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北と南、スポーツから始まるまちづくり 後編:長崎県長崎市「長崎スタジアムシティプロジェクト」

今回は南の話題です。「長崎スタジアムシティプロジェクト」が長崎県長崎市で進んでいます。もともと三菱重工業の工場跡地だった7万4752.78㎡の土地に、サッカースタジアム、アリーナ、ホテル、商業、オフィス、駐車場など多数の施設が入ります。サッカー場をベースに、さまざまなワクワクが詰まった施設が長崎駅のど真ん中で進んでいる現状をお伝えします。

前回、「北」編として、北海道北広島市で進む「F Village」プロジェクトについてお伝えしました。

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工場跡地で「スポーツの街」、推進役は「ジャパネット」

「ジャパネットたかた」でおなじみのジャパネットホールディングスが主体となり、クリエイティブプロデューサーに歌手の福山雅治をむかえ、2024年に竣工予定の同プロジェクト。もうこの時点で長崎成分でお腹いっぱいです。

長崎スタジアムプロジェクトの開始は2020年夏。ジャパネットがプロバスケットリーグへの参入を決め、ホームスタジアムを作ると日本経済新聞が報じました。総額700億円を掛けて地域創生を行う…地方企業が地元を元気にするために、スポーツも、スポーツを行う土地もすべてゼロから作ってしまうという試みはなかなかレアなのでは無いでしょうか。

ちょうど2022年には、孤立路線ながらも西九州新幹線が開通。曲がりなりにも新幹線の来るターミナル駅として存在感を強めており、駅前も大きく変わっています。

乗るしかない このビッグウェーブに

そんななかで長崎スタジアムプロジェクトは、長崎新幹線長崎駅から徒歩約10分、JR浦上駅から徒歩約8分、銭座町電停から徒歩約3分とアクセス性が高いのが売りです。

北海道と異なるのは、北海道が原野を開拓して球場に仕立てているのに対し、この長崎スタジアムシティは工場跡地の再開発であるという点です。
そのため北海道は住居や保育・医療などを総合した「新規の街」であるのに対し、長崎はよりウォーカブルでコンパクトな街にするための試みであるといえます。

商業やオフィスなども含め、年間850万人の利用を想定しています。参考までに東京ドームは周辺の商業、遊園地などをすべて含めてコロナ前に年間4000万人の利用。純粋なサッカースタジアムだと、少々データが古いですが埼玉スタジアム2002の2016年度観客数が83.7万人。球場としてペイペイドームは「ヤフオクドーム」時代の実績で約400万人となっています。

サッカースタジアムの入場が少ないのは、試合数が年間数十回と非常に限られていることが原因にあります。そのためジャパネットは会場の普段遣いが出来るよう、日中はフィールドを開放して公園として使い、商業施設に立ち寄ってもらうことや、オフィスに入居してもらい、仕事終わりに飲みやサウナなどを楽しんでもらうといった構想を打ち立てています。

それでも、やはり850万人の来場という数値は野心的に見えます。スポーツ+ビジネスで長崎をどのように変えていくか、その片鱗を覗いてみます。

スポーツで「まちづくり」を彩る

ここからは長崎スタジアムプロジェクトを具体的に見ていきます。従来なかったようなアソビがいっぱい詰まっており、ついワクワクしてしまうプロジェクトという意味では、北海道と肩を並べるものになっています。

プロサッカークラブ「V・ファーレン長崎」の新たなホームスタジアム

2006年からプロサッカーリーグとして活動するVファーレン長崎。これまで諫早市の長崎県立総合運動公園陸上競技場をホームスタジアムとしてきており、最寄りの諫早駅から20分歩く必要がありました。

約2万席の客席は長崎県立総合運動公園と同規模ですが、観客席はよりピッチに近くなり、ホテルや商業施設から観戦するといった新しい楽しみが生まれます。

同スタジアムは、ソフトバンクがネーミングライツを取得し「ピーススタジアム」と名付けました。同じソフバングループの「ペイペイドーム」から一体何があったんだと思わずにはいられません。

サッカースタジアムの上をジップラインが通過

本スタジアムは民間主導としては初のサッカースタジアムであり、いろいろな面白さが詰まっています。

たとえばジップライン。サッカー場の真上を4レーンのジップラインが通ります。ジャパネット公式Youtubeでそのイメージを出していますが、サッカー場を見下ろしながら長崎港に突っ込んでいき商業施設へと至るルートが面白いです。

ただこうした施設は、1回遊べば満足してしまうのが相場。さらに試合日は利用できません。

本当の狙いはジップラインを活用した何らかの演出なのではないでしょうか。ゴールを決めたらスモークを出しながらチームの旗を持ったスタントマンが空を飛んでいくような、ワクワクする演出に期待です。

プロバスケットボールクラブ「長崎ヴェルカ」のホームアリーナ

約6,000席の客席を用意するプロバスケットボールクラブ「長崎ヴェルカ」のアリーナでは、可変性を重視し、エンタメ性を追求した照明や音響を配置。ライブやディナーショーなどの用途にも使われます。

長崎ヴェルカは2021年からプロバスケットボールのリーグに参入したかなり若いチームであり、規模や歴史を考えると新アリーナはかなり豪華な投資です。先述のVファーレンとともに親会社はジャパネットグループであり、ユニフォームには「JAPANET」の字がプリントされています。

長崎を彩る新名所の予感…商業・ビジネス・ホテルにサウナまで

スタジアムとアリーナを囲うように商業・ホテル・オフィスの各施設が並びます。

オフィスビルでも試合観戦OK

スタジアムを囲むようにオフィス、商業施設が建ちます。スタジアムの北東部には11階建てのオフィス棟を建設予定。このうち4~9階がオフィスとして使われる予定で、入居を募っている段階です。すでに長崎大学の入居が決まっています。またシェアオフィスの設置、吹き抜け上のラウンジも設置される予定。

スタジアム側に設けられた壁面のデコボコが特徴的です。このデコボコ部分にバルコニーが設置予定で、植栽と日光に当たりながら開放的な仕事ができます。

ホテルにはプールとサウナ、どこからでも試合を見れる

オフィス等の隣、一番川から遠い部分にはホテルが建ちます。全270室、地上14階で64mの高さ。特徴はなんといってもスタジアムビューであるということ。試合当日はサッカーファンで客室がうまる…なんてことも全く絵空事ではないでしょう。

形状は大型船のようで、もしかすると川の対岸から本当に船っぽく見えるのかもしれません。もともと造船所だった土地の再開発として、ニクイ演出をしています。

なおホテルには、観戦しながら楽しめるプールとサウナが併設されています。

北海道のエスコンフィールドでも思ったけどみんなサウナ好きすぎん?

商業施設は90店舗、珍しい「アウトモール」

商業施設は今回のプロジェクトで最も南東にあり、90店舗が入居予定です。業態は長崎でまだ例の少ない「アウトモール」という形式です。

アウトモールとは、「ショッピングセンターと一体化している外向き店舗」のこと。外向きにすることでわざわざ店内に入って延々歩く必要がなく、なおかつ行きと帰りに商品を買ってもらうチャンスが生まれるため、採用例が増えている商業の形です。従来のイオンやららぽーとは対義語の「インモール型」と呼ばれます。

アウトモール型を象徴するのが川に向かって張り出したテラス。川の風と長崎港を望みながら長崎名物に舌鼓…なんて、良いじゃありませんか。

ソフトバンクによるデジタルの後押しも

ネーミングライツ取得のソフトバンクがスタジアムのデジタル周りをサポートしています。例えばキャッシュレス、顔認証、アプリの活用などです。

ソフトバンクはグループ内に「PayPay」があります。キャッシュレス決済の知見を活かしながら、チケット購入や入退場、フード・グッズ購入などがあっという間に完了する…そんなスタジアムになるのかもしれません。

まとめ スポーツで人とつながる価値検証へ

ここまで、北と南、スポーツを軸にしたまちづくりについて紹介しました。どちらも「スポーツ」を軸とし、そこにビジネスや宿泊、サウナなどのプラスアルファをいかに結びつけるか、工夫していることがわかります。

スポーツが軸にあることで、そこになにかしらの「熱狂」が生まれます。試合前のワクワク、得点した際の盛り上がり、勝った後の爽快感、負けた後のヤケ酒。こうしたスポーツ観戦と経済活動を結びつけてあげることで、日常はより満たされるんだろうなと、書きながらおもっていました。

スポーツが街に「交流」を生む

現地のメディアに、ジャパネットの担当者インタビューがあったので引用します。

このプロジェクトを成功させるキーワードは「交流人口を増やす」ことだと思います。
ジャパネットグループは、クルーズ事業も行っておりますが、そこではお客様が寄港することで大きな経済効果が生まれるという実証データもあるんですね。例えば、有名なミュージシャンがコンサートをしたとして、全国からお客さまが集まり、そこで宿泊や飲食を楽しんだりすることを想像するとわかりやすいかもしれません。
そして、ジャパネットグループには、もう1つサッカーという強みがあり、スタジアム構想はクルーズ事業から形を変えて交流人口を増やそうという取り組みになります。そこにはサッカーだけではなくて、イベントなどもそうですし、ホテルや商業施設も軸になって、交流人口を増やすことで活性化につなげようという思いがあります

https://nagasaki-miraism.com/kouhou/ct07/

まちづくり、とりわけ機能を集約したコンパクトな街の魅力を高める術は「交流」にあります。例えば駅直結のタワマンにスーパーと病院と公的機関と学校と住居が纏めて入ればコンパクトなのかもしれませんが、交流は生まれにくい街になってしまいます。フラッと遊び、そこにいる人と感情を分かち合う…そんなライフスタイルが、北海道と長崎でまもなく実現しようとしているのではないでしょうか。どうなるか楽しみです。

懸念は1つ。ちゃんと客が来るのか。

心配もあります。北海道も長崎も、懸念されるのは集客です。札幌でも千歳でもない原生林を切り開き、数百億円を掛けて街を作っています。ここに札幌駅から20分、また徒歩20分かバスに行列してまで、平日の仕事終わりに来場を見込めるのか?が勝負になりそうです。

試合の数は多いため、多くの人が日々訪れる場所になることは予想がつきますが、球場が埋まるような毎日をどのように実現していくのか、交通網と連携したキャンペーンに注目です。

長崎はもともと観光都市ですし、博多方面とのアクセスもよくなったことから交通面の心配は道路渋滞などの需要過剰な方面のみです。一方で試合開催数の限られるサッカーと、まだ日本でメジャーとは言い難いバスケットボールを軸にしているあたり、スポーツを目玉とした集客がどうなるのかは未知数です。

ジャパネットの財力、そして立地の良さを活かし、良い商業施設とオフィスが入ることを祈ります。

NAGASAKI STUDIAM CITY PROJECT
https://www.nagasakistadiumcity.com/

F Vilage HOKKAIDO BALLPARK
https://www.hkdballpark.com/

Bリーグ参入で「地域創生を事業に」-ジャパネットHD高田社長に聞く
https://webreprint.nikkei.co.jp/r/39533D57012343B1A8CBBF611CBDDFE4/

talk theme 〜「長崎スタジアムシティ」〜スポーツをもっと身近に!地域全体が賑わう!
https://nagasaki-miraism.com/kouhou/ct07/

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