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福岡市、フランス「パリ」も羨むまちづくりとは?「福岡市が地方最強の都市になった理由」をもとに解説

福岡県福岡市が日本屈指のコンパクトシティであることはご存知でしょうか。
人口密度を同規模の都市と比較すると、2~3倍程度の差がついています。

札幌 1,747人/km2(195.2万人、1,121 km2)
仙台 1,391人/km2(108.2万、785.8 km2)
神戸 2,709人/km2(153.7万、552.3 km2)
福岡 4,717人/km2(162.0万、343.39km2)

※人口は2015年時点

こういったコンパクトシティは、遠く離れたフランスのパリでも推進されています。
今回はコンパクトシティの観点から福岡市の歴史と魅力を解説します。

交通至便な福岡市

交通至便な福岡市にあるPayPayドーム

福岡は新幹線や港湾、空港がすべて半径2.5km圏内に集まっています。

放射状に鉄道網が敷かれ、短距離の地下鉄、短・中距離の私鉄(西日本鉄道)と地下鉄、中距離以上のJR、長距離の新幹線・飛行機をバランスよく利用可能な交通網が整っています。また短距離輸送のバスやシェアサイクルも盛んに利用されています。西日本鉄道の「西鉄バス」は約2800台。1つの企業体が所有するバスとしては国内最多です。(なんとびっくり、東京都交通局ですらバスは1500台程度なんだとか。)

中心部の商業地区を、マンションを始めとする高密度住宅地が囲い、その周辺に低密度住宅が広がっています。
更に博多湾に面しているため海が近く、

福岡は今でこそ「コンパクトシティ」と言われますが、狙ってコンパクト化したというよりは、その歴史が関係しています。

【関連記事】そもそもコンパクトシティとは?

交通の歴史

福岡の交通 海から見る

もともと朝鮮半島に近く、内海ということもあり港の発達が早かった博多湾周辺。歴史に必ず出てくる「金印」もこのあたりに保存されていたことから、少なくとも2000年前から文明があったことがわかります。

貿易の拠点として、遣唐使だの元寇だの歴史の舞台となり、博多港ができたのが1899年。120年以上の歴史があります。

港ができる10年前には、当時の九州鉄道により博多駅が誕生。そして50年後には、現在の福岡空港の前身となる「席田(むしろだ)飛行場」が完成しています。1944年に旧日本陸軍が10日で現地住民を退去させ突貫工事で作ったと言われています。戦後には、戦後米軍が整地。結果として、通常では考えにくいほど都市に近い空港として現代に続いています。

こうしたことから、福岡は陸海空の拠点がかなり集約されています。海沿いが発達し、鉄道が近くに敷かれ、戦争が空港を都市部に設置するきっかけとなり、米軍が接収したことで郊外への移転も起こりませんでした。

福岡市がコンパクトになった理由とは?

コンパクトな福岡の夜

こうした集約されたまちづくりがかなった理由として、福岡の「制約」が大きな薬として作用しています。

福岡市のコンパクト化については「福岡市が地方最強の都市になった理由」(木下 斉、PHP研究所)が細かく分析しています。
著書によると、幕末期に混乱が大きく荒廃していた福岡に対し、国の後押しもあって熊本が圧倒的に有利でした。さらに福岡では、町の名前をどうするか「福岡」「博多」勢がすったもんだの喧嘩になったと言われています。まるでイスラエル。

しかし福岡が荒廃を逆手に容易に土地の買収を進め、熊本に対しまちづくりで優位に。さらに役所が貧しかったため、思い切って民間資本に任せたまちづくりを行いました。

しかしここでも、さらなる制約が。福岡には大きな水源(一級河川)がなく、渇水しやすいエリアでした。そのため周辺地域と協力しながら開発を抑制し、街をなるべく大きくしないよう、大きくしないようにと、我慢しながら高度経済成長を過ごします。

そしてバブル崩壊後、闇雲に開発を進めた様々な都市がバブルのツケで「グエエー」とうめき声を上げる中で、数少ない活気ある街として福岡市は日本TOP5の街にまで成長しました。ウサギとカメの話を思い出します。

パリは「15分都市」実現を目指す

15分都市を目指すパリの夜景

こういったコンパクトシティの取り組みは、2024年にオリンピックを開催するフランス・パリでも進んでいます。パリのアンヌ・イダルゴ市長は、自転車で15分以内に職場、自宅やその他施設にたどり着ける街を理想に掲げ、2020年6月の市長選挙で当選しました。(補足…2022年4月の大統領選では超・大敗北しました)

これは利便性という意味ももちろんながら、環境汚染対策という意味合いも大きくあります。自動車による大気汚染や環境汚染を防止するには、車通勤から鉄道か、自転車や徒歩通勤に切り替えるのが最も効率的。それに加え、鉄道は老朽化のためトラブルが多く、日本ほどの信頼は有りません。必然的に徒歩、あるいは自転車で暮らせる街…「15分都市」への転換に迫られています。

そのため、
・道を100%徒歩か自転車の道路へ変える
・交差点を公園や畑に転換
・ローカルマルシェや子供用スペースなどの充実

清掃も行き届きやすく、治安もよくなるとしています。

パリ市の提唱する15分都市。歩行者天国や地域マルシェなどが描かれる
パリ市の提唱する15分都市。歩行者天国や地域マルシェなどが描かれる

これは世界的に知名度の高い都市において異例の取り組みで、東京に当てはめて考えるとかなり難儀なことが想像できます。現状、東京に住んでいて、それまでの自動車道から車を追い出して緑道にしようという話は現状聞いたことがありません。

余談ですが、日本になく、パリにあるのは「緑を大切にする行動」ではないかと思います。
現在、シャンゼリゼ通りの回収作業を行っており、まずオリンピックまでに舗装の修繕、その後に大規模な緑化を実施する計画。
方や日本では神宮の緑を伐採する・しないで揉めています。格の違いを見せつけられている気分…。

一方で福岡は都市中心部がコンパクトにまとまっており、自転車(シェアサイクル)や地下鉄、バスの活用で「15分都市」を概ね実現しているといえます。福岡市は、フランスのパリが憧れるコンパクトシティを形成できている、数少ない事例の1つと言えるでしょう。

参考文献

https://www.kotsu.metro.tokyo.jp/about/service/bus.html
http://facts.city.fukuoka.lg.jp/


パリ市公式サイト
Paris’s mayor has a dream of ‘the 15-minute city’

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  1. […] も広がっています。パリやロンドンなどでも見られ、パリでは「15分都市」というテーマでまちづくりが進みます。このあたりは福岡の回で触れたので、よかったら後でお読みください。 […]

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