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「東京」がこれからずっと「不便」な理由

コロナで改めて「東京が不便」という現実が浮き彫りになりました。高い生活費、感染リスクのある満員電車、長引く時短営業、GoTo対象からの除外。実際に東京への流入は減り、千葉や埼玉などの周辺地域がにわかに活気づいています。

今回の記事では、東京が不便な街になってしまった理由を、まちづくりの視点から考えます。

東京が不便な理由は「家」と「災害」の高すぎるリスク

高い住宅が密集する東京上空

東京がコンパクトにならない構造的な問題として、「住居費」「災害リスク」が高く、一方で「交通」「仕事」が充実している点が上げられます。つまり「東京から遠くに住み、東京で働く」という暮らしが、コスパが良いという構造になるわけです。

ビジネスで大成する人ほど「会社の近くに住んで通勤を極力短く」と説きますが、これは金銭的な制約からある程度開放されている必要があります。あるいは築古の賃貸か、プライバシーのないシェアハウスに暮らす必要があり、どのみち生活の質は落ちます。

生活の質を保ちつつ、東京の恩恵に浴したい…そんなありふれた願いが、首都圏に人口の3分の1が集まる異常事態を招いたと考えられます。

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次からは「東京の不便なポイント」を2つ見ていきます。

住居…平均より3分の1狭い家に35年ローンを払う阿呆

2020年全国物価統計調査報告「全国物価地域差指数編」によると、平均を100とした場合の東京の都道府県別物価指数は105.2で堂々1位。「住居」が飛び抜けて高い結果となっています。余談ですが、「教養娯楽」「食料」「家具」も高止まり。「教育」も高いですが、大阪よりは安価という結果が出ています。

住居については、首都圏の新築マンションだと6200万円からが平均で、平均年収の400~450万円一人暮らしではまず買えず、年収500万円の共働きカップルでも35年ローンでまあまあしんどい価格設定です。共働きでしんどいなら、育休をもらって子育てなんて更にしんどくなります。それでもタワマンを始め、「晴海フラッグ」など人気集中物件が続々施工されています。誰が買ってんだろね。

また総務省の「住宅・土地統計調査」では、1住宅当たり延べ面積が全国平均の92.06㎡に対し、東京は65.18㎡です。ツボでいうと20坪ないくらい。東京は「狭くて高い」家に暮らさざるを得ない仕組みになっています。

災害リスク…地震ひとつでみんな餓死?

感染症となると、地方に比べ人口の密集する都市部は必然的に不利となります。感染症のみならず、高度な電気とコンピューター文明の上に成立する東京は地震や津波、火災、噴火などのいわゆる災害において、圧倒的に地方より不利でしょう。(もちろん過去の災害が地方で起きてよかったなんて言う気は0です)

実際にコロナでは、東京は最初に緊急事態宣言が発令され、解除は最後でした。時短営業も長く続き、不便を強いられたほか、GoToトラベルや県民割などの景気回復施策でも除外され、経済的恩恵を与れなかった都民の方も多く見られました。

震災や台風などの東京直撃リスクも考えられます。なにか甚大な災害が起きてしまうと、他の街や国からの食料やエネルギーによって動いている東京は、一気に餓死&暴動のリスクがあります。例えば多摩川と利根川、荒川に掛かる橋がもし全部落ちてしまったら?都内は餓死した子供の遺体が朽ち果て、地方には東京難民が押し寄せる…そんな可能性もゼロでは有りません。

また今後怖くなってくるのは他国からの進軍です。東京は港湾部の奥にあり、島国という性格もあって攻めにくい造りですが、サイバー攻撃などで一点突破されるリスクが有り、政治の仕組みが東京起点でしか動かない現在においては、諸外国に東京を抑えられたら日本に勝ち目はないと考えられます。日本がウクライナから学ぶことは、きっと多いでしょう。

便利な点…「世界三大経済大国」の恩恵をじゃぶじゃぶ浴びれる

経済大国の日本で栄える歌舞伎町

不便の裏には、それと同等または不便を上回る便利があります。金銭的、災害的に不便な東京でも、過去70年にわたり積み上げられた資産があり、超効率的に第三次産業が回っていく仕組みがあります。これが東京の「便利」な要素です。詳しく見ていきましょう。

交通…世界一の鉄道と、制限の緩い車で駆け巡れる

関東平野という日本一広い平野部と、埋め立てやすい遠浅の東京湾。海にも、陸にも街を造成しやすい造りです。

これは江戸という歴史に加え、山手線という郊外からの乗客を超効率的にぐるぐると捌く路線があり、さらに内側にはラケットの網のように地下鉄とバスが走っている、東京特有の非常に発達した交通網の存在があります。

また自動車を規制する…例えばノルウェー、シンガポールに見られるような都心への乗り入れ制限や、イギリスの「渋滞税」といったルールがなく、しいて言えば駐車場や首都高などのコストが高い程度。

そのため電車でも車でも動きやすい街となり、結果として「首都圏」という世界最大級のメトロポリスが出来上がりました。

仕事…全国平均より給料1ヶ月上乗せの旨味

東京は非常に広くビジネス街が展開しています。新宿区、渋谷区、飯田橋から秋葉原にかけての千代田区、東京から銀座にかけての中央区、新橋・品川・赤坂・表参道などの港区、上野・浅草の台東区。東京都のデータでは、会社企業数は約26万社で、全国の15.2%を占めるとされます。

DODAによると2021年最も平均年収が高かった都道府県は、2020年と同じく東京都(438万円)。全体平均は403万円で、差し引き35万円、つまり1~2ヶ月分の給料を平均より多くもらっている形になります。

まとめ:「暮らす」が高い、「働く」が便利な昭和システムが生んだ弊害

東京で働く疲れたサラリーマン

これからのことから、「住居費」「災害リスク」が高く、一方で「交通」「仕事」が充実している東京にとって、「東京から遠くに住み、東京で働く」が最適解となってしまい、無造作に街は大きくなり、結果的に暮らしにくい東京の街が出来上がったというわけです。

これは少子化が進んでも変わらず、またリモートワークの土壌が整っても、劇的な変化にはつながっていません。事実、人口や仕事はあまり減らず、マンションは高くなり、交通も値上げの噂はあれど、大幅に利便性を欠くことは有りません。むしろ交通各社は赤字が減っています。

「地方→東京」は簡単でも「東京→他」はない

「逃げ場がない」というのも、裏付けはありませんが1つのポイントだと個人的に感じるところです。名古屋や福岡がほどほどに暮らしやすい街として完成している理由は、地方から人を集め、かつ東京に人を送るという中間地点だからこそ。そして東京ほど人口が集中しないため、地域のつながりが維持され、秩序あるコミュニティが育まれること。このあたりにきっとポイントがあります。

東京は仕事が多く、また交通網の発達によってまだまだ人口増に耐えうると、暮らしていて感じます。しかしだからこそ、溜まる一方なのは問題です。東京の次は海外しかなく、東京が水ぶくれしてしまう状態は「東京にヒト・モノ・カネが集約してしまう構造」をなんとかしない限り解決しません。

では、この問題の解決にはどのような手法が考えられるでしょうか?
これについては、別記事で詳細に記したいと思います。

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