宇都宮に路面電車が開業します。「宇都宮ライトライン」と呼ばれるこの路線は、6~10分間隔で約15キロの区間を37~44分で結ぶ予定です。
この路線が開通することで、宇都宮の街は一気に暮らしやすくなることが考えられます。この記事ではライトラインがどのような路線か、また開通によってどの場所が住みやすくなるか、そして将来像を考えていきます。
(路面電車の駅は厳密には「電停」と呼びますが、この記事ではわかりやすさを重視して「駅」に一本化します。また宇都宮ライトラインは本記事ではLRTをではなく「路面電車」の表記に統一します。)
なぜ路面電車なのか
路面電車のまったく新しい路線の開業は、75年ぶりと言われます。既存路線の延伸や、JR線からライトレールへの転換はあったものの、全くの新規路線として、「ライトレール」ができるのは日本初のこと。75年も開発が止まっていた事業がなぜ動きだしたのでしょうか。
「宇都宮市のLRT -これまでとこれから」によると、当初は新交通システムやモノレールを構想しており、当初は路面電車は候補に有りませんでした。動きがあったのは2001年。この際に路面電車を敷設することが決まりました。そして2018年から整備が始まり、まもなく開業を迎えようとしています。
路面電車の設置を決めた背景には、まず新交通システムではあまりに費用がかかること(1キロ数十~数百億円とも)。路面電車とすることで事業費は約684億円まで圧縮しました。また、ヨーロッパで路面電車が復権しつつあることも、追い風になりました。
これは2001年から徐々に路線網を縮小していった岐阜市と対象的です。
結果的に、宇都宮市が2008年に掲げたネットワーク型コンパクトシティの構想において、路面電車は東西交通の要に位置づけられました。
開通で想定される効果
開通によって、交通手段の選択肢が増えるだけでなく、移動の定時制が高まったり、外出できる人の幅が広がります。宇都宮駅中心部で働き、沿線に暮らすパパは「飲んで帰る」という楽しみも増えそうですね。
まちづくりという観点では、おもに2つのいい効果が見込めます。
渋滞の解消
開業で最も期待されるのは渋滞の緩和です。
これまで宇都宮市の東側は渋滞が激しいエリアでした。鬼怒川を渡るための橋が「柳田大橋」「新鬼怒橋」「鬼怒橋」に限られ、特にラッシュ時間帯は車が集中します。
路面電車は宇都宮駅から鬼怒川をわたり、進行住宅地を経て、工業団地を結びます。沿線住民や宇都宮駅に降り立った訪問者は、車に頼らなくても用事を完結できるようになります。
特に、駅と工業団地を結ぶ快速列車がラッシュ時間帯に走ることには注目すべきでしょう。快速は路面電車では珍しく、各駅停車タイプが44分かかるのに対して、快速は37~38分とちょっと早く着きます。通勤輸送をバスやマイカーから路面電車へシフトさせるための起爆剤になるか、注目したいところです。
駅前の活性化
宇都宮駅では、まず西口の再開発が始まりました。1990年代にはJRと東武を結ぶ市の中心地で再開発が始まっています。「ザ・レジデンス」「宇都宮ピークス」といったタワマンも建ちました。
路面電車開業を見据えて、東口もにわかに活気づいています。2022年8月には「Utsunomiya Terrace」と呼ばれる商業施設が住友商事によって作られました。この建物は路面電車とJRの宇都宮駅に直結し、商業施設、コインパーキング、広場、オフィス、ホテルがひとつにまとまった建物です。
本当に良い建物を作るなあと感じさせられるのが、路面電車と同じ高さに広場があり、そこからゆるく階段状でペデストリアンデッキにつながっている部分。これにより駅前空間と商業施設、広間、通路の役割関係があいまいになって、滞留につながりそうです。実際にストリートビューを見てみると、駅前に若者も含め多くの人が集まり、賑わっているのがわかります。
また、住宅としては野村不動産の「プラウド」が、また東宿郷に「ノブレスタワー宇都宮」、鬼怒通りを進んで高架に上がる前あたりに「ポレスター駅東公園ザ・タワー」ができるなど、開発はこれからも進みそうです。それぞれ停留所の真ん前に立地するので立地としては最高ですね。
しかし、宇都宮駅近くに住むことだけが正解ではありません。次の記事では開通後に住むべきエリアを考察します。
参考
うつのみやの再開発
https://www.city.utsunomiya.tochigi.jp/res/projects/default_project/_page/001/009/322/utsunomiyasaikaihatsu.pdf宇都宮市
https://www.city.utsunomiya.tochigi.jp/index.html宇都宮ライトレール
https://www.miyarail.co.jp/宇都宮市のLRT -これまでとこれから
https://www.jstage.jst.go.jp/article/citylife/22/0/22_19/_pdf
[…] このあたりは、LRTが新たに建設された宇都宮のLRTとは正反対です。 […]
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[…] 「宇都宮ライトライン」開業でどう変わる?前編:75年ぶりの新規路線は街をどう変える? 宇都宮に路面電車が開業します。「宇都宮ライトライン」と呼ばれるこの路線は、6~10分間隔 […]