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ポテンシャルだらけの「札幌市」再開発とコンパクトシティ化を俯瞰 ~地下道・地下鉄が担うこれからのまちづくり~

札幌が元気です。新幹線の開通を控え、都心部ではビルの開発が10ヵ所以上進んでいます。

都心部が元気な理由は、札幌市内を2キロにわたって貫く地下道の存在があります。そして、地下鉄の存在も見逃せません。札幌のポテンシャルは非常に高いと言えます。この記事でそれが伝われば幸いです。

札幌市、大きくても中心はコンパクト

「北海道はでっかいどう」…なんてよく言われていますが、札幌市もかなり広いです。全国に約1700ヵ所ある自治体のうち、札幌市は20番目の広さを誇ります。その面積は1121キロ平方メートル。「香港」と同じくらいの面積と聞けば、かなり広いことは確かです。

(なお1位は岐阜県高山市の2177キロ平方メートル)

政令指定都市に絞った場合は浜松、静岡に次ぐ3番目。

しかし、これほどの面積がありながら、都市部は非常にコンパクトなのが札幌市の強みです。札幌市は、人口197万人のうち「人口集中地区」に住む人の割合が97.1%と非常に高い街です。

そこに札幌・大通・すすきのという繁華街が地下鉄で移動できる範囲にまとまり、企業や住宅が集まっています。

住宅の価格も東京の3分の2程度。2021年の総務省による調査だと、全国の平均的な住居費を100とした場合、東京は131.9、札幌は86.0。安いです。光熱費は東京の2割増くらいかかりますが、家賃の差を産めるほどの負担は必要ありません。

ちなみに、札幌市には海はありません。日本海側の石狩湾に接近していますが、小樽市の銭函という土地が蓋をしています。「海のない街で最も人口が多い」と言われています。

札幌市の歴史

札幌市ができたのは1922年。100年くらい前です。それまではアイヌが暮らしたり、明治政府の開拓しが設置されたりしていました。

戦後に、小樽から札幌へと道の中心地が移り、そこへ人口が集中しました。1970年には人口100万人超え、1971年に札幌市営地下鉄で初路線となる南北線が開業。1972年には政令指定都市に認定されるとともに、札幌オリンピックが開催。アジアにおける始めての冬季五輪でした。

比較的、都市の形成が遅かったため、札幌駅が街の中心部になっており、そこから市電や地下鉄が放射状に伸びています。なお市電は長らく「C」の字型に街をつないでいましたが、2015年に環状線となりました。

札幌市のコンパクトシティへの取り組み

札幌はご存知のとおり雪国です。そのため他の地域に比べて公共交通の重要性は高く、逆に自動車が交通の主役にはなりにくい場所であるといえます。

住むにあたっては不便な要素になりますが、コンパクトシティという観点では雪国こそ街を小さくし、徒歩でも生活できる世界の実現が望まれます。

そんな札幌市が2016年に制定した第二次札幌市都市計画マスタープランでは、「SMILES CITY Sapporo」をキーワードにコンパクトシティへの舵を切ることが決まっています。

「スマイルズ」のそれぞれは方針の頭文字であり「サステナビリティ(S)」「マネージング(M)」「イノベーション(I)」「リバブル(L)」と、「エコロジー」「エコノミー」などの6つの「E」から成り立ちます。

そのなかでは「地下鉄駅を拠点とする集積」「経済成長と環境に優しい都市」などが掲げられています。札幌を中核に、各地下鉄の主要駅を拠点、その周辺の住宅地を「居住ストック活用区域」とします。

この「居住ストック活用区域」は現段階で具体的になにをするかは見えていませんが、唯一「小学校への機能の複合化」はキーワードと言えます。これまで分散していた公共施設を小学校にまとめ、街の質を落とさずに街を維持していく、ある意味で撤退戦のプランなのかもしれません。

札幌市のポテンシャル

札幌は現在、新幹線の開通を控え、力強い再開発が進んでいます。それは億ションであり、200メートル超えの複合ビルであり、また郊外の住宅地でもあり、新幹線でもあります。

再開発が進む中心部

松山市の回でも触れましたが、街の中心地にバスや路面電車などの交通が充実し、政治経済、商業、観光、そして住宅の役割を広く担う街はもともとコンパクトシティの素地があります。

他の町に比べ、比較的簡単な再開発や都市機能の見直しで、快適な街へのアップデートが可能。

そこに追い風となるのが、札幌の再開発です。

札幌では、現在10棟以上の高層ビル建設が進んでいます。そのなかでも「ONE札幌ステーションタワー」は175メートルで、48階建て。地下鉄「さっぽろ」駅との出入り口が作られる予定で、駅徒歩1分。高層階まで624戸あり、最高値の部屋は5億円にも関わらず、完売。

東京のタワマンにも全く引けを取りません。

住ませて…

また、2029年に札幌駅前に完成予定の新ビルは245メートル。多摩美術大学の学長である内藤廣氏がデザインを監修しています。スタイリッシュな格子状デザインの低層階には商業施設が入居し、中層には「スカイガーデン」と呼ぶ交流拠点、高層階は最上階にガラス張り展望台を設置するほか、ホテルやオフィスが入ります。

バスターミナルも入り、駅チカの立地でもあることから新たな交通拠点になることは間違いないでしょう。

「地下直結」の価値が国内屈指の高さ

さきほど触れた2棟のビルはどちらも地下直結であることが大きく評価されています。言わずもがな北国である北海道。雪のない地下道をつたって行けるのはこの上ないメリットです。

この地下道は札幌駅から約2キロ離れたすすきのまでまっすぐつながっており、さらに大通バスセンターにもつながっています。

つまり、地下直結のマンションに住んでさえしまえば、全く外に出ることなく札幌の主要スポットまで徒歩でアクセスでき、電車に乗れば他の都市へ、地下鉄駅やバスセンターに行けば、市内をめぐる地下鉄と、1日およそ350本のバスに自在にアクセスできるというわけです。

これは寒さが厳しい地域ならではの生活の知恵でもあるのですが、コンパクトシティに求められる「ウォーカブル」という視点でも、見逃せません。人がマンション内の駐車場からではなく、地下道から外に繰り出す。これにより、街はにぎわい、環境にもよく、楽しい街が生まれます。

交通網も充実

とはいえ1LDKで5000万円、4LDKで億ションともなれば庶民は買えません。コンパクトシティの大きな欠陥として、中心地への集住が進むほど住宅コストが高くなるという要素があり、ここは考えどころです。

しかし札幌では問題ないといえます。それも地下鉄が市内の各所を結んでいるためです。例えば南区の真駒内駅であれば、さっぽろまで20分の立地に関わらず1DKの家賃相場は5万円ほど。日中でも7分おきに電車がやってきて、座って通勤できます。

この真駒内地区でも再開発の議論が進んでおり、商業・医療・住宅などの整備が計画されています。

新幹線がやってくる

北海道新幹線の開通が予定されています。残念ながら当初の予定よりも延期となる可能性が高いのが2024年時点の原稿ですが、開通すると、札幌と函館は1時間弱、札幌と仙台は3時間、札幌と東京は5時間で結ばれます。札幌にとって、あるいはJR北海道にとって非常に重要なインフラになることが見込まれています。

現在、飛行機を使って札幌駅から羽田空港を経由して東京駅を目指した場合、まず札幌から新千歳まで40分、フライトが1時間半、羽田空港から東京駅まで京急とJRを乗り継いで30分。搭乗手続きや乗り換えなどで1時間ちょっとかかると仮定した場合、4時間弱という行程になります。

新幹線は街の中心から東京の都心まで何もせずにたどり着けるため、交通費や運行本数次第ではいい勝負となるのではないでしょうか。

結果的に関東ー東北ー北海道が縦のラインでつながり、交流人口がグッと広がるポテンシャルがあります。

課題は市外にあり

札幌市自体はポテンシャルにあふれており、非常に希望ある都市であるといえます。

では順風満帆かといえばそうでもなく、特にJR北海道を中心とする道内ネットワークのインフラは危機的です。

JRが握る街の生命線

特に新幹線の開通とあわせて主要路線の存廃問題が紛糾。廃線をちらつかせている自治体に対し、国は貨物輸送の重要性から見直しを求めている状況です。

この路線が廃線となれば札幌への、あるいは北海道から本州の貨物がなくなります。最悪の場合は東北地方のローカル線とあわせて鉄路がパタリと途切れ、台風や大雪などで札幌に生活物資が届かなくなる可能性があります。

また道内のネットワークもいつまで維持できるかの瀬戸際です。当然、廃線となれば札幌の道都としての価値は落ちます。

いかに産業を興すかが肝心

札幌市の内憂が鉄道だとすれば、外患は東京という存在でしょう。

北海道はけっこう東京との結びつきが強く、羽田空港行きの飛行機は1日51便(2023年時点)。福岡空港に次いで多い便数です。

これにより、北海道の若者が東京へ流出していると言われる様になっています。札幌市約200万人の人口のうち、20代の人口は20万人程度。150万人都市の福岡市と20代人口が同じくらいといえば、20代人口の少なさが伝わるでしょうか。

都市としてのポテンシャルは高く、今後も産業・商業の成長が期待できる一方で、若者を繋ぎ止められていないのが札幌市の課題です。。幸いにも北海道には広大な土地、自然を求める観光客が多く、今後新幹線もつながるとくれば、より街は賑わっていくはず。なにか一つ、若者を夢中にさせる仕組みづくりが必要です。

参考

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOFC033IE0T00C22A2000000/

https://www.city.sapporo.jp/keikaku/kougai/sonota/kentouiinnkai1.html

https://www.hokkaido-np.co.jp/article/784671

https://www.re-port.net/article/news/0000068167/

https://sasaru.media/article/media/20220220_001/

https://news.tv-asahi.co.jp/news_international/articles/000286913.html

https://narakanko-enjoy.com/?p=41892

https://shutten-watch.com/hokkaido/21614

https://hatena.tokyo-haneda.com/pages/runway-control

https://www.city.fukuoka.lg.jp/soki/tokeichosa/shisei/toukei/jinkou/tourokujinkou/TourokuJinko_kubetsu.html

https://www.city.fukuoka.lg.jp/soki/tokeichosa/shisei/toukei/jinkou/tourokujinkou/TourokuJinko_machibetu.html

https://www.town.kutchan.hokkaido.jp/town_administration/shinkansen/ninnka

ABOUT ME
isuta
1995年生まれ。中学時代にブログを立ち上げて以降、ずっとライター。 東海地方出身。少年時代に親しんだ鉄道路線や百貨店が次々廃止になり、衰退を目の当たりに。地方を元気にする手法としてコンパクトシティを広めようと思い立ち、「日本をちいさく良くする」「日本をリユースする」をテーマに本メディアを鋭意制作中。

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