事例

先見の明、新潟市「にいがた2km」政策のポイント

新潟県新潟市では2021年からコンパクトシティ政策が進んでいます。新潟の駅から万代を経て古町まで至る道を「にいがた2km」として整備し、都市の活力を高めていく構想です。駅の改築が進み、2023年にはバスターミナルが、2024年には商業施設ができあがる予定。向こう数年の新潟は、都市計画という観点でも注目すべき時期と言えます。

まず…新潟市が発展した理由

にぎわう新潟の万代島

皆さんは新潟と聞いて何を思い浮かべるでしょうか?雪?米?酒?佐渡ヶ島?長岡花火?

自然や伝統が思い浮かぶ新潟ですが、新潟市は政令指定都市でもあります。20ある市のうち、人口は16番目に多い78万人。横浜や大阪などと比べ、必ずしも大きくはありません。野球でいうところの中日あたりのポジションでしょうか。

一方で、市は1889年4月からあり、東京市(当時)や名古屋市よりも歴史は長いんです。日本海に面しており、江戸時代には日本海最大の港町として、「西廻り航路」を支えました。これが明治時代に港町として整備が進みます。

一方で明治以降は鉄道の影響力も高まって来ました。駅は激しい誘致合戦の末に、1897年に「沼垂(ぬったり)駅」が開業し、1904年には初代新潟駅が開業しています。

ウィキペディアいわく、誘致合戦が過激化して爆破テロが起きたらしい。戦前の日本人、活力ありすぎ。

1935年には2代目、1958年には3代目の新潟駅と年々サイズを拡大。火事や地震に見舞われながら、万代口駅舎は2020年まで新潟の玄関口として運用されてきました。

また、2007年には政令指定都市に指定。日本海側屈指の都市部として影響力を持っています。

「にいがた2km」策定の経緯

萬代橋がにいがた2kmの中間地点

前章の解説を地図に置き換えると、ユニークな特徴があることがわかります。それは町の中心が徐々に内陸へと移動し、ミルフィーユ状に歴史ができていることです。海から信濃川、信濃川から陸地へと、地層のように街の顔が変わっているのが新潟の街に見られる特徴です。これにより、放射状に発展してきた東京や、碁盤目状に発達した京都とはまた違った雰囲気があります。

「にいがた2km」では、この街を縦に貫く道路を中心とした開発が行われる予定です。

このまちづくりに関する議論は2010年代から行われて来ました。新潟の人口は他の地方都市にもれず、2005年の81.3万人をピークに減少トレンドにあり、高齢化も進んでいます。そこで改めて新潟を日本海エリアの中核都市に位置付け、ビジネスを軸とした経済の活性化と、観光客による交流人口の増加を目指します。

第一弾として、2019年には「新潟都心の都市デザイン」として新潟2kmの前身となる「新潟駅・万代地区をつなぐ公共空間利活用社会実験」が行われ、道路の一部を歩行者天国にするなどの試みがなされています。

駅から万代地区にいたる街区に人を呼び込むことで都市の賑わいをつくるこの取組みは比較的好意的に受け止められ、2021年には続行する形で「新潟都心の都市デザイン」を発表。社会実験のエリアや規模を拡大し、飲食スペースの提供や商店街の大規模なテイクアウトキャンペーンが実施されました。

これも好評のうちに終了し、2022年2月に都心のまちづくり 【「にいがた2km」の覚醒】が改めて発表されました。

実証実験における不満の声として出ていたのは「鳥の糞」くらいでした。

「にいがた2km」とは…150年目の転換点

改めて、にいがた2kmで取り組まれるプロジェクトについて見ていきましょう。

本プロジェクトでは、新潟駅の北口から、萬代橋、古町にいたる約2kmの都市デザインを再整備していく計画です。新潟駅周辺の開発が進む一方で人口減少やビルの老朽化、オフィス不足が課題に挙げられており、これらの解消を目指します。

水と緑を活かし、住民にとって働きやすく過ごしやすい町の開発を目指していくようです。

コンパクトシティという文言は出てきませんが、徒歩や自転車での回遊性を高め、都心部に人を集める試みはその一端であるといえます。

2021年公表の「新潟都心の都市デザイン」では都心を5つのゾーンに分けました。駅前の3本の通りを西からそれぞれ弁天ルート、東大通ルート、花園ルートにエリアわけし、日本海側への流動性を高めます。また海側は万代島近辺の水辺エリア、萬代橋を越えた旧市街地・開花エリアとして、3つの通りから流入してきた人を滞在させます。

中核は商業へのテコ入れです。都心はビル再開発やIT化の推進などの未来へ向けた取り組みと、観光・商店街の活性化という過去の活用を同時並行で進めていきます。

予算を最も割いているのは新規事業展開資金の貸付金…つまり町中の中小企業に対し、どんどん新しいビジネスを始めてください!というものです。

この予算は8.4億円を計上。並行して2.8億円の補助も実施します。その他の取り組みが1億円未満なことを思うと、民間企業への資金援助がいかに大きいかがわかります。

どういったプロジェクトが立ち上げるかは分かりませんが、民間主導のまちづくりを期待したいところ。

交通のあり方 高頻度BRTを背骨に

高頻度で発車するBRT(駅舎は改築前)

交通網はどのように変わったでしょうか。鉄道とバス、それぞれを見ていきます。

1)鉄道

新潟駅にはJRの在来線と新幹線が乗り入れます。60年来の駅リニューアルが大詰めを迎え、2018年には一部が高架に、2022年には高架ホームが全面開業。新潟駅の南北分断が緩和される見通しです。

今後はバスや商業施設などの整備が進んで行きます。

2)バス

2015年に導入されたBRT「萬代橋ライン」が駅から万代方面へ高頻度運転を行い、街の導線として活躍しています。

従来は、新潟駅から各方面へのバスがバラバラに発車し、新潟~万代~古町~市役所に複数の路線が乗り入れていました。

これは便利である一方、複雑なバス系統による混乱や渋滞を引き起こし、結果として利用者離れにつながっていました。

そこで、新潟駅前から市役所の隣である青山まで「萬代橋ライン」というBRTを整備し、青山から各地へ伸びる支線を整備することで、よりシンプルなバス路線網を実現しています。

乗り換えこそ必要になりますが、利用者の減少を食い止めるという観点では、土地勘のない外部の人をタクシーやレンタカーから引っ張ってこられる施策なのではないでしょうか。また、乗り換えスポットの1つである市役所前に、屋根付きのバスターミナルを整備してUXを高めており、従来の利用客へ配慮している様子も伺えます。バスを2つ繋いだようなスタイルの「連節バス」も導入しており、輸送力増強につなげています。

実際、新潟市によるとBRTと路線バスの合計利用者数は運行開始2年目で前年に比べ約2.5%増加。定時制も高まり、ラッシュアワーの朝8時台には14本…つまり4分に1本ペースでの運行を実現。結果として「にいがた2km」の施策を支える背骨的存在となっています。

東京の地下鉄やん。

新潟駅の高架化を契機に、2023年の春には、南北に分離しているバスターミナルを駅直下にあつめる計画です。駅改札からエスカレーターで直結させる構想もあります。

また、現在は新潟駅から北へ向かうのみのバス路線を南にも伸ばし、南部の公園や病院を結ぶ構想もあります。

かつてはモノレールや新交通システム、路面電車の構想も出ていましたが、周辺自治体の理解、駅周辺の地盤のゆるさなど課題が多く、実現の可能性は低いでしょう。

3)その他(自家用車)

また、2022年6月の編集時点では、駅直下の道路を自動車が通れない仕組みとするようです。

賛否両論、また新潟日報の22年1月の記事を見ると「否」のほうが多い印象も受けますが、自家用車を排除することで公共交通や徒歩・自転車の流動性が高まる効果が期待できるのでは。車社会の常識が良い方向に変わっていくのを望みます。

コンパクトシティ政策で訪れる変化とは

コンパクトシティがすすむ新潟のモニュメント

にいがた2kmの施策は、覚醒という非常に威力の高い言葉が選ばれていることからも注力ぶりが伺えます。

コンパクトシティ政策としては、交通という串にバラエティあるまちをつなげる、バーベキュー串のようなつくりで、王道を行くものです。しかしその中でも注目なのが、「2km」という徒歩移動できるレベルの短距離に再開発のエッセンスをぎゅっと凝縮している点にあるといえます。ここに先見の明があります。

もともとのサイズが小さい埼玉県蕨市(関連記事)や大阪府藤井寺市ではなく、県庁所在地のなかでも上から15番目に広い、しかも車社会の新潟市で、このようなプロジェクトが動くことに意義があるのではないでしょうか。

鉄道・BRT・徒歩を絡ませた回遊性、職・住・観光が密接に隣り合った都市デザインが政令指定都市で行われることで、今後の衰退する日本を支えるモデルケースが生まれてくる可能性があります。どのような脱皮を見せるか、もっと注目されるべき事例といえるでしょう。

★都市データ★
新潟県新潟市
人口:約78.0万人
面積:726.45km2
人口密度:1,074人/km2

地図でみる新潟県―市街地に刻まれた歴史と地理― 単行本 – 2022/4/15

新潟あるある ご当地あるある Kindle版

ウィキペディア
新潟市 https://www.city.niigata.lg.jp/smph/index.html
新潟日報 https://www.niigata-nippo.co.jp/
日本経済新聞 https://www.nikkei.com/

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