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「ダイハツ」の街・滋賀県竜王町、55億円をかけたコンパクトシティ政策の全貌とは

滋賀県竜王町。この小さな町は着々とコンパクトシティにむけた取り組みが進んでいます。小学校などを移転し、新たな街の中心地を作ろうとしているようです。

滋賀県竜王町とは?

滋賀県竜王町をGoogleMapで確認

竜王町の面積は44.55平方キロメートル。全国町村の平均面積が90なのでかなり小さい街です。
小さい街にも関わらず、大型のアウトレットがあり、自動車工場があり、道の駅なんて2つもあります。町内の小学校の数と一緒です。鉄道は県内で唯一ありません。しかし、名神高速道路が通っています。

こうしたことから、往来も多く、産業も発展しており、経済面では非常に盤石な街として完成されています。

街の骨組みは非常にシンプルにできており、生まれながらのコンパクトシティとも言うべき、かなりスッキリとした町並みです。

街を俯瞰してみます。まず名神高速道路が背骨のように街を横断しており、竜王ICを降りると「三井アウトレットパーク滋賀竜王」があります。

そこから町道を進むといくつかの集落があり、その先に県道166号線沿いに役場、図書館、モールがあります。

南にダイハツの工場があり、産業を支えています。おそらくこの工場があるからこそ、町の産業構成は製造業が36.5%を占めます。

そしてダイハツの町という特性を全面に押し出して、住民のうち第二子・第三子の出産の家庭に「タント」などダイハツ車の無料リース特典があります。これは普通に嬉しい。

住宅エリアは街の東側に偏っています。各地に集落がポツポツと並んでおり、田畑がそれを囲っています。

滋賀県竜王町のコンパクトシティ計画とは

滋賀県竜王町のコンパクトシティ計画

竜王町は街の東半分が田園地帯で、西は丘陵地帯です。そのため人口も東側に集中しています。

コンパクトシティの戦略としては、酪農関連などの第一次産業を除いた人口をいかにまとめ、街に賑わいを作れるかが焦点となります。現在は各地に集落が分散しており、通勤や休日の買い物はもっぱら近江八幡や野洲といった市外に向かう動きが中心です。

当然、移動には車が使われます。さらに、別の自治体に商業や雇用を奪われているという考え方も出てくるかもしれません。

アウトレットは街の玄関口に。そして中心となるのは現在の竜王町役場などが立地するエリアです。

中心をつくるためのコンパクトシティ政策

滋賀県竜王町立竜王小学校

現状、竜王町に「中心」の存在はありません。これを、徒歩や自転車でも便利に生活できる街へと作り変えるには、中心となるエリアの整備が不可欠です。

コンパクトシティへの道のりとして、現在開けた場所にある役所近辺に小学校を移転させます。現在役場と小学校は200メートルほど離れており、さらに校舎の老朽化も進んでいました。この校舎を役場近くに新築し、新たに「交流・文教ゾーン」として整備するのが第一段階となります。小学校などの文教施設を55億円かけて街の中心部に持ってきます。

そのうえで、小学校跡地を住宅に変え、集住を促します。「竜王町コンパクトシティ化構想」では、戸建てと集合住宅をミックスした「スマートタウン」の構築を目指しています。

さらに、役場周辺に飲食店やカフェ、特産品や農業と触れ合える施設、医療や金融などの生活に必要な施設を誘致します。

もともと小さい町であることを活かし、第3次産業を集約、コンパクトシティとして周辺住民の集住を促すことでの「暮らしやすさ」を追求する構えです。これは面積の小さい自治体でよく見られる取り組みです。

予約制乗合バスも導入

チョイソコ

オンデマンドバスも整備します。

もちろん、町のなかを結ぶ2022年4月から「チョイソコ竜王」というオンデマンドバスを走らせています。利用一時間前までに電話予約をし、5分前に各地の指定停留所から乗り込むというもの。2022年2月までの試験右繞では、毎月200~300人程度の利用が見られ、会員登録数は1000名を超えていました。

人口1.2万人の、マイカー交通が中心の町としては、かなり先進的な数値なのではないでしょうか。

ただし運行時間は「平日」の「朝8時半から夕方16時」。リタイアした高齢者向けのサービスだとしても、土日も走らせるべきだと思うのは自分だけでしょうか。それに予約が電話のみ、さらに30秒21円がかならずかかる0570ナンバーというのは、どこかセコい印象です。

ちなみにチョイソコは愛知県の「アイシン」が主導しています。電話受付や会員管理なんかもやってくれます。2021年夏の情報ですが、全国20自治体に導入されています。

ほかの自治体ではネット予約に対応していたり、休日も運転していたり、住民利用を無料としていたり、力を入れている場所もあります。このあたりは竜王町に見習って欲しいところ。

とはいえ取り組み自体はもっと評価されるべきものです。複数社がスポンサーとして運営に携わることで住民負担を抑えつつ、持続性も高まるでしょう。コンパクトシティを推進するという観点では、こういったオンデマンドバスサービスが町の交通インフラの最後の要になります。

コンパクトシティのロードマップ

町としては今年から土地を造成し、2年後の2025年に小学校を新築、27年に学童、28年にこども園を移転し、30年に給食センターを移転します。これにより交流・文教ゾーンを整備していきます。整備費用は55億円です。

並行して、道路ネットワークの整備を行い渋滞を緩和。ネットワークを強化します。

コンパクトシティ竜王町に1つ付け足すなら

バス

市内交通として先述のオンデマンドバスが有る一方で、市外との行き来はクルマか路線バスに頼らざるを得ない状況です。

筆者が提案をしたいのは、特急バスの創設です。町の中心地から東海道本線(琵琶湖線)の近江八幡や野洲などの快速停車駅へ「直通」するバスを朝晩のラッシュアワーに毎時4本程度走らせます。

これはコンパクトシティ政策を進めるにあたり、課題の1つとなる「中心市街地に住むメリットの創設」が目的です。当然、車社会なのですばやい収益化は見込めません。しかし、中心地にこれから住む人々に向けて「駅までまっすぐ行ける」「待たずに乗れるバス停徒歩数分」という分かりやすいメリットを生み出すことができます。

(なんなら「京都」「大阪」直通の高速バスがあったって良いんですが、これは2002年に廃止になっていたようです)

追い風は吹いています。特に滋賀の湖南エリアは関西のベッドタウンとして人口増加が続いている場所です。近隣の草津、守山といった場所でも人口増加が続いており、これは少子化社会における地方都市のなかでは珍しいことといえます。

竜王町もベッドタウンとして売り出すにあたり、
・コンパクトシティとしてクルマを使わなくても便利であること
・クルマ、バスを使えば便利な暮らしができること
・その他、守山や野洲、近江八幡エリアと比べた優位性があること
をしっかりアピールする必要があるのではないでしょうか。

アウトレットは現在、町北部を経由するシャトルバスが1時間に1~2本運転されています。また名神高速直結の強みを活かして京都からの直通バスもあります。第三セクター方式として、休日はアウトレットを目指して走るというのもありでしょう。

もちろん、再開発とセットにするべきなのは言うまでもありません。だれも寂れた商店街や、家賃だけ高い狭い家に住みたいとは思わないはずです。

まとめ

竜王町の鏡神社

竜王町は鉄道駅がなく、固定化された中心地がないことが弱点であり、また今後の強みでもあります。

役場周辺に、教育、医療、商業、住宅を集めることで、地方の町村としては珍しいほどウォーカブルな町並みになることが予想されます。

その一方で、これまで田畑だった場所を造成・開発することによる移転・新築の費用について、妥当かどうか、無駄はないかといった住民サイドの視点も、今後重要になっていくでしょう。

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参考

https://www.pref.aichi.jp/kikaku/bunken/torikumi/houkoku-youkou/pdf/sh1-6.pdf
全国比較でみた市区町村の平均人口・平均面積・平均人口密度及び財政力指数 愛知県

http://www.town.ryuoh.shiga.jp/parliament/koukai_shitsumon/shitsumonjyou.pdf
竜王町議会議長への公開質問状について

http://www.town.ryuoh.shiga.jp/machi/compactcity_granddesign/compactcity_granddesign.html
まちの情報ー竜王町コンパクトシティ化構想・竜王町グランドデザイン構想

https://jp.gdfreak.com/public/detail/jp010050000001025384/14
竜王町(リユウオウチョウ 滋賀県)の人口と世帯

https://www.choisoko.jp/
チョイソコ

https://www.asahi.com/articles/ASPD36W7KPD1PTJB00F.html
朝日新聞

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