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集住率とは?コンパクトシティが進展しやすい市区町村の特徴【日本経済新聞「ふるさとクリック」を分析】

前回に引き続き、日本経済新聞の「ふるさとクリック」を分析していきます。今回は同データベースのうち、「10年間の集住率上昇幅」「集住率」「人口密度」のTOP5を分析。どのような町がコンパクトシティとなっているか、共通項を探りたいと思います。

この記事では集住率が10を超えた自治体のなかから、特に数値面が優れた地域のTOP5を取り上げます。データはすべて2020年の国勢調査によるものです。

集住率とは?(前回のおさらい)

集住率とは、「一定の人口数の条件を満たした人口集中地区の人口を全域の人口で割り算出された数値」と定義されます。「人口集中地区に住む人口」を「全人口」で割って計算します。

「人口集中地区」は、総務省が5年ごとに公表する「国勢調査」で設定します。全国を106万箇所に分割し、1キロ平方メートルに4000人以上が住んでおり、なおかつ隣り合わせの区域も同様に4000人以上が住んでいる地域が「人口集中地区」になります。

集住率の高い自治体に見られる傾向

まず記事の基礎データとなる数値面から。

10年上昇幅TOP5

岩手県紫波郡矢巾町 45.4
沖縄県中頭郡中城村 42
岡山県都窪郡早島町 40.7
宮城県黒川郡大和町 39.1
埼玉県比企郡滑川町 34.2

岩手県矢巾町

最も伸びが大きいのは岩手県矢巾町(やはばちょう)。「矢巾町は、岩手県のほぼ中心部に位置する紫波郡に属する町である。幣掛の滝・南昌山・矢巾温泉・徳丹城跡など、町内に名所旧跡は多い。」Wikipedia

集住率TOP5

大阪府四條畷市 95
東京都稲城市 93.8
石川県野々市市 88.1
福岡県糟屋郡新宮町 87.7
福岡県福津市 80.7

大阪府四條畷市

もっとも集住している町は四條畷市(しじょうなわてし)。「四條畷市は、大阪府の北河内地域に位置する市。」Wikipedia。(解説シンプルすぎんか)

人口密度TOP5

東京都稲城市 5183.7
石川県野々市市 4211.1
大阪府四條畷市 2952.2
徳島県板野郡藍住町 2166.3
岐阜県羽島郡笠松町 2156.1

東京都稲城市

密度はやはり東京がトップでした。「稲城市は、東京都の多摩地域南部に位置する市。 人口は約9万人。日本住宅公団による1970年代以降の多摩ニュータウン建設や京王相模原線および小田急多摩線の沿線開発に伴い、多摩川流域の既存住宅地と合わせた人口が急増した。古くからナシやブドウの産地である。」Wikipedia

その他のデータはこちら(Googleスプレッドシートに集住率が10を超えるエリアをまとめました)
https://docs.google.com/spreadsheets/d/1oEsxxJdYZLfYcS8DOFsIzynueYpjQrxptHPflx_NISo/edit?usp=sharing

駅周辺部に重要施設が複数存在

駅と電車。駅周辺部に重要施設が複数存在

交通の基盤である「駅」を中心に、公共施設が集中している都市はコンパクトシティ開発にとって有利です。(そもそも駅があることが前提ですが)

都市の「スプロール化」という言い方があり、これは無秩序な開発による都市の拡散現象を指します。

地価が高騰したり、明確な開発計画がなかったりすると起こりやすく、町中心部から離れた地価の安い田畑を宅地とすることで水道・交通などのインフラの整備が十分でなくなります。結果、虫食い状態の住みにくい町、集住率が低く高齢化や人口減少に耐えられない町が出来上がっていきます。

岩手県矢巾町は、JR矢幅駅を中心に役場や文化ホール、大型商業施設、岩手医科大学などが並んでおり、東西南北1キロ以内に小中学校を除く公共施設が揃っているため、自転車1台あれば快適な生活が可能になるでしょう。特に岩手医科大学は2007年から2011年にかけて矢巾キャンパスへの大規模移転を実施しており、これにより集住率はさらに高まったものと思われます。

可住地面積の割合が低い

竹林と山。可住地面積の割合が低い

宮城県大和町は仙台市に隣接する区域ですが山林が3分の1で、その他は田園や多く、人口が集中するエリアのうち他の自治体に面しないエリアは吉岡地区のほぼ1つだけといって良いでしょう。ほかに目立ったエリアとしては自衛隊の演習場やトヨタの工場などがある工業団地があります。鉄道はありませんが国道4号線がまっすぐ南北に通じています。もともと奥州街道の宿場町として栄えた地域がそのまま街になった形です。

沖縄県中城村も海に面したエリアは平地で田畑が広がりますが、中城城跡や琉球大学を含むもう半分は丘陵地帯となっています。1990年ごろから順調に人口が増加している、日本の中でも珍しい村の1つです。21の行政区に分かれ、村内にまんべんなく住宅地がありますが、人口増加の影響もあってか主従率は増加しています。

埼玉県滑川町は、ほとんどが山なりの丘陵地帯で、谷間に住宅地や田園が広がります。東京の副都心線や東横線を使う人ならたまに目にする「森林公園」は正式名を「国営武蔵丘陵森林公園」といい、同町の多くのエリアを占めております。2002年から開発が入ったこともあり、ここ10年の上昇幅が大きくなっています。

四條畷市(しじょうなわてし)も町の左半分は都市で学研都市線が縦断していますが、右半分は見事に山。ゴルフ場や公園、霊園のほか、田原台という住宅地区もありますが、Google Mapではほぼ山といった印象です。

大都市のベッドタウン+町の面積が狭い

夕暮れの町。大都市のベッドタウン+町の面積が狭い

都市圏に近く、狭い町は集住率も高まります。
ここでは面積20キロ平方メートル以下の下記5都市を見ていきます。
東京都稲城市(17.97 km²)
大阪府四條畷市(18.74 km²
福岡県新宮町(18.91 km²)
石川県野々市市(13.56 km²)
岐阜県笠松町 (10.3 km²)

まず都市に近い通勤圏であれば住宅が増えやすく、それに伴い道路や鉄道が充実します。

平野部であるほど開発がしやすくなり、商業施設も充実します。

岐阜県笠松市は木曽川にべったりとくっついた町で、名古屋・岐阜に近く、名古屋へ向かう特急に乗れば25分程度でたどり着きます。平野部が殆どで、住宅地がまんべんなく広がります。

野々市市もJRに乗れば金沢駅まで2駅のほか北陸鉄道も通り、金沢平野に町の全域が含まれるため、町全体が住宅、一部田園といった印象です。

福岡県新宮町にはJR鹿児島本線と西鉄貝塚線が通り、山間部には九州縦貫自動車道が通されています。鉄道側には住宅・商業施設が整い、街中心部にIKEAがあります。高速道路側には工業団地ができており、物流関連の倉庫も目立ちます。

東京都稲城市は丘陵地帯ですが、京王多摩線が通り宅地開発が進みました。神奈川県との県境ギリギリまで住宅地が広がります。一方で丘陵地帯にはゴルフ場が整備されています。そのため集住率は高くなりやすい地形と言えます。

このほか、盛岡のベッドタウンである岩手県矢巾町、岡山のベッドタウンである岡山県早島町、徳島や鳴門のベッドタウンである藍住町も面積が小さく、駅又は大規模な道路周辺に住宅や公共施設の広がる街になっています。

福津市は52.8キロ平方メートルと決して狭く有りませんが、北九州市、福岡市の2つの政令指定都市に挟まれ、通勤需要も大きいものと推測されます。

TOP5の殆どの自治体で人口増加

さらに、今回取り上げたTOP5の自治体のうち、四條畷市と笠松町を除いたほぼすべての自治体で人口が1%~14%増加しています。もっとも増加しているのが中城村で13.98%。コンパクトシティだから人口が集まっているか、あるいはその逆かを断定することはできませんが、少なくとも自治体としての持続可能性は非常に高いと言えそうです。
https://vdata.nikkei.com/newsgraphics/regional-regeneration/population-map/#

国勢調査は5年に1回実施されており、今回は2020年のデータを参考にしています。今後の国勢調査によって時系列も明らかになっていくと思います。2025年の結果がどうなるか、楽しみですねー

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