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長野県「門前暮らしのすすめ」に見る、地方のまちづくりに欠かせないヒント

門前暮らしのすすめ、というプロジェクトをご存知でしょうか。長野市の善光寺ほど近くで活動しており、個人主導の空き家解消事例として注目を集めています。

今回は同プロジェクトから読み取れる、「まちづくり」において重要な試みについて考察します。普段マクロな視点でまちづくりを見ておりますが、ミクロでどのような行動をすることで街をより有機的にできるのか、考えていきます。

「門前暮らしのすすめ」とは

「門前暮らしのすすめ」は2009年に始まった長野県長野市のまちおこしプロジェクトです。12年以上にわたり活動を続けています。
主となる場所は善光寺のほど近くにある「ナノグラフィカ」。カフェ、イベントが主体の、古民家をベースとした店舗です。

実施されている取り組みは
・西之門歳時記…地域に向けた小規模イベント
・門前暮らし相談所…空き家の見学会
・門前野活…山歩きイベント
・西之門こどもレストラン…こどもがつくる こどものためのレストラン
など。

善光寺を中心に半径800メートルほどの円に収まる場所を拠点に、活動を続けています。

門前暮らしのすすめが移住・まちおこしの呼び水に

ナノグラフィカ

「門前暮らしのすすめ」の活動によって、これまでに100を超える空き家を再生してきていると言われています。そして現在は工務店・設計・不動産を一括して請け負う会社とつながり、リノベーションまで手掛けています。

こうした事例は「移住」の成功事例として全国から視察があり、数多くのメディアでも取り上げられています。

門前暮らしのすすめ、継続力の高さが街を変えた

門前暮らしのすすめが活動する善光寺参道

「門前暮らしのすすめ」が特別なのは、「12年以上の活動」を続けているにも関わらず「大きな収益源を持たない」ということです。

住民主体の取り組みの場合、まず真っ先に直面するのが資金繰りの問題ではないかと思われます。いろいろとやりたいことはあるし、興味を持ってくれる人もいるけれども、それをするためのエネルギー源がない、という状態です。

しかし現在でも空き家活用のための移住相談、開業相談などの問い合わせを受けており、息の長い活動を続ける中で成果を上げています。

つまり「細々とでもいいから続ける」「行動する」「発信する」といった習慣があれば、街を変えられる可能性があるということです。これはまず収益ありきの不動産系企業ではできない取り組みです。

「異質」を受け入れる重要性

門前暮らしのすすめが活動する善光寺

ナノグラフィカはもともと、木造建築のライブハウスを市内に作ったことが発端で生まれた集団と言われます。音楽や演劇などのアーティストが主体となり、街の古くて良い建物を残していこうという意思が、街の空き家にゆっくりと再生の息吹を吹き込んできました。

ここから見えてくるのは、地域内の新たな取り組みを拒絶するのではなく、逆に受け入れ、面白がれる集団を形成する重要性です。

100%住民全員が賛成する必要はありません。それでも複数人、それこそ空き家再生の場合は不動産に強い人間や地元に精通した人間、役所につながりのある人間が集まってから、実現できることの幅が一挙に広がります。

長野の善光寺エリアで空き家活用が実現した背景の1つには、善光寺というエリアの特殊性があると言えそうです。

ずっと昔から外部の人を受け入れてきたエリアだからこそ、自然と街に新しい人を呼び込むことができた。だからこそ人と人とのセッションが自然に生まれ、新しい取り組みがじんわりと広がっていったのではないかと思います。

まとめ「地域主体」はコンパクトシティの本質の1つ

「門前暮らし」の活動拠点は名前の通り、善光寺にほど近いエリアです。そこはかつて1万7000人が暮らしていましたが、2010年代には3分の1にまで人口減少が進みました。

単純計算すれば、これまで3世帯だった場所が1世帯になる計算です。しかし長野市の2021年資料によると、住宅総数 17万9310 戸のうち空き家が 2万7750 戸、 空き家率 15.5%。核家族化や単身世帯増加などが背景にあり単純計算ほど空き家は出ていませんが、それでも20軒の家のうち3軒が空き家であるという現実は重たいものがあります。

こうした状況が深刻化するほど、コンパクトシティの重要性は高まります。一番簡単なのは行政の支援のもとで空き家を再生すること。前回とりあげた上越市はまさにその事例の1つです。

長野は真逆のパターンで、行政にほぼ頼らず、アーティスト主体…すなわち個の力で街を変える取り組みです。行政の力は大きいですが、現代は「国なんかあてにしちゃだめ」の時代。こういった個々人の意思や活動が重要性を増していくのは間違いないでしょう。

参考

長野・門前暮らしのすすめ
https://monzen-nagano.net/

ナノグラフィカ
http://www.neonhall.com/nanographica/index.php

長野市の「門前暮らしのすすめ」空き家見学会に行ってきました。
https://nakanosaku.xsrv.jp/blog/2021/07/29/naganoakiyakengaku/

「長野・門前暮らしのすすめ」が10年余で変えてきた善光寺門前の空き家、まち、暮らしを見る
https://www.homes.co.jp/cont/press/reform/reform_00949/

ABOUT ME
isuta
1995年生まれ。中学時代にブログを立ち上げて以降、ずっとライター。 東海地方出身。少年時代に親しんだ鉄道路線や百貨店が次々廃止になり、衰退を目の当たりに。地方を元気にする手法としてコンパクトシティを広めようと思い立ち、「日本をちいさく良くする」「日本をリユースする」をテーマに本メディアを鋭意制作中。

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