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「ウォーカブルなまち」とは?なぜ「陰謀論」と呼ばれるようになってしまったか?

「ウォーカブルなまち」が広がりを見せています。

国道交通省の発表では「全国のウォーカブル推進都市」が約3年半で207都市から351都市に増加したと発表しました。こうしたウォーカブルなまちが広がる一方、海外では「陰謀論」による反対も強くなっています。

この記事はウォーカブルなまちのメリットとデメリット、そして「陰謀論」と呼ばれるようになった理由を、国土交通省の資料や海外メディアの報道をベースに見ていきます。

ウォーカブルなまちとは?

居心地が良く歩きたくなるまちなか

ウォーカブル推進都市とは、「まちなかを車中心からひと中心の空間へと転換し、人々が集い、憩い、多様な活動を繰り広げられる場」を、目指すための取り組みです。

「WEDO」の4文字、すなわち「Walkable」(歩きたくなる)「Eye level」(まちに開かれた1階)「Diversity」(多様性)「Open」(開かれた空間」を、「居心地が良く歩きたくなる街」として掲げています。

ただ、この参加条件はあくまで「賛同」するだけで、具体的なアクションを求めるものではありません。そこは割り引いて考える必要がありそうです。

「ウォーカブル区域を設定した自治体数」は 昨年末の時点で73。この都市は具体的にどのエリアをウォーカブル化するか、決めていることになります。仙台、名古屋、大阪、広島、福岡などの主要都市のほか、大分県の綾町や、徳島県の美波町など、人口が1万人を割る地域にも取り組みが広がっています。

国交省はイベントで認知拡げる

国土交通省は、毎年「マチミチ会議」を開催しています。

そこでは、歩きたくなる街をつくることで、近隣住民がその場所で仲間意識を持ち始め、さらに歩きたくなる街が推進される、という好循環を生み出す取り組みを進めています。

ネイバーフッドとウォーカビリティ

たとえばさいたま市の大宮では、街路を活用した飲食の場、植栽の維持管理、ワークショップを実施。こうすることで周辺の人々を街路空間にいざない、街をウォーカブルにしていく、という取り組みが行われています。

こうした動きは海外にも広がっています。パリやロンドンなどでも見られ、パリでは「15分都市」というテーマでまちづくりが進みます。このあたりは福岡の回で触れたので、よかったら後でお読みください。

ウォーカブルなまちのメリット

ウォーカブルなまち

ウォーカブルなまちのメリットは多岐にわたります。その多くは、環境や健康などの、人本来の幸せに繋がります。

「人本来の幸せ」というと、SDGsやウェルビーイングという言葉を思い浮かべます。これらは、すっかりベンチャー企業の飯の種に使われるための言葉となってしまいましたが、本質的にこれからの人類が求めていく概念という意味では否定しづらいもの。ウォーカブルなまちは、こうした人が人らしく生きるための要素に溢れています。

ウォークすることで健康になる

健康的な風景

歩きたくなる街を作ることで、肉体的に健康になります。これまで玄関ドアをあけて、目の前に停まっていたクルマに乗り込んででかけていたわけですが、これをバス停や駅まで歩いてもらう、あるいは街周辺の駐車場に停めてもらい、目的地まで歩いてもらうという仕掛けになれば、必然的に歩行量は増加します。

さらに、精神的にも健康になれます。ご近所付き合いが活発化することで、話し相手、友人関係が充実します。それによって寂しさが減り、生活に活力が生まれます。

環境に良い

路面電車による環境改善

これまでイオンまで30分かけてクルマで出かけていたのを、駅まで歩いて、町中心部まで電車で向かうようになれば、CO2の削減に繋がります。排気ガスも減り、空気はキレイに。

さらに町中心部の空き家が減ったり、街路空間を緑化できたり、街そのものがクリーンになるメリットを生み出すことも出来ます。

地球環境という意味でも、住環境と言う意味でも、「環境を良くする」パワーがウォーカブルなまちにはあります。

地域経済に良い

地元の商店

クルマが徒歩にシフトすれば、その分だけガソリン代もかからなくなります。あるいは、クルマがそもそも不要になれば、ローン、ガソリン、保険、税金、場所によっては駐車代などがまるっといらなくなります。

そうすれば、月数万円が浮きます。さらに、この浮いたお金が、徒歩圏内の地元商業に落ちたら、地元経済はもっと良くなるはずです。

これまでトヨタや出光に払っていたお金で、地元商店街の居酒屋や本屋に行くようになれば、地域経済も良くなるよね、という理屈です。

ウォーカブルなまちの目指すビジョンは「クルマが必要じゃない街」であり、「クルマが持てない街」では決してありません。

しかし今の日本は、経済的に「クルマが持てない街」へ突き進んでいます。

経済合理性がいっそう求められる世相を反映して、ウォーカブルなまちが歓迎される時代が刻一刻と迫っています。

ウォーカブルなまちのデメリット

もちろん、ウォーカブルなまちにもデメリットが存在します。デメリットの多くは、地域経済や社会システムとの整合性が取れないために起こり得ます。

クルマ社会が衰退する

渋滞するクルマ

地方は、これまでクルマを買うことで成り立っていました。中心部でも郊外でも自在に移動できるクルマは、公共交通が弱い土地では必須アイテムです。

一方のウォーカブルな街では、町中心部に車を入れにくくなります。トランジットモールや歩行者天国のような「完全に車が入れない場所」や、ロンドンの「渋滞税」のような仕組みが入る可能性が高まります。

「クルマが要るのにクルマが不便になる」という制度設計のままでは、過疎化を進めるだけです。バスや鉄道の増発、タクシーの割引やライドシェアの解禁など、公共交通の充実がセットでなければ、住民は反発します。

また、公共交通の充実があったとしても、地場のカーディーラーや車工場などが反対する可能性もあります。クルマ産業とどう折り合いをつけるかも、自治体の重たいタスクになり得ます。

郊外の大型商業施設と競合する

イオンモール

自分語りになってしまいますが、愛知の田舎出身の自分からすれば休日のおでかけスポットは街の中心街ではなく「イオン」か「名古屋駅方面」です。

そんな社会が出来上がっている場所で、街の中心部を活性化といったところで、ユニクロも無印も、無印良品もゲームセンターも映画館もないような場所を訪れる人はどれほどいるのか。

もちろん中心部にカフェテラスやイベントの誘致を掲げる自治体は多いですが、イオンに行けばスタバもあるし、イベントもやってます。

つまり、「ウォーカブルなまち」は、すでにある強力なライバル「郊外のアウトレットモール」と、競合します。商品やサービスは全く違うと思いますが、「住民の休日」を奪い合うという意味で強力なライバルです。結果、ウォーカブルなまちに賛同した商業関係者、自治体、イオン、住民、みんな疲弊するという結果を招く可能性もあります。

そもそもウォークする魅力を創れるのか?

ウォーカブルにしにくい街

先述の通り、「ウォーカブル区域を設定した自治体」のなかには、人口1万人を切るような小さな街も含まれます。

滋賀県竜王町の回で触れていますが、小さな町の中心部は町の役場でもなければモールでもなく、近隣の都市の中心部です。竜王町の場合は、隣の近江八幡市へ向かう動きが活発です。

そのため、各地の自治体ごとにウォーカブルな場所を作るよりも、過疎が課題であるならばどこか1つの中心地に投資を集中、近隣の自治体はそこへ「運ぶ」そして「住まう」という役割を担うほうがいいんじゃないの、と思えてくるわけです。

なぜウォーカブルなまちが陰謀論と言われるか

陰謀論者

デメリットとは違いますが、住民理解という視点で行くと、「陰謀論」という強力な敵が出てくる可能性もあります。

強力なのは、陰謀論というものに対して反論すればするほど、陰謀論者は頑なに陰謀論を信じるようになる、ということ。

Undertaleの敵キャラに居そうなタイプですね。

さて、なぜウォーカブルなまちが陰謀論なのか。

CNNによると、オックスフォード市で提案された交通制限の試験運用について、ネットユーザーらが「住民を地元地域に閉じ込めたがっていると主張し、気候対策の名のもとに人々の移動を監視する世界規模の陰謀に加担していると非難している」(引用)と報じています。

その背景には、「15分都市」という欧米で進むまちづくりが、「気候ロックダウン」なのではないか、という強烈な忌避感があります。

「15分都市」のコンセプトは、住民が自分の住居から歩いて15分以内で仕事、学校、ショッピング、娯楽など日常生活の必需品にアクセスできるような都市を設計するというものです。まさに、ウォーカブルなまちづくりに関連する内容です。

この大義名分には「温暖化の原因となる汚染の減少を維持する」というものがあり、これが一部の陰謀論者により「気候ロックダウン」という言葉で紹介されました。環境のために、住民の移動の自由を奪おうとしているんじゃないか、ということです。

結論。「ウォーカブルなまち」は、中規模以上の都市で。

ウォーカブルなまち

ウォーカブルなまちにするには、ウォーカブルにできる場所(つまり広場や都市)の存在と、そこへ連れて行く公共交通や駐車場、まちでビジネスをする人、消費者などの、いくつかの要素が必要です。

これは、国交省の都市局公園緑地・景観課 長尾係長が、都市公園に必要な要素として、「場所・担い手・仕組み」が必要である、と話している内容と一緒です。

「場所・担い手・仕組み」があるところから推進を

現在、日本でこの仕組みを回しやすいのは、札幌・仙台・名古屋・広島・福岡や、県庁所在地などの中規模以上の都市です。

もちろん小型の街でもできるんですが、そこには「車社会との戦い」や「イオンモールとの競合」があり、一筋縄ではいかないでしょう。地域の歴史や観光地、温泉など、なんらかの「そこに行く理由づくり」が必要だからです。

中規模以上の都市であれば、すでに「行く理由」となる商業施設は揃っています。そこに、公共交通を使いやすくなる施策や、道路の整備、道路の商業利用やホコ天などの仕組みを設けることで、ウォーカブルなまちの実現は可能であると、このメディアでは考えています。

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参考文献
ウォーカブルポータルサイト
https://www.mlit.go.jp/toshi/walkable/

「居心地が良く歩きたくなるまちなか」づくりに取り組みませんか?
https://www.mlit.go.jp/report/press/toshi09_hh_000052.html

ユニークな税「渋滞税」
https://www.homemate-research-tax.com/useful/22523_tax_023/

「15分都市」が世界規模の陰謀論に変容するまで
https://www.cnn.co.jp/world/35200855.html

ABOUT ME
isuta
1995年生まれ。中学時代にブログを立ち上げて以降、ずっとライター。 東海地方出身。少年時代に親しんだ鉄道路線や百貨店が次々廃止になり、衰退を目の当たりに。地方を元気にする手法としてコンパクトシティを広めようと思い立ち、「日本をちいさく良くする」「日本をリユースする」をテーマに本メディアを鋭意制作中。

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