富山市がコンパクトシティ+スマートシティ政策を加速しています。20日に発表した市の予算のうち、5分の1にあたる317億円をコンパクトシティ深化のために使うと発表。これからもますます富山のコンパクトシティ政策は進みそうです。
さらにスマートシティを掲げ、AIやEVなどのトレンドをおさえた実証実験も始まります。
富山市の予算案概要

富山市はかねてより推進してきたコンパクトシティの深化、そしてスマートシティの推進を掲げています。JR高山線の利用推進のために、朝ラッシュ時間帯の6~7時の列車を増発する予算を計上。また駅北側で「グリーンスローモビリティ」利用を推進します。
医療のオンライン化、学校に向けてアプリでの欠席連絡システムなど、スマートシティのための予算も盛り込みました。KNBによると藤井裕久市長は「より市民のみなさんが便利さや安心になったと実感できるものから、実装できるものから順次実装したいと思っています」と話しています。
2002年から2021年まで市長を勤めた森雅志氏の掲げた「コンパクトシティ」の方針。これが色濃く引き継がれています。
逆に言えばコンパクトシティは20年かけてもまだ完成しない政策ということなのかも。
予算総額は1672億円
富山市一般会計の総額は1672億円。昨年より55億円減少させた一方で過去4番目の規模となります。2025年に市が掲げた「都市計画マスタープラン」が目標年次を迎えるため、いよいよ本整備に向けた動きが活発化しそうです。
コンパクトシティの深化

目玉政策がコンパクトシティの深化です。合計317億円の予算を計上し、さらなるコンパクトシティの推進と、既存施設の運営をしていく計画が発表されています。
予算案を個別に見ていくと、都市計画道路の構築や次期計画策定に向けた「都市計画事務費」が1555万円、主要鉄道駅の広場整備やまちづくり活動のための支援である「地域拠点整備事業費」に1.4億円。
鉄道では、富山地鉄やあいの風とやま鉄道の支援に7.5億円。さらに別途、JR高山本線、路面電車のそれぞれに支援予算を計上。駅周辺の整備・運営には10億円を計上します。
再開発も進めます。例えば富山城の南市街地再開発に6.3億円。ちなみにこの再開発は「グランドプラザ」や百貨店「大和」のある地域に向けたものになります。
「スマートシティ」も推進
さらに、富山市はスマートシティの形成にも力を入れていきます。デジタルを活用した自動運転やAIのほか、EVバスを活用した観光の強化も行う予定です。
自動運転の実験や、グリーンスローモビリティ導入も

1億5100万円の予算を、市の南西部「婦中」地域での自動運転の実験に投入します。
新たな交通網の形成にも取り組む方針です。1685万円の予算を計上し、8月から土日祝日に富山駅と富山県美術館の間を結ぶEVバスを走らせます。
富山駅から美術館までは徒歩15分の距離で、これまで有効な交通手段がありませんでした。周辺には「日本一オシャレ」といわれるスターバックス、体育館、各種公共施設が連なっています。これらを結ぶニーズはありそうです。
導入を予定しているのは、群馬県のベンチャー企業、株式会社シンクトゥギャザーの製品である「eCOM-10」。東京・池袋で名物になりつつあるEVバスと同系列です。最高速度19キロと、路面電車よりものんびり走リます。
AI活用のオンデマンド交通も導入へ
市の中央部からクルマで30分ほどの場所にある大山地域では、AIを活用したオンデマンド交通の導入を目指します。今年秋ごろから、乗客の需要に応じたバスやタクシーのルート選定にAIを活用する予定で、配車を最適化。より利便性を高めつつ、オペレーターの負担を軽減します。
コンパクトシティが「実装」される時期に

藤井市長は2021年に市長に初当選し、4年の任期も折り返しに入りました。ここから実績を積み重ねていくためにも、スマートシティ・コンパクトシティの実装段階に入ります。
東京や大阪、その他の大都市のように、ビルがニョキニョキと生えたり、全く新しい鉄道が開業するわけではありません。それでもコンパクトシティ政策の行く先には、「気がつけば便利になっている」「いつの間にか暮らしやすくなっている」そんな世の中が待っているのではないでしょうか。
富山市はさまざまな自治体から、コンパクトシティ政策のベンチマークとして見られている土地でもあります。今後の進歩にも期待です。


参考
富山市
https://www.city.toyama.lg.jp/
スマートシティ推進へ1672億円 富山市新年度予算案
https://www.knb.ne.jp/nnn/news101ulx2s3b3vl6k8n27.html
富山市新年度予算案 一般会計の総額で1672億円余
https://www3.nhk.or.jp/lnews/toyama/20230220/3060012665.html
富山市、コンパクト・スマートシティー 政策の中心に 来年度予算案を発表
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO68618750Q3A220C2LB0000/?type=my#AAAUAgAAMA
富山市 AI活用 オンデマンド交通の実証実験へ
https://www3.nhk.or.jp/lnews/toyama/20230210/3060012584.html
低速電気バス本格運行 富山市23年度予算案
https://webun.jp/item/7921075
池袋を走る10輪EVの「IKEBUS」ってどんなバス?
https://gazoo.com/column/daily/20/07/21/