コンパクトシティ事例

埼玉県蕨市のコンパクトシティ計画とは?日本一狭い市は2024年にどう変わる?中編

埼玉県蕨市。日本一小さく、また日本一人口密度の高い市と言われる同市では、現在市の最優先事項としてコンパクトシティの形成に取り組んでいます。今回は具体的なコンパクトシティ形成に向けた取り組みを紹介し、分析していきます。

前回の記事はこちらからご確認ください。
そして結果については、2021年時点で公表されている内容を後編でお伝えします。

前回のおさらい

蕨市は日本一小さい面積の市であり、その公共施設や商業施設は多くの住民にとって徒歩圏内にあります。

一方で商店街の衰退は顕著です。そのため、市は「コンパクトシティ蕨」という計画を公表。2021年から2024年にかけて計画を推進していくとしています。

その中でまちづくりの軸となるのが、2015年からプロジェクトの進む「中心市街地活性化事業」。

コンセプトは、下記の2点。
1 コンパクトな都市規模ならではの都市活力を創出するまちづくり
2 愛着をもって誇れる個性と利便性を備えたまちづくり
このまちづくり方針をもとに、複数の施策を現在にいたるまで継続しています。

この記事ではこの取り組みを分析します。

「蕨市中心市街地活性化基本計画」具体的な施策

蕨市の歴史的な通り

蕨市では、2015年時点での課題として7つの課題を挙げています。
それは、
①人口を増やし
②まちづくりに参画してもらい
③駅周辺の拠点を強化し
④生活環境を高め
⑤商業集積し魅力を発信
⑥商店街を訪れる人を冷やし
⑦滞留時間を長くする

というものです。蕨市に限らず、コンパクトシティ形成を目指す街すべてが推し進めるべきエッセンスが詰まっています。

これら7つの課題を解決するため、蕨市が掲げた方策は3つ。
蕨市が具体的にどのような取り組みを行っていったか、見ていきましょう。

①空間ストックの有効活用による新陳代謝の誘発

今回のコンパクトシティ開発において肝心な要素となりそうなのが、この「空間ストック活用」という部分に現れています。

新たなハコモノを用意するより前に、空洞化が進んだ既存の空間ストックを活かし、街を昭和時代から令和時代へと脱皮させる意図があります。このため、「空き店舗」、空地や駐車場などの「低未利用地」の削減を数値目標としています。

※低未利用地とは
居住の用、業務の用その他の用途に供されておらず、又はその利用の程度がその周辺の地域における同一の用途若しくはこれに類する用途に供されている土地の利用の程度に比し著しく劣っていると認められる土地(土地基本法第 13 条第4項)

この空間ストック活用は、多くの自治体が目標に掲げる一方で解消の難しい課題になっています。というのも、「空間ストック」と書けば、蓄えとか資産のような響きがあって魅力を感じますが、その実態は「シャッター商店街」だからです。

この要因は、
・商店の後継者がいない
・施設も収益化ができない
・居住することもない
・駐車場などにしたほうが気軽で儲かる

など様々です。

どのみち、商業施設を設置しても赤字、住むには固定資産税がかかり、住み心地もイマイチとなればその商店街は疲弊していきます。

では、蕨の場合はどのような対策を行ったのでしょうか。

同市では、市内8つの商店街を中心に、空き店舗物件と出店ニーズとのマッチングを図るべく、一般社団法人蕨市にぎわいまちづくり連合会(以下、蕨市まち連)が活動を行いました。また補助金として、出店時に上限50万円の改装費、上限10万円の広告宣伝費を支出する形で支援を実施。

この取り組みは現在まで続いています。また他にも、アニメとのコラボレーション、店舗ビジネスの起業支援、ガイドツアーなど、2021年秋現在でも精力的な活動を行っています。

「蕨市まち連」の田中雅子氏は、子どもを持ち始めてから街への帰属意識に変化が生じたとYouTubeに話しています。「商店街のお店の人と、我が子が知り合うことで、お店の人が学校の帰り道などに声をかけてくれるようになる」。こうした街とのつながりが将来的に、自分の子どもの地元になると感じているようです。(You Tubeチャンネルより)https://youtu.be/FzHoyjy0Pwo

この具体的な成果は後述します。取り組みを続けてみていきましょう。

②来街目的の多様化による賑わい創出

また、他エリアの人々を蕨に誘導する仕組みも急務です。

前回の記事でお伝えしたように、蕨周辺にはイオンモールなど大型商業施設が立ち並び、さらに池袋や大宮などアクセスがしやすい都市部が多いため、蕨は商業的には人口流出の多いエリアといえます。

そこでコンパクトシティの一環として、中心市街地内で個性づくりを行い来街目的を増やす取り組みを目指しています。

たしかに駅周辺は繁盛していますが、大宮方面・東京方面から人を呼び込む魅力は薄く、いかに街としてのカラーを出せるかが重要になりそうです。

市は2015年から2019年の4年で、商店街の歩行者・自転車の通行を3.8%増やす目標を掲げています。

そのために、
・市街地開発を行い住民そのものを増やす
・商業施設を整備することで来街を増やす
・週末イベントを実施することで集客する
この3つの作戦に取り組みました。

当時の計画によると、2017年に「食」の交流拠点整備、そこから「観光事業」「誘客事業」「機織り体験」など観光地化を進める計画でした。ただし現在はこの「食」の交流拠点整備が遅れており、方針転換を余儀なくされています。

③中心市街地への市民の支持向上

蕨駅の駅名標

これはオプション的なものですが、しかし重要な要素でしょう。

コンパクトシティの形成には地元の協力が合意が必要になります。市民・事業者の参画と、事業推進に対する支持を集めていくための取り組みを実施しています。

その一方で、大きな課題として蕨駅周辺の整備状況に対する満足度の低さが挙げられます。

市民意識調査では蕨駅周辺についての満足度を5段階で調査。「満足している」「どちらかと言えば満足している」を足した結果、なんと2007年の満足度は11.25%。これが平成中期の開発により、2014年には29.6%までアップしましたが、依然として満足度の低さを問題視しています。

中編まとめ

蕨市は、コンパクトシティ形成のための大目標として、
①空間ストックの有効活用による新陳代謝の誘発
②来街目的の多様化による賑わい創出
③中心市街地への市民の支持向上

この3点に取り組みました。

後編では、2020年に公表された「フォローアップ」の資料をもとに、どのような結果となったかを紹介します。

後編はこちら

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