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熊本市は「交通」×「空き家活用」で変われるか?

熊本市でも、他市に劣らず、コンパクトシティ実現への機運が高まっています。

市内を巡る市電や、人口の8割をカバーしているバス網など、都市部ならではの公共交通機関を軸としたネットワーク網をつくり、高齢化に備えています。

2018年には、国交省が熊本市を地方再生のモデル都市のうちの1つに定めています。この街で何が行われているのか、見ていきたいと思います。

熊本市は最新の政令指定都市

熊本市内を走る路面電車

熊本は2012年に政令指定都市となり、2023年時点で最も新しい政令指定都市です。人口約73万人で、県民の半分弱が住む都市です。熊本城を囲むように鉄道網が巡っており、熊本駅は街の中心部よりやや南にあります。

新幹線ならわずか40分で博多に着く立地は、東京でいうところの熱海や小山に近いといえます。そこで政令指定都市の規模を保っているという意味では健闘しています。

むしろ明治期は博多より熊本のほうが栄えていたのですが、このあたりは長くなりそうなので、またの機会にでも。

熊本市のコンパクトシティ計画

熊本城

熊本市は、全20箇所の政令指定都市のなかでも人口は少ない部類です。さらに、すでに人口減少のトレンドが見えています。賃貸住宅を中心とした空き家が街の中心部に拡がっており、コンパクトシティ化は急務です。

その一方で若年層は自動車を活用して安い郊外に住むという動きが続いています。そのせいもあり、道路延長は1975年から約2倍の3759キロ、下水道は9倍の2396キロまで延長。今後の維持費がかさんでいきそうです。

さらに市内だけでなく、周辺の町村部は人口減少が少ないあるいは増加傾向の街もあります。

熊本県の市町村別人口増減率

この対策として、熊本市にもコンパクトシティが求められています。鍵をにぎるのは、街中を巡るバスや市電です。

熊本市都市建設局交通政策総室は2012年に「熊本版コンパクトシティ」という構想を打ち出しています。これはバスや市電などの公共交通を軸としたまちづくりの1つで、内容は概ね、官民一体で公共交通の利用を推進していくというものです。

具体的なアクションも見られます。熊本市は2022年12月24日、3月18日とバス・路面電車などの無料デーを実施するなど。混雑が見込まれる日に公共交通機関への誘導を行っています。

バスターミナルは複合施設の1階

コンパクトシティ熊本の象徴「SAKURA MACHI Kumamoto」

熊本市のバス路線は、市の中心部にある複合施設に向かうようにできています。

熊本のバス路線は桜町バスターミナルを拠点としており、2019年に開業した「SAKURA MACHI Kumamoto」という城の南側にある商業施設の1階に位置しています。

バスに乗れば何でも揃った商業施設にたどり着けるという利便性の高さは非常に魅力的で、大阪・東京などから移住した人やクルマに乗れない高齢者などにも優しい作りです。

理想を言えば商業施設に路面電車を乗り入れさせて、バスと同じ場所で乗り降りできると利便性は高まるでしょう。

パークアンドライドを推進

また、都市の周縁部では合計481台のパークアンドライドを用意しており、約半分ほどの契約がある状態。

欲を言えば高速道路が街を大きく迂回するように作られており、他の都市からの高速道路経由でのアクセスは不便です。下道を10キロ以上走る必要があります。

ここは新水前寺あたりまでグッと道路を伸ばして、周辺に大きめの駐車場を整備、路面電車や豊肥本線で街の中心まで出られる仕掛けがあると利便性は高まりそうです。何百億円かかるんだって話になるので、実現はしないと思います。

地震が炙り出した熊本の空き家

復興中の熊本城

先述のとおり、熊本では2016年に地震が発生しました。震度7の地震が2回発生するという、非常に特殊な地震でした。

この地震は、空き家の問題が大きく浮き彫りにしました。震災後の市民からの苦情が一気に増えたのです。

2000年代は年50件もなかった「管理不全の空家等」は。震災のあった2016年いは350件以上に急増。2017年も200件を超える苦情が来ています。

空き家は人口密度に比例するように多く、2018年の調査では全体で3700件近くの空き家があることがわかっています。

空き家対策

熊本市街

こうした空き家の対策として、熊本市は「予防」「流通の促進」「維持管理」「地域資源として活用」「除却」の5段構えで対策を練っています。

予防、流通促進、維持管理のあたりは、住民向けの相談窓口の設置やパンフによる告知などが軸です。ほかに空き家管理サービスや、解体費を融資する銀行の紹介なども実施しています。

除却は、特に放置すると危険となる空き家に対して、所有者への維持管理や建て替え、解体の指導を行うというモノ。

空き家はあくまで持ち主が権限を持っているので、行政による効果的な対策は難しいのが現状です。

地域資源としての活用策としては、熊本市では専門家による調査や診断を所有者向けにアナウンスしています。熊本市には毎年6~8万人が流入しているので、彼らに整備済みの空き家へ住んでもらう施策が浸透すれば、空き家問題も解決に向かうでしょう。

こうした空き家対策の計画期間は2023年度までと定められており、現在最後の1年を迎えています。

市電×空き家対策でコンパクトシティを

熊本の商店街

路面電車がある街はこれから強い、と当メディアでは考えています。市電ネットワーク上の空き家を活用し、集住を進めることが、人口減少が進む熊本市をより良くするヒントの1つになるでしょう。

熊本城の復旧は2052年になるようです。熊本城を守るためにも、市内にさらなる集住が進むことを期待しています。

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