コンパクトシティ事例

埼玉県蕨市のコンパクトシティ計画とは?日本一狭い市は2024年にどう変わる?前編

埼玉県蕨市の コンパクトシティ 計画とは?

埼玉県蕨市。日本一小さく、また日本一人口密度の高い市と言われる同市では、現在市の最優先事項としてコンパクトシティの形成に取り組んでいます。

その取り組みは公共施設の運営から道路整備、大小様々なイベントまで幅広く、特に2つの再開発事業には大きな注目があつまりそうです。

この記事ではそんな蕨市におけるコンパクトシティ計画を、2021年秋現在の情報に基づきお伝えします。

そもそも蕨市とは?

「翔んで埼玉」でおなじみの埼玉県。その南東、さいたま市、戸田市、川口市に隣接し、板橋区も目と鼻の先である関東有数のベッドタウン地帯に、蕨市はあります。

もともと中山道の宿場町にルーツを持つ同市。面積は5.11平方キロで、市としては日本一コンパクトな街です。一方で東京都内への交通が至便で、人口密度は日本一高い(14,527人/km2)と言われます。日本人のほか、イラン・クルドなど中東からの移民も多く「ワラビスタン」の異名を持ちます。

(数値はウィキペディアより)

蕨はすべての公共施設に徒歩でアクセスできる街の小ささを活用し、「コンパクトシティ蕨」を将来ビジョンに掲げています。

ともすると「狭苦しい」というネガティブ要因になりかねない面積の小ささをアセットと捉え、コンパクトシティ実現の先鞭をつけた同市。

はたして全国のコンパクトシティ計画における成功事例となるか、注目が集まりそうです。

蕨市の歴史を整理

和楽備神社

蕨市は昭和時代まで、戸田をはじめとする周辺地からの買い物客などで、商店街ににぎわいがあったと言われています。

一方で1985年に大宮~池袋間で開通した埼京線の登場により、これまで蕨に来ていた買い物客は大宮、池袋、新宿へと流れることになりました。

また、イオン川口、イオン北戸田など、周辺に大型商業施設が登場し、蕨の商店街は徐々に衰退してきた過去があります。

実際1997年から2012年のあいだに、商業の商店数は50%減少しており、従業員・販売額も減少トレンドにあります。また消費者も、定期的に利用する商業施設のうち、商店街が31.0%、大型店が84.5%であると2013年の調査でわかっています。

現在の蕨市

現在の蕨市は、さいたま市南部に中山道とJRが並行する形で通過する形となっており、中心地は蕨駅、その左右に商業施設がぶらさがり、西側に重点が置かれる街となっています。

これは、駅の北東側がすぐ川口市との市境になっているため。

駅から徒歩4分の「マクドナルド蕨店」が川口市に立地してることからも、蕨駅がいかに北東に位置しているかがわかります。駅西側のまちづくりについては、詳細後述します。

蕨駅を南西に進むと商店街が続き、そのまま公民館、病院、市役所と、公共施設が集中するエリアにぶつかります。

この商業エリア、工業エリアを覗くと、蕨自然体には概ね低層の戸建て・集合住宅が広がっています。

そのため現在の蕨市が目指しているのが、「市民による活発な地域活動に基づき、コンパクトで高密度な市街地における魅力と安全性を高めるまちづくり」。

つまり地域密着型で、駅周辺に商業施設や公共サービスが集中しているという強みを生かしたまちづくりです。

「コンパクトシティ蕨」将来ビジョン実行計画を俯瞰

蕨市が「コンパクトシティ蕨」の名称で公表している文書では、令和3年度~令和5年度の3カ年で毎年見直しを入れつつ、将来像として「安心とにぎわい みんなにあたたかい 日本一のコンパクトシティ蕨」を目指すとしています。

テーマは防災や交通安全、子育てから、地域コミュニティ、人権、市民参画などの大きなものまで、34のテーマに分かれています。

これをすべて説明するのは自分の体力面でも、また記事のおもしろさという面でも難しいので、特に重要な取り組みについて抜粋してお届けします。あわせて、歳入計画・歳出計画から、市が何に投資し、何を節約していくのかを見ていきます。

「安心」「賑わい」「福祉」キーワードに

蕨駅西口

まず結論から言うと、この計画書はコンパクトシティの推進にとどまらない、蕨市全体の「やることリスト」のような構成になっています。

例えば職員研修、幼保施設の整備や人材育成、教育の充実、男女共同参画社会と、その分野は大変広いものになっています。

これは蕨市が、すでにコンパクトにまとまっているという現実が前提にあるからこそ、生まれてきた指針なのではないでしょうか。

そのため内容もスクラップ&ビルドのような大掛かりなものでなく、すでにある施設や資源を活かし、そこに様々な人的サービスを投入していくという方向性のものが多く見受けられます。

その中でコンパクトシティ推進の要となりそうな再開発事業が、2つあります。

中心市街地活性化事業…2015年春に「中心市街地の活性化に関する法律」に基づいて策定された計画です。

駅西口市街地再開発事業…2014年ごろから開始。蕨駅周辺を「都市機能の核」として位置づけ、まちの顔としてイメージアップにつなげていくプロジェクトです。中心市街地活性化事業と重複するプロジェクトなので、この記事では章を分けずに解説します。

この記事では、この2つを徹底的に読み込みます。お時間あるタイミングで、お付き合いください。

中心市街地活性化の方針

この事業は、国の定める「中心市街地の活性化に関する法律」に基づき、蕨市が独自にコンパクトシティの推進を実施したプロジェクトです。

そもそも、中心市街地の活性化に関する法律とは、1998年に定められた「まちづくり3法」の1つです。少子高齢化を始めとする社会経済の変化に対応するため、中心市街地の空洞化を食い止めることを目的に定められ、2006年に改正され現在に至ります。

実施期間は2015年から2020年の5年間。

基礎的な指針として、
1 コンパクトな都市規模ならではの都市活力を創出するまちづくり

2 愛着をもって誇れる個性と利便性を備えたまちづくり

の2点を挙げています。これは「日本一小さい」という弱点を逆手に取り、人口密度の高さと利便性という強みを活かす、面白いまちづくり方針と言えそうです。

そして大目標として、
①空間ストックの有効活用による新陳代謝の誘発
②来街目的の多様化による賑わい創出
③中心市街地への市民の支持向上
の3点を掲げています。

次の記事で、この3つを深堀りしていきます。

続きはこちら

参考文献

https://www.city.warabi.saitama.jp/shisei/shigoto/shoko/1003196.html

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  1. […] 前回の記事はこちらからご確認ください。そして結果については、2021年時点で公表されている内容を後編でお伝えします。 […]

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