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福井市、新幹線開業で屈指の「コンパクトシティ」となるこれだけの理由

北陸新幹線の延伸開業が2024年に迫っています。2023年現在は終点である金沢から西に向かい、福井県を横断、福井県敦賀市まで路線が伸びる見通しです。

これにより、福井市は日本屈指のコンパクトシティとなるポテンシャルが出てきました。新幹線開業効果が早くも現れ始めた現地の状況をお伝えします。

北陸新幹線で東京福井が3時間に

福井県がすでに新幹線一色なのも、金沢の輝かしい成果を見ているからでしょう。金沢は新幹線開業にあわせて駅前空間の整備を行った結果、いま駅正面の「鼓門」は町の名物になっています。

地元の新聞である福井新聞は「シン・フクイケン」という新幹線特集を2023年の正月早々に開始。3が日だけで12本を公開する力の入れっぷりです。

お正月くらい休もうよ

北陸新幹線 福井県内の計画

それでは、福井県ではどのような計画が進んでいるか見ていきましょう。

福井県延伸は「鉄道建設・運輸施設整備支援機構」主体で進められており、実際の運行ではJR西日本が中心となります。

石川県内に新駅3つ、福井県内に4駅(芦原温泉、福井、越前たけふ、敦賀)を設定し、終点は敦賀に。これによって北陸新幹線の距離は高崎~敦賀 約480kmとなります。

福井延伸の特徴はきめ細かい駅の建設であると考えます。金沢から敦賀間の125kmに7駅、平均して17.86kmごとに駅があります。東海道新幹線で当てはめると515kmに17駅、平均30.31kmです。某県知事が空港に駅を作ってくれないからとあの手この手でリニア建設を妨害している現状を鑑みると福井県の各駅は優遇されていると感じます。

それほど北陸新幹線は従来の特急列車の延長線上にあるということでしょう。各自治体にとっては誘致合戦の成果といえますが、まだ戦いは続くようです。現在すでに「かがやき」(最速達便)の誘致合戦が始まっています。

「かがやき」停車駅は、金沢を出て福井、終点の敦賀となる見通し。ですが、金沢延伸の際も富山県高岡市が臨時停車を勝ち取った実績があり、各市にとっては「せめて1日1本だけでも」というのが本音なのでしょう。

駅がそもそもコンパクト

鉄道運輸機構より

話を福井市に戻します。北陸新幹線の福井駅は、かがやき含め最も早い新幹線が停車するのはほぼ確定路線です。そのためか、駅の構造も新幹線が通過することを見越した設計になっていません。

まず、ホームの数が非常に少なくなっています。1面2線といわれる、ホームの両側に上り下りの列車がやってくる設計です。武雄温泉~長崎を結ぶ西九州新幹線ですら2面2線を基本としているにも関わらず、コンパクトなホーム設計となっています。

さらに新幹線の福井駅は線路を含めて幅約23m。広いとは言えません。これは在来線と、「えちぜん鉄道」に挟まれた場所にホームを作る必要があったため。新幹線の通過には危険が伴うつくりです。

ただ、メリットがないわけではありません。狭いぶん設備投資が抑えられ、迷いにくくもなります。

新幹線メリットは東京直通だけじゃない

新幹線延伸のメリットは、ただ東京に便利に行けるだけではありません。例えば往来人口の増加を見据えて、駅前の再開発が行われ、街に賑わいが訪れる基礎が出来上がります。

わかりやすい例が金沢です。駅の利用者数は新幹線開業前後で314万人から926万人と、3倍近く増えています。

さらにオフィスやホテルが増え、地価や賃料も上昇。経済効果は開業前の予想から5倍以上伸びて、年間678億円に達したという報告もあります。地方の人口が東京に流出する「ストロー化現象」もなく、まさに新幹線開業の成功事例です。
 

福井市が持つコンパクトシティの可能性

新幹線の開業をひかえ、福井駅周辺では開発が進んでいます。これまで目立つ商業施設は西武百貨店程度だったところに、新たな商業施設や、マンションの建設が進んでいます。

福井市のコンパクトシティ計画をおさらい

福井市は1970年から区域区分を設定しており、市内の路面電車も存続していること、さらに郊外に集客力のある商業施設が少ないことから、現状でもコンパクトな街となっています。

今後は既存の市街地を市街化区域、そのなかでも鉄道駅周辺を居住誘導区域として、まちづくりを進めていく計画です。

福井駅の周辺は公共施設や、高齢化を見込んだ福祉施設を設置していく方針です。

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その1 もともとがコンパクトシティ

先述のとおり、福井市は50年前のコンパクトシティという概念ができる前から、土地を乱開発せずにまとまった市街地を維持してきました。

さらに、面白いことに福井にはイオンもららぽーともありません。主力は「エルパ(アピタ)」で市内に2ヵ所。アウトレットに行こうとすれば岐阜へ、ららぽーとに行こうものなら名古屋まで行く必要があります。

つまり、大型商業施設が他県に比べて発展しなかったぶん、必要な商業施設は市内の中心部、あるいは多少移動した場所に立地しています。

他の地域では、コンパクトシティを推進する傍らで郊外のイオン周辺が宅地開発されるといった事例が数多くあります。しかし福井市においてはこの現象が起きにくいと言えます。

その2 新幹線開業で周辺がきれいに

現在進んでいる再開発は、主に2つあります。

福井駅前電車通り北地区A街区市街地再開発組合では、駅前の大通りに面するアーケードを撤去した上で、住宅とホテルの2つのビル、そしてそれらを結ぶ商業施設が新たに生まれます。なお、この商業施設のなかには「福井駅前フードホール」が入居することが決まりました。地場食品の販売や飲食店の入居が予定されています。

ほかにも、建物内にはコンベンションセンターやオフィスも入り、福井駅周辺でのコンパクトな生活につなげます。駅前の歩道は2メートル拡大。歩行空間が広がります。これらは福井市の立地適正化計画に沿ったプロジェクトとなります。

また、駅も変わります。商業施設「プリズム福井」も再開発を控えており、5月に現在の館が閉館、2024年春に新開業予定です。新たに新幹線の高架下を活用し、売り場面積を広げます。

こちらの詳細は2023年時点でまだ見えておりません。「既存のリニューアルではなく、新たな商業施設にする計画である」と、プリズム福井を運営する金沢ターミナル開発の広報担当者は話しています。

その3 鉄道充実&強化が続く

また、交通が意外と充実しているのが福井の強みです。福井駅にはJR、えちぜん鉄道、福井鉄道が乗り入れ、新幹線開業後はJRから分離される形で「ハピラインふくい」が開業予定。

金沢と似ているものの、駅から短距離の移動がしやすい環境にあるのは大きな強みです。

特に路面電車にあたる福井鉄道は、福井市の北部から鯖江を経て武生までつながる路線をもっており、並行するJRの駅がないところから細かく乗客を拾っています。

25万人の都市としては充実した路線網だといえます。その背景にはえちぜん鉄道の前身「京福電鉄」の失敗があります。京福電鉄は度重なる事故で国交省から運行停止の命令を受けて、全部の電車が止まりました。

すると、バス輸送のキャパシティが足りず、さらに大渋滞が発生、「負の社会実験」と呼ばれるように。

こうした教訓から、福井は公共交通の維持に積極的です。

2022年12月には「電車通勤の楽園へ」と銘打って、マイカー通勤を電車通勤へシフトするキャンペーンを開始。毎週金曜日は「カー・セーブデー」として、福井鉄道は1ヶ月間、金曜日2,920円で乗り放題となるチケットを販売。えちぜん鉄道はカーセーブデー回数券として、通常11枚の回数券が13枚セットになった金券を販売します。

これにはいろいろな背景がありそうです。詳細はまた別の機会にでも

その4 観光資源が点在

またえちぜん鉄道は2路線あり、地元に根付いています。地域輸送だけではなく、それぞれ福井県立恐竜博物館と東尋坊という観光地を結んでいることも強みと言えます。

このうち福井県立恐竜博物館は2023年夏にリニューアルを控えています。巨大スクリーンや恐竜体験教室、ガラス張りの収蔵庫などのアップデートを予定しています。

更に、恐竜博物館へのアクセスを担うえちぜん鉄道は、静岡鉄道から引退した車両を購入し、恐竜博物館へ向かうイベント列車とする計画を進めています。

まとめ コンパクトシティのポテンシャルを芽吹かせる福井

福井市がコンパクトシティの文脈で語られることは少ないのですが、情報を集めていくごとに「もともとコンパクトだった街を維持してきた」だった、という歴史があきらかになりました。

「コンパクトシティの維持」は、郊外への大規模施設を出店させなかった地域の小売や行政の尽力、路面電車や一度廃線になりかけたえちぜん鉄道の存続、さらに新幹線開通を機に進める町のにぎわい活性化などからも読み取れます。

目立つ街ではありませんが、地味に実直に街の形成を進めてきた真価が発揮されるのは、そろそろなのかもしれません。

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福井市立地適正化計画【概要版】
https://www.city.fukui.lg.jp/sisei/tkeikaku/tkeikaku/rittekikouhyou_d/fil/gaiyoubann.pdf

福井駅前電車通り北地区A街区市街地再開発組合
https://fukui-saikaihatsu-a.com

日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCC048JH0U3A100C2000000/

福井新聞
https://www.fukuishimbun.co.jp/

福井市都市交通戦略について
https://www.city.fukui.lg.jp/kurasi/koutu/public/koutu-senryaku.html

『電車通勤の楽園へ』マイカー通勤から電車通勤へ変えてみませんか。
https://www.pref.fukui.lg.jp/doc/013561/221125.html

巨大フードホール計画 福井駅前再開発ビル(福井県)
https://news.yahoo.co.jp/articles/0e152e9d4c9a4c442791d7408c97367c780d8d99

エルパ
https://lp-lpa.co.jp/

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