「観光頼み」からの脱却。愛媛県大洲市が挑む、持続可能な都市再生とは

四国

人口減少の波に抗う、大洲市のパラダイムシフト

現在、日本の全自治体の約3分の2が「消滅可能性都市」の危機に直面しています 。愛媛県大洲市も例外ではなく、2025年時点で約38,000人の人口が、2060年には約16,000人へと減少するという予測があります。

このような状況下で、面白そうな取り組みが立ち上がりました。地域DMOの「キタ・マネジメント」、ホテル事業を展開する「バリューマネジメント」、地元金融機関の「伊予銀行」の3者が協働し、「OZU 555 PROJECT」という新たなアクションを始動させました 。これは、街を単なる「消滅可能性都市」から、外部の知見を取り込みながら進化する「再生型未来都市」へと転換させる試みです。

「関係人口」軸に、移住や観光に頼りすぎない町づくり

これまで大洲市は、「日本初の城泊」である「大洲城キャッスルステイ」や、分散型ホテル「NIPPONIA HOTEL 大洲 城下町」などを通じて、国際的にも高く評価されてきました 。しかし、観光客を増やす「交流人口」の拡大だけでは、根本的な人口減少の解決には至らないという現実に直面します。

そこで次なる一手として打ち出されたのが、従来の移住や観光の枠組みにとらわれない新しいアプローチです。

  • 第二市民制度の構想: 年に2回以上の来訪やデジタル空間でのプロジェクト参画を行う人々を「第二市民」と定義し、「デジタル市民証」を発行する仕組みです 。
  • 大洲カンパニー: 居住地を問わず参加できるバーチャルコミュニティで、専用アプリ「FANTS」を通じて様々なプロジェクトに参画できます 。

移住というハードルの高い決断を求めずとも、都市部の人材が自身のスキルや資本を大洲市に投資し、フラットに関与できる理にかなったネットワークが構築されつつあります。

街の「修理」をエンタメ化する、リジェネラティブな実践

このプロジェクトでは、現状維持を目指す「サステナブル」を超え、関わる人々が地域をアップデートし続ける「リジェネラティブ(再生型)」を掲げています 。これは街の「修理」の概念と言えます。

コンパクトシティの実現に向けては、既存のインフラをうまく利活用したリノベーションはほぼ必須。そこに伝統や歴史、人の想いが混ざることで、町ごとの性格がでてくるのではないでしょうか。

「大洲カンパニー」の活動を見ると、その思想が具体化されています。

  • 宮崎邸の畳を剥ぐ会: 通常は専門業者が行う古民家の改修初期段階(破壊・撤去)を体験型コンテンツとして提供し、関係人口の創出とコスト削減を両立させています。
  • 臥龍醸造クラフトビール造り体験: 地域の水や農産物を活用し、参加者に地域産業の担い手としての実感を与えています。

壊れかけたインフラを無理に再開発して作り変えるのではなく、丁寧に「修理」し、そのプロセス自体に外部の人材を巻き込むことで、独自の価値を生み出しているのです。

3者連携が支える「5 / 50 / 500」のロードマップ

大洲市の取り組みが他の地方創生と一線を画すのは、異業種コンソーシアムによるエコシステムが存在する点です。

  • キタ・マネジメント: 地域資源を管理し、住民と外部プレイヤーの橋渡しを担います。
  • バリューマネジメント: 歴史的建造物を再生し、感度の高い関係人口の入り口を作ります。
  • 伊予銀行: 金融支援や事業参画を通じて、地域経済をバックアップします。

この体制のもと、2030年までに観光頼みから「社会増」へと舵を切る形での街づくりを進めて行こうとしています。

「まちづくり2.0」という綺麗な言葉は並んでいるが

一方で、冷静に見つめるべき課題も存在します。

計画には「エコシステムの構築」や「まちづくり2.0」「サステナブル」「リジェネラティブ」「共創型」といった聞こえの良い言葉が並んでいます。

街に新たな機能を実装するにあたり、具体的にどのような人・モノ・カネの投資が行われるのか、その計画までは現状見えてきません。宿泊や体験といったコンセプトまではわかるのですが、じゃあなにが2.0なのか?関係人口をどこからどう呼んでくるのか?税金の無駄遣いじゃなく未来への投資だよ!というあたりがもうすこしわかってくると、熱を帯びてきそうです。

もちろん計画は始まったばかり。まだどうなるか、予想できる段階ではありません。

ただ、ちょっと懸念なのは、「あれもできます、これもできます」とステークホルダーの誰からも批判されないような計画がどれほど実効性を持つかです。こうした取り組みの打率はかなり低い印象です。地方、そして消滅可能性都市であるからこそ、尖ったコンセプトを見てみたいと感じます。

もう少し踏み込んで言えば、「この街において、これはもうやめる」「こういったことはやらない」をしっかり見せて欲しいと感じます。

外部との「関わり代」が切り拓く、次世代都市の最適解

移住や観光といった既存の枠組みを抜け出し、デジタルとアナログを融合させて外部との「関わり代(しろ)」を広げること。そして、街を修理しながら使い続けるプロセスに多様なプレイヤーを巻き込むこと。

課題と向き合いながらこのオープンな環境を構築し続けることができれば、大洲市はより豊かになっていくのではないでしょうか。注目の取り組みです。

参考記事:https://www.ozu-vision.com/

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