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なぜ「大分県日田市」は九州No.1のコンパクトシティなのか 福岡超えの根拠を探る

日田市。大分県の奥地、福岡県に隣接する同町は、ある調査で九州一のコンパクトシティだと言われています。その理由と、コンパクトシティとしての日田市を見ていきます。

そもそも日田市ってどこ?

大分県の中央部に位置する日田市は、山々に囲まれた美しい自然に恵まれた地域です。

温暖な気候であり、春には桜、秋には紅葉が美しいことでも知られています。自然豊かな日田市でのんびり過ごすことができることから、観光客に人気の地域の一つとなっています。

人口は約52,000人(2021年2月時点)で、面積は793.71 km²。街を出て西に行くとすぐに福岡県に入る場所です。

九州一のコンパクトシティ

さて、なぜ日田市が九州一と言えるのでしょうか。

実は、日本建築学会計画系論文集76巻にて、「コンパクトシティ指標の開発と都市間ランキング評価」という論文があります。

この論文で、最も「コンパクトシティ度が高い九州の街」こそ、日田市なのです。

どうしてもコムズカシイ話題にはなりますが、ご興味があればぜひ御覧ください。

論文概要

この論文では、コンパクトシティの必要性が高まる一方で明確な指標がないという課題から、非常に専門的な、あるいは数学的な観点でコンパクトシティを数値化しています。

まずコンパクトシティの指標を簡単に見ていきます。論文によると、まず九州から「鉄道があり」「事業所が500を超える」DID(人口集中地区)を選定し、37の街をレビューしています。

指標は全部で9つあります。
・人口集中度
・形状まとまり度
・DID人口密度
・就業者居住者比
・大型店舗集積度
・公共公益的施設アクセス性
・鉄道駅勢圏カバー率
・生活利便施設カバー率
・文化的要素密度
・公共文化教育施設密度

これらは読み込んでいくとなかなか細かい指標になっています。誤解を恐れず端的に言えば、「人口密度が高く、求心力のある商業施設が立地し、鉄道駅から公共施設や家までアクセスでき、徒歩圏内に学校や公園や役場やお店がどれほどあるか」の数値が高いほど、コンパクトシティだよね、という分析をしたということになります。

個別に見ていきましょう。人口集中度、形状まとまり度では福岡県朝倉市の甘木エリアなど、駅を拠点とした小さい地区であるほど有利になっています。

DID人口密度は都市部のほうが有利で、福岡・長崎の指数が高い結果に。就業者居住者比では大都市の近くにあるベッドタウンが高く、佐伯や中津などのエリアが高い数値を示します。

大型店舗集積度では、百貨店や複合施設の出店ターゲットになりやすい県庁所在地がトップに。公共公益的施設アクセス性ではまさにコンパクトな街であるほど指数が高くなります。

鉄道駅勢圏カバー率では駅や路線が集中するターミナルに、生活利便施設カバー率では郊外の中規模な都市が有利な結果となりました。文化的要素密度・公共文化教育施設密度では観光地が高い結果を示しています。

このなかで、日田市は人口集中度、生活利便施設カバー率が高く、その他も多くの項目が平均を超えていたことから、九州で最もコンパクトな街という結果が示されています。

ただ、唯一の欠点としてデータが古いという問題があります。論文自体、まだ九州新幹線がようやく博多につながるかどうかという時期、熊本の地震もなければ西九州新幹線もないわけです。さらに論文のデータ元となった統計は2005年から2009年にかけてのものです。

逆に言えば最新のデータを当てはめるだけで、どの街がどれほどコンパクトシティになったのか、あるいは離れていったのかがわかるという意味でもあります。

日田市の現状

では、日田市は本当にコンパクトシティなのでしょうか。全体図を見ると市域の多くが森林で、森を行く道すがらに点々と集落があります。

人口のほとんどは久大本線の光岡~日田~豊後三芳の3駅間に集中し、市内で唯一、繁華している場所であると言えます。

地図をみると、日田駅の半径2キロに市役所や学校、商業施設や住宅地がまとまっており、たしかに九州1のコンパクトシティだと感じさせます。

鉄道の衰退が顕著なのにコンパクトシティな理由

一方で顕著なのは鉄道の衰退です。日田駅は1965年度に年間利用者が180万人近くおり、これは1日あたり4000人ほどが利用していた計算になります。しかし、これが2020年度の1日平均利用者は約1000人。4分の1以下に減ったことになります。

ただし人口は3分の2程度しか減っておらず、モータリゼーションの影響が見受けられます。

クルマが普及すると、多くの人は地価の安い郊外へと流れていくのが一般的です。特に日田駅は1時間に1本ペース、たまに特急列車が来る程度。バイパス沿いや大型商業施設のある街へ流れるはずです。

これは日田の地形が影響しているものと見られます。そもそも面積の限られる盆地であり、街の拡大を山が阻んだ形です。

結果として、中心地というか平地の部分に街が残り、江戸時代幕府直轄の城下町として、江戸~昭和の色が濃く残った、魅力ある都市として現代に続きます。

観光資源もあるが近隣が強すぎる

平成時代には「進撃の巨人」作者の出身地ということもあり、キャラクター像が街のあちこちに置かれるなど、聖地的な観光スポットとしても注目が集まりました。

温泉や川などの水資源もあり、ポテンシャルとしては高いといえます。ただし日田は福岡ー別府・由布院ー阿蘇のトライアングルの中心にあり、観光客の誘致はそれこそ大ヒット漫画があったとしても簡単ではなさそうです。

個人的には水、森などの資源に溢れ、歴史を今に伝えるウォーカブルでサステナブルな街としてイメージアップをぜひ図って欲しいところです。

あるいは、せっかく駅舎が水戸岡デザインなので、街全体のリフォームに水戸岡デザインを取り入れて、水戸岡タウンとして見栄えする街並みを狙うのも面白そうです。

さすがにいちいち発注するわけにはいかないと思うので、同氏の建築やデザインを徹底的にAIに学ばせて、地元の建築会社が外観を設計する際の参考にする、というのはどうでしょうか。

数値による「見える化」がコンパクトシティ形成につながる?

今回の論文にあるように、地図や国勢調査などのデータを数学的に落とし込み、コンパクトシティの度合いを測定するという取り組みは面白いといえます。今後も役立つ可能性は大いにあります。

とはいえあくまで指標として認識すべきでしょう。これらの指標はあくまで指標でしかなく、コンパクトシティかどうかは最終的に住民が決めることだからです。

変な例え話ですが、となりが「まいばすけっと」の家と、徒歩5分のところに西友がある家と、どちらが便利ですかと聞くとしましょう。

ここで「スーパーへの距離」という指標で機械的にきめるのであれば、間違いなく前者です。しかし品揃えや値段、ポイントサービスなんかを加味すると、後者がいいと言う人も一定数でてくるはずです。

まちづくりの主役はAIでも機械でもなく人なので、このあたりは踏まえた上で、今後もコンパクトなまちが維持・発展していくのを願います。

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参考

コンパクトシティ指標の開発と都市間ランキング評価

https://www.jstage.jst.go.jp/article/aija/76/661/76_661_601/_pdf

日田バス

https://hitabus.com/

日田観光協会

https://oidehita.com/

日田市

https://www.city.hita.oita.jp/index.html

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