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福島再開発その1:「なぜ福島は実態よりしょぼく見えるのか」

福島県。日本で三番目に広い同県は、その広さや歴史的経緯から県に明確な「中心」がなく、各地が独自にコンパクトシティ化への道を歩み始めています。

このシリーズでは福島市、郡山市、いわき市、会津若松市の各市でどういった取り組みが起きているかをレポート。第一回の本記事では、福島の再開発が「しょぼく」見えてしまう理由と、その解決に向けて県や市がどのように動いているかを見ていきます。

「中心」なき福島県

福島県は独特な県です。青森についで日本で3番目に広い面積に、180万人が暮らし、その所在地はバラけています。

もちろん県庁所在地は福島市ですが、このほかに「いわき」「郡山」「会津若松」と、規模のある街が続き、福島市よりも「郡山」や「いわき」のほうが人口が多いという珍しさがあります。

これほど中心地がバラけているのは他に山形か北海道か静岡くらいで、そのうち北海道・山形は県庁所在地に高密度な「中心」が存在します。静岡は静岡市・浜松市がニ大巨頭ですが、それでも静岡市と浜松市は様々な交通網で密接につながり、文化的な違いは控えめです。

福島の中心が定まらないのには地理・歴史的な経緯があります。まず福島は縦に3分割し、海側から浜通り、中通り、会津と行政・文化が分かれています。さらに江戸時代に福島で力を持った藩が会津くらいしかなく、ほかに1~6万石の中小大名がごろごろと存在していたため、太平洋側は拠点というよりも通行路のような役割を果たしてきました。

福島がしょぼく見える理由

こうした、明確な主役がいない状態こそ、福島の課題です。主役となる街がない以上、180万人の福島県民のリソースは分散し、人口流出や中心地の空洞化が続いてしまいます。

人口としては石川県、長崎県や、政令指定都市のある熊本県よりも多いのに、開発は各街ごとに進んで、結果的にスプロール化し、若者は1時間半で行ける東京へ流出、高齢者は買い物難民になり、街全体にガタが来ます。

とはいえなにか優れたものがあるだろうと「福島県 日本一」で調べた結果が「納豆支出額」「桃支出額」「桐材生産量」「つるむらさき収穫量」だったので、もう少しなにか欲しいと思ったのはここだけの秘密。

もちろん、震災による被害、そして復興により、市町村のまちづくり計画に大きな狂いが生じたという背景もあります。それでもやはり、分散した人口により、福島の各都市にある種の「ショボさ」を感じてしまうのです。

ネットワークも課題です。

交通網を見ていくと、郡山・いわきは東北の玄関口らしく、鉄道・道路ともに、福島を横断・縦断する交通の交わる地点となっています。一方の福島市は先述の浜通り・会津への鉄道アクセスがなく、むしろ仙台・山形への分岐点としての役割を果たしています。いわば東北へのロビー、あるいはエレベーターホールのような立地であることがわかります。

しかし福島を横断する鉄道(磐越西線)は区間によって100円稼ぐのに12000円がかかる赤字路線で、中心の郡山も福島も再速達の「はやぶさ」「こまち」が通過します。

東北本線も都市間輸送がメインで、町中をきめ細やかに走る鉄道路線は多くありません。基本的にマイカーか、バスが利用の中心となる生活動線になっています。

コンパクトシティ化に動き出した各自治体

とはいえ、「福島県民をすべて福島市に集約すれば政令指定都市を超えたまちづくりができる」など考え、広い福島でどこかの街に資本を一極投資するのは賢明と言えません。

すでに各都市で独自のコンパクトシティに向けた動き出しをはじめています。たとえば会津若松ではアクセンチュアと組んで「スマートシティ」推進を開始しました。

また、津波の被害が大きかった浜通りのいわき市では1月15日に駅直結型のビルが完成し、商業施設「エスパルいわき」などが開業します。さらに2025年に向け、駅直結の総合病院が開院する予定です。

また、2018年には「海・まち・山に輝く星座型都市」を打ち出しています。これは浜通りの中心である平や小名浜を恒星、周辺の漁村を惑星にたとえ、恒星を輝かせながら惑星をつないで星座にしていくという、なにやらロマンチックなコンパクトシティ構想を掲げています。これはまさしく各地にノードを作り、それを交通で結ぶ、コンパクトシティの思想だといえます。

福島市では2018年に「風格ある県都を目指すまちづくり構想」を発表。この構想では、福島駅周辺の東西交通を充実させ、駅周辺の開発を進めるとともに、県庁・市役所と、福島市のシンボル「信夫山」との連携を充実させようという試みです。まさにコンパクトシティの思想が盛り込まれていると言えます。

そこへ2021年に「ふくしま田園中枢都市圏」という構想が持ち上がり、福島周辺の9市町村が連携を宣言しました。今後、各都市の強みを活かしながら圏域を盛り上げていくとしています。

このことから、福島県内の各都市は完全に勢力圏を別にしている一方で、近隣都市との連携が図りやすい土地ではコンパクト+ネットワークでつながり、豪雪地帯ではデジタルの導入で街ごとアップデートするという考えで取り組んでいることがわかります。

まさに、各都市ごとのコンパクトシティ計画が動き出し始めている段階です。

次回以降、福島の各市におけるコンパクトシティ計画と、会津若松の取り組みをまとめていきます。次回はこちら

参考文献

ふくしまぐらし
https://www.fukushima-iju.jp/index.html

都道府県ランキング!福島県は何位??~家計調査~
https://www.pref.fukushima.lg.jp/site/kodomotoukei/kakei.html

「第二次いわき市都市計画マスタープラン」
https://www.city.iwaki.lg.jp/www/contents/1523421860125/simple/ikenbosyuu2.pdf

「スマートシティ会津若松」の実現に向けた取組について
https://www.city.aizuwakamatsu.fukushima.jp/docs/2013101500018/

福島市
https://www.city.fukushima.fukushima.jp/

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