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コロナで都市計画は変わる?国交省「新型コロナ危機を契機としたまちづくり」をわかりやすく解説

2021年はコロナ対応に多くの方が追われたことと存じます。まず医療関係者の方、そして自粛組の皆さま方、お疲れ様でした。

さて、このメディアで報じている「まちづくり」においても、コロナの影響が出ています。デジタル化が進み、リモートワークや「おうち時間」などが定着。まちづくりも新しい生活様式を反映したものになろうとしています。

「新型コロナ危機を契機としたまちづくり」を分析

「ニューノーマル」に対応したまちづくりを推進する必要がある

国交省が2020年9月に発表した「新型コロナ危機を契機としたまちづくり」では、「三つの密」の回避など「ニューノーマル」に対応したまちづくりを推進する必要があるとしています。

コロナの影響として、テレワークやデジタル社会による生活の変化が顕著になる一方、これまで以上に「過密」問題が顕在化したと論文で指摘しています。

その中での要点をかいつまむと、下記のとおりです。

・従来よりリアルの場へ集客するのは難しいがニーズはなくならない
オフィスは仕事場から交流やコミュニケーションの場に
・生活圏に自然やオープンスペース(カフェなど)の需要が高まった
・公共交通から徒歩、自転車へのシフト
・公共交通はMaaSなど次世代型への脱皮が求められるように
・デジタル化が進んだ&もっと進めるべき

コロナによって「人が集まる」という行為がリスクを孕むものとなり、人々が好きな場所で密集せずに過ごせることへの価値観が高まりました。そのため緑地、公園、カフェなどの場所が重要になってきています。

これを受けて交通も変化が求められそうです。満員電車から、個人で好きに移動できる徒歩や自転車へある程度は需要が移りました。

今後は小型EV、MaaSなど、個々人に最適化された交通網が今後もっと求められるようになるかもしれません。

2020年夏時点での「コロナ対応シティー」の縮図

上記の分析をまとめると、今後求められるまちづくりはこうなります。

「都市の持つ集積のメリットは活かして、国際競争力強化やコンパクトシティなどは引き続き進めつつ、三つの密の回避など「ニューノーマル」に対応したまちづくり

その中で挙げられていたのは4つ。
・職住近接のニーズに対応したまちづくりの推進
・まちづくりと一体となった総合的な交通戦略の推進
・緑やオープンスペースの柔軟な活用
・リアルタイムデータ等の活用による、過密を避けるような人の行動の誘導

このうち上の2つはコンパクトシティの理念そのものであり、また下の1つはスマートシティ推進であると言えます。職住近接はコロナ関係なく生活に重要な要素で、無駄な通勤時間を削減することでより生活環境をよくできます。また交通についても、本数やルートを見直すだけでなく、LRTの整備など抜本的改善を目指す自治体が複数見られます。

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よりコロナの影響を受けているのは下2つ。「緑やオープンスペースの活用」「過密を避ける」、こうしたテーマがコロナ収束後も一定の支持を得ることになるでしょう。

2021年4月にまとめた「ウィズコロナのまちづくり」とは

2021年4月にまとめた「ウィズコロナのまちづくり」とは

そして2020年に設立された検討会「デジタル化の急速な進展やニューノーマルに対応した都市政策のあり方検討会」では、より具体的な中間とりまとめとして、4月に資料の発表がありました。

このなかでは、コロナでより一層、暮らしにおける多様化が求められるようになり、「仕事」「暮らし」における多様な選択肢を街が提供すべきとされました。

ただし、新たな建築や造成を行うのではなく、既存のものをうまく再利用するような都市をあるべき姿に据えています。

たとえばこれまでの道をオープンスペースに切り替えられるようにする、空き家をコワーキングスペースにするなど、コロナの影響が「サードプレイスの創出」という方面で現れているのが面白いところです。

サードプレイスといえば、いくつかのカフェが店舗のあり方として「サードプレイス」を掲げていました。家でも職場でもない、寛げる場所をサードプレイスと定義するのであれば、これまで遊休地となっていた場所にも新たな活用方法が出てくるかもしれません。

ただし、そのほかのイメージをみていくと、公・民・学の連携によるビジョン共有、デジタル技術による新たなサービスなど、相変わらずぼんやりとした内容に留まっており、このあたりはなんとも「お役所感」が伺えます。

今後、都市生活にどう影響する?

公園の重要性がコロナで高まったワン

気になるのは、今後、まちで暮らすにあたって何らかの変化があるのか、という点です。

考えられる変化として、需要さえあれば遊休地や公共空間をどんどん柔軟に使おうという意識が強くなっていく可能性があります。

そのためいわゆる「ホコ天」や「オープンテラス」など、密にならない場所づくりが、特に日本人の口からマスクが外れてくると顕著になっていくのではないでしょうか。

たとえば真っ先に思い浮かぶのが空き家の活用です。都市のみならず、地方でも飲食店やライブハウス、小売店などが閉店しました。こうした空きスペースが空き家となり、都市景観や治安などに悪影響を与えています。またコロナ前から、イオンモールなど大型商業施設の発展にあわせて、商店街の空洞化が課題となっていました。

こうした空きスペースに、新たなテナントを入れるのではなく、よりゆとりをもたせるための公共性の高い場所を設ける動きが加速していくでしょう。

実際の動きとして、東京都小金井市「タウンキッチン」では空きテナントを「シェアキッチン」へと改装する事業を実施。広島県呉市では「そごう」の跡地を複合施設へと作り変えるプロジェクトが動いています。

まちづくりもコロナ対応版へアップデート

コロナ後も発展を続ける都市

まちづくりといえば、10年~20年先を見据えて実施するのが当たり前の中長期的プログラムですから、「今後はコロナのような感染症が起こってもなんとかなる街を作っていこう」という強い意気込みを込めて動いている取り組みと言えそうです。

確かに東日本大震災をうけて、沿岸部では津波に強いまちづくりが進みました。コロナのような感染症も、またいつ起こるかわからない、しかしほぼまた起こってくるであろうという自然災害の1つですから、感染症リスクをふまえたまちづくりを心がけるのも頷けます。

特に、これまで半ば無視されてきた「過密」などの問題がコロナによって更に無視できなくなってきたというのは興味深いことです。

この記事に書かれている内容はこのPDFでも見られるので、ビジュアル風に確認したい方は御覧ください。

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