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歩いて稼ぐアプリ「Miles」は必要か?時給3円で個人情報を売るメリットを考察

スマホアプリ「Miles」をご存知でしょうか。移動に応じてポイントが貯まり、お得に使える…という新しいコンセプトのアプリですが、前評判ほどの経済的メリットもないという感想を持ちました。今回は番外編として、このMilesについてレビューをします。

Milesとは?移動がポイントになるアプリ

ilesとは移動がポイントになるアプリ

Milesは、その名の通り「マイル」=移動をスマートフォンの位置情報機能で測定し、ユーザーの移動距離やその移動手段に応じてポイントを付与するというものです。ポイントはサービスの割引券などに引き換えができるほか、いくつかの団体に寄付する事もできます。

2020年の秋ごろからにわかに話題となり、一時期は新規ユーザーの登録停止など活況となりました。

ほとぼりも冷めてきた時期ですが、2022年のトレンドともてはやされる一方で、明らかなデメリットにも関わらず誰も指摘しないポイントも、この記事では書いていこうと思います。

必ずユーザーが損する仕組み

月額制、割引、初回無料…ユーザーが損をする仕組みのサービスが並ぶ

ユーザーの1人として感じた最大の違和感は、あまりユーザーのメリットがないのに、あるように感じるようにうまく作ってあるなあというコトでした。

アプリの仕組みは、GPSで移動を検知し、移動方法に応じてポイントを付与、サービスの割引などと引き換えができるというものです。

移動がポイントになる部分は良いとして、このポイントの使いみちがかなり限定されているのが問題。ほとんどが「高級パンの割引」「サブスクサービス初回無料」「4000円購入で1000円割引」など、ユーザーに対しなんらかの金銭的負担を求めるというものです。もらえる割引より、自分たちの持ち出し金額のほうが多くなっています。

サービス自体は良いですが、ユーザーが魅力に感じるかは別です。ポイントの交換ありきで適当にサービスを使うと、必ず損します。

ユーザーは歩くだけ歩かされ、「せっかくポイントを貯めたんだから使わなきゃもったいない」と、各サービスの集客ターゲットとして釣り針に引っかかるのを期待されている状況。結局、有効活用すればするほど、余計なサービスを契約し、家計簿は悪化します。これでは広告付きの万歩計を使っているのと同レベルです。

足で稼ぐ、時給は3円

唯一、ためたポイントのみで交換できる有価物が「アマゾンギフト券」です。しかしコレがぼったくり。

例えば品川から名古屋まで新幹線移動した際の獲得マイルは595でした。

名古屋から品川まで595マイル、1時間半の移動で5円相当。時給は驚きの3円

アマゾンギフト券100円が12000マイルであることを考えると、1円=120マイル、595マイルは5円ほどになります。時間換算だと1時間半の移動で5円なので、1時間3円といったところでしょうか。

正直、この成果で自分のスマホのバッテリーを不必要に劣化させ、移動経路…つまり自宅や家族・恋人の家、職場、お気に入りの場所などなどを見知らぬスタートアップのサーバーに晒しながら生活していくのは、リスクでしかありません。

仕組みはポイントサイトの逆

ポイントサイト

ここまでの「稼げる」仕組みは、従来型のポイントサイトと同じであると感じます。ポイントサイトはユーザーがサービスに登録すると、ユーザーにポイントが入り、運営会社に広告主からの成果報酬が入ります。サービスは無料ゲームからクレジットカードの借金まで幅広く、ユーザーの金と時間を大きく取るサービスほど、ポイント還元も増えます。

Milesはユーザーが歩き、ためたポイントを、サービス登録時に支払って、運営会社に成果報酬が入ります。運営会社に広告主から成果報酬が入る点は同様ですが、そこまでのスキームが逆になっています。

またポイントを有価物に交換するのではなく、サービス登録時の割引に使うことを中心に据えているのも、ポイントサイトと思想が逆な部分です。

まとめます。サービスを使う→ポイントが入る→ポイントを有価物にする のがポイントサイト。

歩く→ポイントが入る→サービスを使うのがMiles。

歩いて(あるいはエコな交通を利用して)ポイントを貯めるという習慣がつくことで、なんか良いことをしているような気分になるのが不思議なところです。

これが令和型(そんな言葉はないけど)だなあと思う部分です。「なんか健康に良い気がする」「社会や地球に良い気がする」というサービスがココ最近、伸び盛りですから。

エシカルかつサステナブルなウェルビーイングな暮らしを、ジビエやアップサイクル、サーキュラーエコノミーで実現するのが好きな方に刺さります。あ、この意味が分からなかった皆さんは正常ですのでご安心ください。ファイナルファンタジーでファルシのルシをコクーンにパージするのと同じくらい難解なテーマです。

歩かせる仕組みづくりはもっと評価されるべき

まちづくりというハード面とアプリなどのソフト面が紐づくと強い

ただし、全くメリットがないとは思いません。

スマホの良いところは、よくも悪くも人を動かす(支配する?)パワーを持つことです。このMilesのメリットは、人をエコな公共交通や徒歩に誘導するということであり、コンパクトシティという観点からも有効なアプリと言えます。

都市の人々が徒歩や公共交通を選ぶことで、街の渋滞は緩和され、交通や駅周辺の商業は活性化し、生み出した利益や税金は更に街が豊かになるように循環します。そのためMilesをポジティブに外出目的で活用できれば、コンパクトシティにとって必要な「徒歩による回遊性のある街」を見直す契機にもなります。

同様の例で、2016~17年ごろに流行した「ポケモンGo」でも多くの人が公園や商業施設に出かけ、高齢者にも散歩を楽しむ姿が見られました。当時は名古屋にいたので、鶴舞公園や常滑駅周辺に黒山の人だかりが出来ていたのを覚えています。

まちづくりは建物などハード面ばかり見られますが、アプリのようなソフト面にスポットを当てるのも同じくらい重要です。

Milesが発展すれば第2の散歩アプリになる可能性もあり、コロナで寂れた商業地区の再生にも、コンパクトシティの達成にも近づきます。まちづくりの観点からは大いに期待できるアプリです。

また、アプリはMiles Japanという日本法人が国内向けで運営しています。位置情報は国内サーバーに保管され、取引企業など外部への提供はされず、個人との紐付けも行わないと発表しています。そのため安心感は多少あります。

ただし現状のビジネスモデルがについて、消費者目線では疑問符を投げかけざるを得ません。今後の方針…すなわち現状の「広告つき万歩計アプリ」になるのか、「脚で稼げるアプリ」になるのか、注目したいと思います。

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