜けて駅まで戻るというもの。あるいは距離は伸びますが、45号線経由よりも市民病院まで行ったほうが良いかも知れませんね。

現在の実需要というより、こういう動きの公共交通があると健全だよなという妄想でしかないのでご容赦いただきたいのですが、鉄道とセットの組み合わせをし、このトライアングル上、または内側に居住誘導をすれば、八戸市内に住みながら、クルマがあってもなくてもいい暮らしができます。

病院や大学を思い切って都心に誘致

無責任に理想論だけ言ってしまえば、若者が多い街のほうが健全です。そのため八戸工業大学、八戸学院大学の新キャンパスを本八戸あるいは八戸駅周辺に手配してみるという考えがでてきます。

また市民病院、労災病院、赤十字病院のすべてがクルマでしか行けないような場所にあり、絶対にバスかタクシーを使わせようという強い意志を感じます。

ただ、歩いて暮らした方が体に良いですし、誰かと繋がりを持てる環境に身を置くほうが精神的にも良いはず。ちょっとだけでも、都市機能を集結させるという考え方の大型病院があった方が良いと思うのですがいかがでしょうか。

参考

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCC043XV0U3A100C2000000/

http://aoimorilabo.com/cinohachinohesaikaihatsu

https://www.zaikei.co.jp/article/20220907/688500.html

https://www.city.hachinohe.aomori.jp/

ABOUT ME
isuta
1995年生まれ。中学時代にブログを立ち上げて以降、ずっとライター。 東海地方出身。少年時代に親しんだ鉄道路線や百貨店が次々廃止になり、衰退を目の当たりに。地方を元気にする手法としてコンパクトシティを広めようと思い立ち、「日本をちいさく良くする」「日本をリユースする」をテーマに本メディアを鋭意制作中。

COMMENT

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です