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愛知県名古屋市で計画中の「SRT」ってなに?バス?電車?徹底解説

SRT (Smart Railway Transit)と呼ばれる新交通システム。リニアの開業を控えた名古屋で、この新たな交通機関が注目されています。名古屋が全国に先駆けて導入しようと社会実験を進めている、町の回遊性を高めようとする取り組みをまとめました。

関連:名古屋駅前に大量の「米粒」が発生?名古屋駅西側 駅前広場デザイン計画が公表

SRT とは?BRTとの違い

欧米を走るトロリーバス

早速ですが、SRTってなんなんでしょう。東京などで走るBRT(バス高速輸送システム)とは何が違うのでしょうか。定義を調べると、

SRT…
技術の先進性による快適な乗り心地やスムーズな乗降、洗練されたデザインなどのスマート(Smart)さを備え、路面(Roadway)を走ることでまちの回遊性や賑わいを生み出す、今までにない新しい移動手段(Transit)である(出典:名古屋市)
BRT…

BRTとは「Bus Rapid Transit」(バス高速輸送システム)の略です。連節バスの採用、走行空間の整備等により、路面電車と比較して遜色のない輸送力と機能を有し、定時性・速達性を確保した、バスをベースとした交通システムを指します。(出典:東京BRT株式会社)

「BRT」とは、バス・ラピッド・トランジット(Bus Rapid Transit)の略で、連節バス、PTPS(公共車両優先システム)、バス専用道、バスレーン等を組み合わせることで、速達性・定時性の確保や輸送能力の増大が可能となる高次の機能を備えたバスシステムです。(出典:JR東日本)

そのため仕組みとしてはほぼ同一です。SRTが「回遊性」「賑わい」というキーワードに対し、BRTは「輸送力」「定時制」など通勤需要に重点を置いているのが違いの1つでしょうか。

SRT構想と名古屋の課題

名古屋駅前

計画自体は2019年ごろから公表されていました。

リニアができることで、名古屋は大阪・東京ともに2時間でたどり着けるようになります。この2時間域人口は、品川起点で5200万人、名古屋起点で6000万人。考え方によっては日本の中心を大きく名古屋に引き寄せる取り組みと言えます。

そのため名古屋市街での再開発や投資が進んでいます。

名古屋は毎年のようにタワマンが増えているよ~

そういった活動の傍らで、名古屋は長年「観光」に対して苦手意識を強く持っている土地でした。もちろん名古屋城や東山動植物園、栄に大須、名古屋港水族館、リニア鉄道館、レゴランドなど設備はあるのですが、これらへのアクセスは地下鉄東山線の最も混雑する区間に乗る苦労や、階段をベースにした地下鉄駅での乗り換えが発生するなど、課題が有りました。

2018年の「都市ブランド・イメージ調査」では名古屋市が最下位、「最も魅力に欠ける都市」の烙印を押されています。これを交通の面から改善しようとしているのが「SRT」といえるでしょう。

河村たかし市長
Youtubeより

名古屋市の河村たかし市長は「やってもそう内容難しくにゃあだろ、なぎゃあバスが走るだけだで。それより街自体がおもしろにゃあだろぉ。」と話し、前向きな姿勢です。

具体的なSRT計画やコンセプトとは

名古屋市のSRTイメージ

SRTによって名古屋が実現したい価値にはどのようなものがあるのでしょうか。

市が発表した資料によると、SRTのコンセプトは3つあります。
1、みちの再生による都心の魅力向上
2、地区感の連携を強化する基幹公共交通
3、まちを訪れる人に新しい移動価値を提供

それぞれを見ていくと、
SRTを走らせることで横軸の移動が円滑になり、町を回遊する人口が増えて賑わいが出ること。かつ、乗り降りしやすいユニバーサルデザインを採用したものであることが、SRTコンセプトに盛り込まれていることがわかります。

きっと路面電車(LRT)でも良かったんだろうけど、初期投資やランニングコストを考えるとSRTが最適解だったんだろうね

車両イメージは、ガラスを多用し、未来的なエクステリアと、将来的に自動運転に対応できる運転席や制御装置などのソフトウェア、乗り降りしやすいドアが目を引きます。
また、スムーズな走りのために路面を着色し、タクシーや荷捌きの車に対しても専用スペースを設けて専用道内に入らないようにすることが検討されているようです。

SRT実現に向けた実験

SRT導入に向けた実験は進んでいます。

9月には名古屋と栄、名古屋・名古屋城・大須を巡る2つのルートで実証実験を行っています。おそらく岐阜市内を走っている連接バスを借り受けたのか、赤い連接車体のバスがリニア改行のタイミングでまず名古屋と栄の間から開通を目指すことが決まっています。

あわせて、同じ9月には「ナナモビ」という自動運転バスも実証実験を行い、名古屋と鶴舞駅を時速19キロで結びました。

運賃は?ルートは?

名古屋市のSRT計画路線図

名古屋~栄の間がSRTで結ばれた場合はどのようなことが起きるでしょうか。

名古屋市の資料では、屋根付き・ベンチ付きの停留所を設置し、運行情報が常に分かるような利用環境が整うとされています。頻度は10分間隔、均一料金での運営を予定。

具体的な運賃は未公開ですが、いま地下鉄・バスの初乗りが210円であることを考えると、高くても200円台前半でなければ利用は増えないのでは無いでしょうか。最高でも250円程度になると予想しています。

運行経路は定まっていませんが、名古屋~栄のルートとしては北から桜通、錦通、広小路通、三蔵通が検討されています。幅員20メートル以上の双方向道路が検討の俎上にあるため、必然的にこの3つに絞られます。

起点の名古屋駅は、大きく太閤通口(西口)と桜通口(東口)があり、可能性としては高速バス停留所のある太閤通口になるほうが高いと言えます。実際、2022年12月発表の名古屋駅西側 駅前広場デザイン計画でも、SRT乗降口の設置が検討されています。
https://compact-city.com/2022/12/15/nagoya-ekinishi/

もし西口の場合は、名古屋駅の北側から名古屋停留所に向かい、名古屋駅の南側から栄方面を目指す形になるでしょう。

栄は、オアシス21のバスターミナルを活用する方法や、久屋大通の中央に専用の乗り場を設ける方法、あるいは道路に通常のバス停として設置する方法など、選択肢が多い分、どれが有力とは断言できない状況です。

続いてルートです。地下鉄とはそもそも機能が異なるため、桜通線の上を走る桜通ルート、東山線の上を走る錦通ルートも可能性としてはあります。名古屋~栄の最短を考えた場合は錦通が最も短く、途中で笹島交差点や錦橋、伏見などの需要が高いエリアも走れます。

ただし、専用道として車線を1つつぶすことが前提にあることと、名古屋高速の出入り口があることから、今よりも混雑が激しくなる可能性は高いでしょう。

名古屋の大通り

すると、一本南の三蔵通であれば、ヒルトンやでんきの科学館、プラネタリウムなどへのアクセス性も高くなるため、より現実性があるといえます。笹島方面をぐるっと巡り、アクセスの不便な愛知大学やグローバルゲートのお客さんを拾う手もあります。一方で道幅は錦通りよりも1車線少なく、現況のままでは狭い道を走る必要が出てきます。

桜通ルートは国際センターと丸の内、久屋大通のテレビ塔を経て名古屋へ向かうルートです。四間道などの渋い観光スポットもあります。見落ちも3車線+自動車専用+広い歩道と申し分ない広さです。

ただし、丸の内は市役所や企業などが多く、あまり観光客の回遊するイメージが掴めないのが、個人的な感想です。

もしかすると片道の循環方式になる可能性もあるかもしれませんね。はたしてどのような形で世に出てくるのか(そもそもちゃんと登場するのか?)見守りたいプロジェクトの1つと言えます。

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出典:

https://www.ido.city.nagoya.jp/machidukuri/newsystem/pdf/srt.pdf

https://www.jreast.co.jp/railway/train/brt/system.html

https://tokyo-brt.co.jp/

ABOUT ME
isuta
1995年生まれ。中学時代にブログを立ち上げて以降、ずっとライター。 東海地方出身。少年時代に親しんだ鉄道路線や百貨店が次々廃止になり、衰退を目の当たりに。地方を元気にする手法としてコンパクトシティを広めようと思い立ち、「日本をちいさく良くする」「日本をリユースする」をテーマに本メディアを鋭意制作中。

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